最低賃金の上昇が続いています。
2026年度の地域別最低賃金では、全国加重平均が1,177円となり、前年から56円上昇する見込みです。
コンビニ経営にとって、これは単純に「人件費が上がる」という話ではありません。
これから重要になるのは、
「限られた経営資源を、どこに投入するのか?」
という問題です。
人、お金、時間、店舗スペース、設備、データ。
これらはすべて有限です。
だからこそ、最低賃金が上がり続ける時代には、これまでと同じ方法で人を配置するだけではなく、人の使い方そのものを変える必要があるのではないでしょうか。
- 最低賃金の上昇は「人件費の問題」から「経営構造の問題」へ変わっている
- 「近くて便利」の価値が下がったのではなく、提供コストが上がった
- 24時間営業と24時間有人営業は、分けて考える必要がある
- これからは「24時間人がいる店」ではなく「24時間サービスを提供する店」へ
- AIと自動化は「人をなくすため」ではなく「人の仕事を変えるため」に使う
- Amazon Goが教えてくれるのは「技術」と「ビジネス」は別だということ
- マイナンバーカードの活用は「年齢確認」から「入店管理」へ広がる可能性がある
- 「人がいるから安全」ではなく「人を危険な場所に置かない」という発想
- 「人がいる」と「人が店舗にいる」は同じではない
- 人間にしかできない仕事へ、人の時間を集中させる
- 生産性向上とは「限られた経営資源をどこに使うか」という問題
- 最低賃金から脱却するために必要なのは「人を減らすこと」ではない
- これからのコンビニ経営は「人を減らす競争」ではなく「人の価値を最大化する競争」になる
- 「近くて便利」を未来につなげるために
最低賃金の上昇は「人件費の問題」から「経営構造の問題」へ変わっている
コンビニは、人に依存したビジネスです。
レジ接客、品出し、清掃、発注、鮮度管理、売場づくり、廃棄処理、宅配便、公共料金など、多くの仕事を人が担っています。
最低賃金が上がれば、当然これらの仕事にかかるコストも上がります。
しかし、商品価格を人件費の上昇率と同じように引き上げられるわけではありません。
そこで必要になるのが生産性向上です。
ただし、生産性向上とは、
「人を減らすこと」
ではありません。
私は、
「人がやらなくてもいい仕事を減らし、人にしかできない仕事へ時間を振り向けること」
だと考えています。
つまり、これからのコンビニ経営では、
何人必要なのか?
だけではなく、
「人は何をするべきなのか?」
を考えることが重要になります。
「近くて便利」の価値が下がったのではなく、提供コストが上がった
コンビニの最大の価値の一つは、
「近くて便利」
です。
必要なものを、必要なときに、近くで買える。
この価値は、これからも変わらないでしょう。
問題は、その価値を提供するためのコストです。
特に大きいのが人件費です。
つまり、
「近くて便利」の価値が下がったのではない。
「近くて便利」を提供するための人のコストが上がった。
ということです。
ここを間違えると、
「人件費が高いから営業時間を短くする」
「人件費が高いから人を減らす」
という単純な発想になってしまいます。
しかし、本当に考えるべきなのは、
「近くて便利を維持しながら、どうやって人への依存度を下げるのか?」
ではないでしょうか。
24時間営業と24時間有人営業は、分けて考える必要がある
私は、これからのコンビニ経営で、
「24時間営業」と「24時間有人営業」は分けて考えるべき
だと思っています。
例えば0時から6時までの時間帯。
店舗によって差はありますが、来店客数が1日の5~8%程度というケースがあります。
一方、その時間帯にかかる人件費は、1日の人件費の20%以上になることがあります。
もちろん、深夜にはお客様への接客以外にも仕事があります。
深夜にも必要な仕事がある
- 納品対応
- 品出し
- 清掃
- 廃棄処理
- 売場メンテナンス
- 防犯対応
- 各種管理業務
そのため、
「客数が5~8%だから、人も5~8%でいい」
という単純な話ではありません。
しかし、それでも考える価値があるのは、
「24時間営業だから、24時間同じように人を配置する必要があるのか?」
ということです。
これからは「24時間人がいる店」ではなく「24時間サービスを提供する店」へ
深夜にお客様が求めているものは、
「店員が店内にいること」
そのものなのでしょうか。
それとも、
「必要な商品を必要な時間に買えること」
なのでしょうか。
もし後者であれば、24時間営業を維持しながら、24時間有人という形を見直すことができます。
例えば、
- セルフレジ
- AIによる監視
- 遠隔サポート
- デジタルによる年齢確認
- 自動化された店舗設備
- 必要な時間帯だけの人員配置
などを組み合わせる方法です。
目指すのは、
「無人店舗」ではありません。
目指すのは、
「人が必要な場所にだけ人を配置する店舗」
です。
AIと自動化は「人をなくすため」ではなく「人の仕事を変えるため」に使う
AIや自動化が進めば、これまで人が担当していた仕事の一部を機械に任せられるようになります。
例えば、
- レジ業務
- 年齢確認
- データ分析
- 発注支援
- 異常検知
- 一部の問い合わせ対応
などです。
ここで重要なのは、
AIが人の代わりになるか?
という二択で考えないことです。
むしろ、
「AIによって、人がやるべき仕事と機械に任せる仕事の境界を明確にする」
と考えたほうがいいでしょう。
人間が本当に価値を発揮する仕事に時間を使えるようになれば、同じ人数でも店舗が生み出す価値は変わります。
Amazon Goが教えてくれるのは「技術」と「ビジネス」は別だということ
その可能性を考えるうえで、Amazon Goは興味深い事例です。
Amazon Goでは、コンピュータービジョン、センサー、機械学習などを活用し、レジを通らずに買い物できる仕組みが実用化されました。
これは、
「人がレジに立たなければ買い物できない」
という従来の常識を変える技術でした。
一方で、Amazonは2026年にAmazon Goなどの実店舗を閉鎖しています。
ここから学ぶべきなのは、
「無人化すれば成功する」わけではない
ということです。
技術的に可能でも、
- 投資コスト
- オペレーション
- お客様の使いやすさ
- 売上
- 防犯
- 投資回収
まで成立しなければ、ビジネスにはなりません。
だからこそ、
技術を導入すること自体を目的にしてはいけない。
「その技術によって、店舗のどの問題を解決するのか?」
を考える必要があります。
マイナンバーカードの活用は「年齢確認」から「入店管理」へ広がる可能性がある
現在でも、マイナンバーカードの機能を利用した年齢確認について実証が進められています。
酒類やたばこの販売時に、セルフレジで年齢確認ができれば、店員を呼ぶ必要を減らせる可能性があります。
さらに将来的には、
「入店時の本人確認」
という発想も考えられます。
例えば、本人確認が必要なサービスや、特定の時間帯における入店管理などに活用できれば、
- 不正利用の抑止
- 年齢確認
- 店員の安全確保
- トラブル発生時の対応
- 防犯対策
などにつながる可能性があります。
未成年者の深夜の滞留などについても、地域や店舗のルールに応じて、適切な入店管理を考える余地があるかもしれません。
ただし、これは将来的な可能性です。
マイナンバーカードを利用するのであれば、
- 何のために利用するのか
- どの情報を使うのか
- 情報を保存するのか
- 誰が利用できるのか
- プライバシーをどう守るのか
といった問題を慎重に考えなければなりません。
重要なのは、
「本人確認できるから何でも管理する」
ではなく、
「必要最小限の情報で、安全性と利便性を両立する」
という考え方でしょう。
「人がいるから安全」ではなく「人を危険な場所に置かない」という発想
深夜営業を考えるとき、忘れてはいけないのがスタッフの安全です。
深夜の店舗では、
- 万引き
- 迷惑行為
- 酔客
- 暴力
- 強盗
などのリスクがあります。
一人勤務のスタッフが、すべてに対応することには限界があります。
だから、
「深夜も人がいるから安全」
とは限りません。
むしろ、
「人を危険な場所に置かないことによって安全を高める」
という発想も必要になります。
AIによる異常検知、遠隔監視、入店管理、遠隔サポートなどを組み合わせれば、
店舗にスタッフが常駐していなくても、人によるサポートを受けられる仕組み
を考えることができます。
「人がいる」と「人が店舗にいる」は同じではない
ここで重要になるのが、遠隔接客です。
ローソンでは、アバターを活用した接客の取り組みも行われています。
これは、
「接客する人が、必ずしもその店舗に physically 存在する必要はない」
という発想につながります。
例えば将来的には、
1人のスタッフが遠隔から複数店舗をサポートする。
店舗で問題が起きたときだけ遠隔から対応する。
必要なときだけ現場スタッフを配置する。
こうした働き方も考えられます。
もちろん、商品の品出しや清掃、納品対応など、現場に人が必要な仕事は残ります。
だからこそ、
「人がいる」と「人が店舗にいる」を分けて考える。
これが重要なのです。
人間にしかできない仕事へ、人の時間を集中させる
では、AIや機械に仕事を任せたあと、人間は何をするのでしょうか。
ここが一番重要です。
人間にしかできない仕事として、
- お客様とのコミュニケーション
- 売場づくり
- 商品提案
- 地域のお客様への対応
- 異常時の判断
- スタッフ教育
- 店舗運営
- 新しいサービスの創造
などがあります。
一方で、
- 定型的なレジ操作
- 一部の年齢確認
- データ処理
- 異常検知
- 定型的な問い合わせ
- 発注支援
などは、機械やAIに任せられる可能性があります。
つまり、
「人を減らす」のではなく、「人の時間を解放する」
のです。
生産性向上とは「限られた経営資源をどこに使うか」という問題
コンビニ経営で使える経営資源は限られています。
人。
お金。
時間。
店舗面積。
設備。
データ。
例えば100万円を投資するとします。
その100万円を、
「人を増やす」
ことに使うのか。
それとも、
「省人化設備」
に使うのか。
「売場改善」
に使うのか。
「スタッフ教育」
に使うのか。
同じ100万円でも、将来生み出す価値は変わります。
だからこそ、経営者が考えるべきなのは、
「どうやってコストを削るか?」
だけではありません。
「どこに貴重な経営資源を投入すれば、最も大きな価値を生み出せるのか?」
です。
これが、生産性向上の本質だと思います。
最低賃金から脱却するために必要なのは「人を減らすこと」ではない
最低賃金が上がる。
人件費が上がる。
だから人を減らす。
これだけでは、根本的な解決にはなりません。
人を減らしすぎれば、
接客が悪くなる。
品出しが遅れる。
売場が荒れる。
スタッフが疲弊する。
結果として、
「近くて便利」というコンビニの価値そのものを下げてしまう可能性があります。
必要なのは逆です。
人が必要な仕事には、しっかり人を配置する。
そして、
人がやる必要のない仕事は、AIや機械に任せる。
その結果、
人が本当に価値を生み出す仕事に集中できる店舗をつくる。
これが、最低賃金上昇時代の生産性向上ではないでしょうか。
これからのコンビニ経営は「人を減らす競争」ではなく「人の価値を最大化する競争」になる
私は、これからのコンビニが、
「24時間人が働く店」
から、
「24時間サービスを提供する店」
へ変わっていく可能性があると思っています。
昼間は人を厚く配置する。
深夜は必要最小限の人員とテクノロジーを組み合わせる。
セルフレジを活用する。
AIが異常を検知する。
必要なときだけ遠隔の人が対応する。
年齢確認をデジタル化する。
将来的には、本人確認や入店管理についても、安全性とプライバシーを両立した仕組みを考える。
そして、人間は人間にしかできない仕事に集中する。
つまり、
24時間営業は必要。
でも、24時間人がいる必要はない。
これが、これからのコンビニを考えるうえで重要な視点になるのではないでしょうか。
「近くて便利」を未来につなげるために
最低賃金の上昇は、コンビニ経営にとって大きな負担です。
しかし、それを単なるコスト増として考えるだけでは、未来の経営にはつながりません。
重要なのは、
「どこに貴重な経営資源を投入するのか?」
です。
人が必要な仕事には、人を配置する。
人がやる必要のない仕事は、AIや機械に任せる。
24時間営業を維持しながら、24時間有人という仕組みを見直す。
そして、人間には人間にしかできない仕事をしてもらう。
私は、
「人を減らす」のではなく、「人の価値を最大化する」
ことが、これからのコンビニ経営に必要だと思っています。
「近くて便利」の価値が下がったのではありません。
「近くて便利」を提供するための人のコストが上がった。
だからこそ、
人の時間を、もっと価値のある仕事へ振り向ける。
そして経営者が考えるべきことも、
「人を何人配置するか」
から、
「人に何をしてもらうのか」
へ変わっていくのではないでしょうか。
それが、最低賃金が上がり続ける時代に、コンビニが「近くて便利」を守り続けるための一つの答えなのだと思います。
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