セブン‐イレブン創業の原点「共存共栄」とは?|時給50円上昇が5年間で350万円のコスト増に【第188話】

セブン‐イレブン創業の原点「共存共栄」と最低賃金上昇による人件費増を解説するイメージ画像 コンビニ経営

セブン‐イレブンは、今では全国に店舗を展開する日本を代表するコンビニチェーンです。

しかし、その始まりは「巨大なコンビニチェーンをつくる」という発想ではありませんでした。

創業の背景にあったのは、

「既存中小小売店の近代化と活性化」

という考え方です。

そして、その先にあったのが、

「大型店と中小小売店の共存共栄」

という発想でした。

では、なぜセブン‐イレブンは生まれたのでしょうか。

そして、50年以上が経過した現在、「共存共栄」はどのような意味を持つのでしょうか。

セブン‐イレブンはなぜ誕生したのか

1970年代、日本ではスーパーマーケットなどの大型店が急速に成長していました。

大量の商品を仕入れ、効率的に販売する大型店に対して、地域の中小小売店は厳しい競争にさらされていました。

当時の小売店には、現在ほど多くの従業員を必要としない家族経営型の店舗も多くありました。

店主や家族が自ら店頭に立つことで、人件費を抑えながら地域のお客様に商品を提供する。

そんな商売の形もありました。

しかし、大型店との競争が激しくなるにつれて、

「小さな店が、このままの経営方法で生き残れるのか」

という問題が生まれていました。

「既存中小小売店の近代化と活性化」

セブン‐イレブンが目指したのは、小さな小売店をなくすことではありませんでした。

むしろ、

「小さな小売店に、大型店に対抗できる仕組みを提供する」

という発想です。

商品開発、物流、情報システム、販売データ、店舗運営ノウハウなどを本部に集約する。

そして、個々の店舗だけでは難しいことをチェーン全体で行う。

これによって、地域の小売店でも効率的な経営を目指せるようにする。

これが、

「既存中小小売店の近代化と活性化」

という創業時の考え方につながっていきました。

「共存共栄」とは大型店と中小小売店のことだった

創業時の「共存共栄」を考えるうえで重要なのが、

「誰と誰が共存するのか」

という点です。

当時の大きなテーマは、

大型店と中小小売店が、どうすれば共存できるのか。

という問題でした。

大型店には、大量仕入れや豊富な品揃えなどの強みがあります。

一方、中小小売店には、地域に密着したサービスという強みがあります。

そこで、小さな小売店にチェーンの仕組みを導入する。

個々の店舗では難しい商品開発や物流、情報管理などを本部が担う。

そして店舗は地域のお客様に密着する。

こうして、

大型店にはない地域密着という強みを生かしながら、小売店を近代化する。

これが、創業時の「共存共栄」という考え方の重要な部分でした。

セブン‐イレブンは小売業をスケール化した

この仕組みは、セブン‐イレブン自身を大きく成長させました。

一店舗だけでは難しいことを、本部がまとめて行う。

そして、同じ仕組みを全国の店舗で利用する。

これによって、

「一店舗の経営」から「チェーン全体の経営」へ

小売業をスケール化することができました。

店舗数を増やす。

売上規模を拡大する。

商品開発や物流の効率を高める。

販売データを蓄積し、店舗運営を改善する。

こうしたスケールメリットは、コンビニが急速に成長する大きな力になりました。

スケール化によって「人を使う店舗」へ変わった

一方で、店舗の多店舗化や長時間営業を実現するためには、人手が必要になります。

家族だけで店舗を運営する形から、

アルバイト・パートなどの従業員を雇用して店舗を運営する形

へと変化していきました。

ここが、現在のコンビニ経営を考えるうえで重要なポイントです。

コンビニには、

  • 納品
  • 品出し
  • レジ
  • 清掃
  • 発注
  • 廃棄
  • 接客
  • 店舗管理

など、売上が少なくても一定量発生する仕事があります。

つまり、

店舗を営業するためには、一定の労働時間が必要になる

ということです。

最低賃金の上昇が店舗経営を圧迫する

現在、最低賃金は上昇しています。

働く人にとっては重要な変化ですが、店舗経営者から見ると人件費の増加につながります。

しかも、

人件費が上がったからといって、売上が同じ割合で増えるわけではありません。

売上が変わらないまま時給だけが上昇すれば、その差額は店舗利益を圧迫します。

時給50円の上昇で年間約70万円のコスト増

ここで、最低賃金の上昇を店舗経営の数字に置き換えてみます。

例えば、店舗の年間労働時間を約14,000時間と仮定します。

時給が50円上昇すると、

50円 × 14,000時間 = 年間70万円

となります。

つまり、

時給が50円上がるだけでも、年間約70万円の人件費増

です。

もちろん、これは年間労働時間14,000時間を前提とした単純試算です。

実際の店舗では、労働時間や従業員構成、社会保険料などによって負担額は変わります。

しかし、重要なのは、

「時給50円」という小さな変化でも、店舗全体では数十万円規模のコストになる

ということです。

5年間では約350万円のコスト増になる

さらに、この影響を長期で考えてみます。

年間70万円のコスト増が同じ条件で5年間続いたとすると、

70万円 × 5年間 = 350万円

です。

つまり、

時給50円の上昇は、1年間では約70万円。
5年間では約350万円のコスト増になる。

ということです。

これは一度きりの支出ではありません。

時給が上がった状態が続けば、その後も高い人件費が店舗経営に残り続けます。

さらに、実際の経営では社会保険料などの事業主負担もあるため、単純に70万円だけを見ればいいわけではありません。

問題は「時給」ではなく「必要な労働時間」

ここで重要なのは、最低賃金そのものだけではありません。

本当に考えるべきなのは、

「その店舗を営業するために、年間何時間の労働が必要なのか」

ということです。

同じ時給50円の上昇でも、年間労働時間が多い店舗ほど影響は大きくなります。

逆に言えば、

必要な労働時間を減らすことができれば、人件費上昇の影響を抑えることができます。

だからこそ、これからのコンビニ経営では、

売上高だけではなく「人時生産性」

を見る必要があります。

「売上を増やす」だけでは人件費問題は解決しない

これまでのコンビニ経営では、

売上を増やす → 店舗を増やす → 規模を拡大する

という成長モデルが大きな力を発揮してきました。

しかし、人件費が上昇する時代には、

売上が増えても、それ以上に人件費が増えれば利益は残りません。

例えば、同じ1,000万円の売上でも、必要な労働時間が少ない店舗と多い店舗では、最終的に残る利益は大きく変わります。

これから重要になるのは、

「どれだけ売ったか」だけではなく、「どれだけの労働時間で売ったか」

という視点です。

最低賃金の上昇は店舗存続の問題になり得る

特に、売上規模の小さい店舗では問題が深刻になります。

コンビニには、売上が少なくても一定量の作業があります。

そのため、売上が低い店舗ほど、

必要な労働時間を売上に吸収させることが難しくなる

という構造があります。

最低賃金が上昇し続ければ、

「これまで何とか成立していた店舗」が、

「人件費を支払った後に十分な利益が残らない店舗」

になる可能性があります。

これは単なる利益率の問題ではありません。

場合によっては、

店舗そのものを継続できるのか

という問題につながります。

50年前と現在では「共存共栄」の課題が違う

創業時の課題は、

「大型店の成長に対して、中小小売店をどう生き残らせるか」

でした。

セブン‐イレブンは、チェーン化とスケール化によって、その課題に一つの答えを出しました。

しかし50年以上が経過した現在、新しい課題が生まれています。

それが、

「人件費が上昇する中で、店舗をどう持続させるのか」

という問題です。

つまり、

小売店を近代化することで成長した仕組みが、環境の変化によって新しい課題に直面している

とも考えられます。

現在の「共存共栄」は本部と加盟店にも問われている

セブン‐イレブン自身が巨大なチェーンとなった現在、

「共存共栄」という言葉を考える対象も変わってきます。

現在重要になるのは、

本部と加盟店が、どのように共存していくのか

という問題です。

本部が成長する。

加盟店も利益を確保する。

そして、働く人にも適正な賃金を支払う。

それでも店舗が継続できる。

このバランスをどう実現するのか。

これが、現代における「共存共栄」の重要なテーマではないでしょうか。

これから必要なのは「売上拡大」から「生産性向上」へ

これからのコンビニ経営に必要なのは、

「もっと売上を増やす」

という発想だけではありません。

必要なのは、

  • 必要な労働時間を減らす
  • 店舗作業を効率化する
  • 適正な営業時間を考える
  • 店舗ごとの人員配置を見直す
  • 省人化・自動化を進める
  • 人時生産性を高める

といった、

「少ない労働力でも利益を残せる店舗経営」

への転換です。

創業理念「共存共栄」を、もう一度考える

セブン‐イレブンは、

「既存中小小売店の近代化と活性化」

という理念から始まりました。

そして、

大型店と中小小売店の共存共栄

を目指しました。

その結果、小売業を標準化・スケール化し、日本を代表するチェーンへと成長しました。

しかし現在、コンビニは新しい課題に直面しています。

人件費の上昇です。

時給50円の上昇でも、年間労働時間14,000時間という前提なら年間約70万円。

同じ条件が5年間続けば、累計約350万円です。

だからこそ、これからの「共存共栄」は、

店舗数や売上を増やすことだけではなく、加盟店が働く人に適正な賃金を支払いながら、事業を継続できる利益を確保できること

まで含めて考える必要があるのではないでしょうか。

創業から50年以上。

セブン‐イレブンが次の50年を目指すのであれば、

「売上を拡大する仕組み」から、「人件費が上昇しても持続できる仕組み」へ。

今こそ、創業時の「共存共栄」という言葉を、現代のコンビニ経営に合わせて問い直す時期なのかもしれません。

そして、その答えを考えるためには、

「売上はいくらあるのか」だけではなく、「その売上を生み出すために何時間の労働が必要なのか」

を数字で検証する必要があります。

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