客数と客単価、どちらが大事?ディズニーの決算から考えるコンビニの未来【159話】

客数と客単価の重要性をディズニーとコンビニの違いから考える第159話のイメージ画像 コンビニ経営

コンビニ経営では、

「客数と客単価、どちらが大切なのか?」

と考えることがあります。

売上は、

客数 × 客単価

で決まります。

インフレによって商品の価格が上がっている今、客単価を維持・向上させることは、もちろん重要です。

それでも私は、コンビニでは、

まず客数を大切にしてほしい

と思っています。

なぜそう考えるのか。

今回は、少し意外なところから考えてみたいと思います。


ディズニーは「夢の国」

東京ディズニーランドや東京ディズニーシーは、日常とは違う時間を過ごす場所です。

お客様は、

「夢の国で特別な体験をしたい」

という目的で来園します。

そのため、ディズニーにとっては「何人来園したか」だけでなく、1人のお客様にどれだけの価値を提供し、どれだけ消費してもらえるかも重要になります。

実際、オリエンタルランドの2026年3月期決算を見ると、そのことがよく分かります。

2025年3月期の入園者数は2,755万8千人。

2026年3月期は2,753万4千人で、前年比ではほぼ横ばいでした。

ところが、ゲスト1人当たり売上高は、

17,833円 → 18,403円

へ上昇。

約570円、3.2%増加しています。

その結果、テーマパーク事業の売上高も、

5,521億円 → 5,683億円

へ増加しました。

つまり、

客数をほとんど増やさなくても、1人のお客様から得られる売上を増やすことで成長している

わけです。

これはディズニーというビジネスモデルを考えれば、とても合理的です。


では、コンビニも客単価を上げればいいのか?

ここが今回のテーマです。

ディズニーの決算を見ると、

「客数が増えなくても、客単価を上げれば売上を伸ばせる」

ことが分かります。

では、コンビニも同じように、

客単価を上げることを優先すればいいのでしょうか?

私は、そうは思いません。

なぜなら、

ディズニーは「夢の国」ですが、コンビニは「日常」だからです。


コンビニは「日常の質を上げる場所」

コンビニは、特別な日に行く場所ではありません。

朝、出勤前にコーヒーを買う。

昼におにぎりやパンを買う。

仕事の合間に飲み物を買う。

帰宅前に夕食を買う。

ちょっと足りないものを買う。

こうした、

毎日の生活の中にある小さな需要

を取り込むのがコンビニの強みです。

だから私は、

「1人のお客様からいくら売るか」よりも、「何人のお客様に日常的に使ってもらえるか」

をまず大切にしてほしいと思っています。


「客数第一」は、新規客だけではない

ここでいう客数は、単純に新しいお客様を増やすという意味ではありません。

大切なのは、

今来てくれているお客様の日常使いを増やすこと。

例えば、

朝はセブンカフェ。

昼はおにぎり。

仕事の合間に飲み物。

帰宅前に惣菜。

こうした利用が生活の中に組み込まれれば、来店頻度は自然に増えていきます。

1回の買い物で大きな金額を使ってもらう必要はありません。

小さな買い物を何度もしてもらう。

これがコンビニの強さだと思います。


最近の売上を見ても「売上の中身」が気になる

今回、セブン・ファミリーマート・ローソンの売上前年同月比を見てみました。

月セブンファミマローソン
1月98.5%98.3%101.8%
2月99.3%98.6%98.5%
3月99.0%98.2%100.8%
4月97.5%98.0%101.1%
5月100.8%97.6%101.7%
6月96.5%96.3%97.6%
7月97.8%97.8%101.2%
1~7月平均98.5%97.8%100.4%

もちろん、この数字は客数ではなく売上の前年同月比です。

したがって、この数字だけで客数の増減を判断することはできません。

ただ、だからこそ、

「売上がどうなったのか」だけではなく、「なぜその売上になったのか」

を見ることが重要だと思います。


売上を作る商品と、日常使いを作る商品

最近のコンビニでは、トレーディングカードや一番くじなど、従来の「近くて便利」というイメージとは少し違う商品の売上構成比も高くなっています。

もちろん、こうした商品を否定するつもりはありません。

新しいお客様を呼び込むきっかけになります。

店舗にとって重要な売上にもなります。

ただ、

「売上を作る商品」と「日常使いを作る商品」は、少し違う

と思っています。

カードを買うために来店する。

一番くじを引くために来店する。

これは目的来店です。

一方、

コーヒーを買う。

おにぎりを買う。

パンを買う。

飲み物を買う。

夕食を買う。

これは日常使いです。

私は、これからのコンビニには、

この日常使いをもっと大切にしてほしい

と思っています。


デフレ時代とインフレ時代では、ニーズも変わる

私がコンビニ経営をしてきた中でも、時代によってお客様の価格に対する感覚は変わってきたと感じます。

デフレ時代には、

「少しでも安く買いたい」

というニーズが非常に強くありました。

価格そのものが大きな価値だった時代です。

しかし現在は、原材料費、物流費、人件費など、さまざまなコストが上昇しています。

昔と同じ価格に戻すことは簡単ではありません。

だからインフレ時代に重要なのは、

「とにかく安い」

だけではなく、

「この価格なら納得できる」

という価値ではないでしょうか。

品質。

価格。

便利さ。

このバランスです。


コンビニは「高品質×リーズナブル×気軽さ」

私は、コンビニには、

品質の高いものを、リーズナブルに、気軽に買える

という価値をもっと追求してほしいと思っています。

コンビニはスーパーより価格が高い商品もあります。

その代わり、

近い。
すぐ買える。
時間を節約できる。
必要なものが揃っている。

という価値があります。

だから、

「便利だから多少高くても仕方がない」

だけではなく、

「便利で、しかもこの品質なら、この価格でも納得できる」

という商品を増やしてほしい。


私がセブンカフェとワンハンド商品に期待する理由

個人的に期待しているのが、

セブンカフェとワンハンド商品

です。

コーヒーは毎日飲む人も多い商品です。

だから、

「セブンに行ったついでにコーヒーを買う」

ではなく、

「コーヒーを買うためにセブンへ行く」

くらい、日常生活の一部になれば非常に強いと思います。

そのためにも、

品質を維持しながら、できるだけリーズナブルな価格にする企業努力

をしてほしい。

そして、

おにぎり。

パン。

サンドイッチ。

ホットスナック。

こうしたワンハンド商品も、

「忙しいときに仕方なく買うもの」

ではなく、

「毎日の食事として気軽に選べるもの」

にしてほしいと思っています。

「今日はコンビニで済ませよう」ではなく、

「今日はコンビニで買いたい」

と思ってもらえる商品です。


セブンは「常識を覆す」ことで発展してきた

ここで、セブン-イレブンに期待したいことがあります。

セブンはこれまで、

小売業の常識を覆すことで発展してきた会社

だと思っています。

コンビニという業態そのもの。

おにぎりや弁当の商品力。

そしてセブンカフェ。

「コンビニでは、こんなものは売れない」

と思われていたことを変え、

「コンビニでここまでできるのか」

という商品を作ってきました。

だからこそ、インフレ時代の今も、

もう一度、常識を覆してほしい。

私はそう思っています。


「コンビニは高い」という常識を変えられないか

私は、

「コンビニだから高くても仕方がない」

という考えを否定したいわけではありません。

原材料費も上がっています。

物流費も上がっています。

人件費も上がっています。

企業側にも、価格を下げることが難しい事情があります。

だからこそ、単純な値下げではなく、

本部だからこそできる企業努力

を期待しています。

商品開発。

原材料調達。

製造。

物流。

販売方法。

こうした部分を工夫して、

「この品質で、この価格なら毎日買える」

という商品を作る。

それが、

客数を増やす力

になるのではないでしょうか。


客単価を上げるのは、その先でいい

客単価を上げることは、もちろん重要です。

しかし私は、

客単価を上げることを最初の目的にしない方がいい

と思っています。

まず、

お客様に来てもらう。

そして、

日常的に使ってもらう。

その結果、

来店頻度が増える。

買上点数が増える。

そして、

客単価も上がっていく。

この順番が理想ではないでしょうか。


ディズニーは「夢の国」、コンビニは「日常の質を上げる場所」

ディズニーは、

夢の国。

非日常の体験を提供する場所です。

だから、1人のお客様に提供する価値を高め、客単価を上げることにも大きな意味があります。

一方、コンビニは、

日常の質を上げる場所。

毎日の生活を少し便利にする。

少し楽にする。

少し豊かにする。

だからこそ、

品質の高い商品を、リーズナブルに、気軽に買える。

これがコンビニの本来の価値だと思います。

私は、

客数と客単価のどちらが大切かと聞かれたら、まず客数

と答えます。

そして、その客数を増やすために、

お客様の日常使いを増やす。

これを大切にしてほしいと思います。

カードや一番くじのような特別な商品も必要です。

しかし、それと同時に、

毎日のコーヒー。
毎日の昼食。
毎日のパン。
毎日の飲み物。

こうした小さな需要を大切にする。

そして、

品質の高いものを、リーズナブルに、気軽に買える。

そんなコンビニを作る。

それが結果として、

客数を増やし、来店頻度を高め、買上点数を増やし、客単価の向上にもつながる

のではないでしょうか。

セブンは、これまで常識を覆して発展してきました。

だからこそ私は、

「コンビニは高い」という常識さえ、もう一度覆してほしい。

と思っています。

ディズニーが「夢の国」なら、

コンビニは、

「毎日の生活を少し良くする場所」

であってほしい。

まずは客数。
そして日常使い。
その先に客単価。

これが、私が考えるインフレ時代のコンビニ経営です。

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