コンビニ業界では、2020年前後から大きな転換が始まりました。
これまでのように、
店舗数を増やす。
売上を伸ばす。
という「量」の拡大だけではなく、
既存店の収益力を高める。
経営の質を高める。
本部と加盟店の経営基盤を強化する。
という方向へ、各社が舵を切り始めました。
あれから約5年。
では、5年前に掲げた中期経営計画は、実際にどのような結果を残したのでしょうか。
今回は、
「5年前の経営戦略」と「5年後の数字」
を比較しながら、コンビニ3社の経営を答え合わせしてみます。
そして最後に考えたいのが、
本部が考えた政策を、現場の加盟店は本当に利益につなげることができたのか。
という問題です。
- 5年前、コンビニ3社は「量から質」へ向かっていた
- 3社の5年間を一言で整理すると
- セブン‐イレブンは「既存店の経営基盤強化」を掲げた
- ファミリーマートは本部組織そのものを改革した
- ローソンは「加盟店利益」を経営の重要な指標にした
- 5年間の本部利益を答え合わせしてみる
- 店舗数の答え合わせをしてみる
- 「質を高める」とは、誰の利益を高めることなのか
- 本部本位の政策では、加盟店がついていけない
- 頑張った結果が成果につながらなければ、信頼関係は生まれない
- 本部の政策→加盟店の努力→利益→信頼
- 経営戦略は「現場で成果が出て」初めて完成する
- 現場を軽視した結果が、数字に表れているのではないか
- 本部と加盟店は「指示する側」と「実行する側」ではない
- 本当の「答え合わせ」は、加盟店利益まで見ること
- まとめ|頑張った現場が報われる経営でなければ続かない
5年前、コンビニ3社は「量から質」へ向かっていた
2020年前後のコンビニ業界は、人口減少、人手不足、店舗数の飽和など、これまでの出店拡大型の経営が難しくなっていました。
そこで各社が重視するようになったのが、
「量から質へ」
という考え方です。
店舗を増やすことだけではなく、
- 既存店の収益力を高める
- 店舗経営の基盤を強化する
- 本部組織を改革する
- 加盟店の利益を高める
といった方向へ経営の重点を移していきました。
つまり、今回の答え合わせで重要なのは、
「店舗が増えたか」ではなく、「経営の質が高まったのか」
ということです。
3社の5年間を一言で整理すると
まず、5年前の方向性と5年後の結果を大まかに整理してみます。
| 会社 | 5年前の方向性 | 5年後に見えた特徴 |
|---|---|---|
| セブン‐イレブン | 既存店の経営基盤強化 | 店舗数は増加、本部利益はほぼ横ばい |
| ファミリーマート | 本部・店舗の改革 | 本部利益が大きく増加 |
| ローソン | 加盟店利益を重視 | 本部利益が大きく増加 |
もちろん、これだけで各社の経営の成否を判断することはできません。
しかし、
「5年前に何を目指し、5年後に何が変わったのか」
を見るための入り口にはなります。
セブン‐イレブンは「既存店の経営基盤強化」を掲げた
セブン‐イレブンは、出店基準を厳格化するとともに、既存店1店舗1店舗の経営基盤を強化する方向を打ち出していました。
これは、
「店舗数を増やすこと」から「1店舗あたりの経営力を高めること」へ
という考え方です。
では、5年後にその戦略はどのような結果につながったのでしょうか。
ファミリーマートは本部組織そのものを改革した
ファミリーマートでは、店舗だけではなく本部組織そのものの改革にも踏み込みました。
2020年前後には、40歳以上の社員を中心とした大規模な希望退職を実施するなど、本部組織の効率化を進めています。
その後、事業利益は、
2021年度 653億円
→ 2025年度 1,002億円
まで増加しました。
5年間で、
+349億円、約53%増
です。
また、ファミリーマートは加盟店の平均利益についても5年連続で増加したと説明しています。
ここで重要なのは、
本部改革が本部だけの利益ではなく、加盟店側の利益にもつながっているのか
という点です。
ローソンは「加盟店利益」を経営の重要な指標にした
ローソンは、3社の中でも特徴的な方向へ進みました。
それが、
加盟店利益を経営上の重要な指標として扱うこと
です。
本部が利益を上げることだけではなく、
加盟店がどれだけ利益を残せるのか。
これを経営の成果として考える方向を明確にしました。
ローソンの利益は、
2021年度 409億円
→ 2025年度 941億円
まで増加しています。
5年間で、
+532億円、約130%増
です。
本部利益が増えたことだけで経営改革の成功を判断することはできません。
しかし、
「加盟店利益を経営の成果として見る」
という考え方は、フランチャイズ経営を考えるうえで重要です。
5年間の本部利益を答え合わせしてみる
ここで3社の数字を並べてみます。
| 年度 | セブン‐イレブン | ファミリーマート | ローソン |
|---|---|---|---|
| 2021年度 | 2,231億円 | 653億円 | 409億円 |
| 2022年度 | 2,329億円 | 640億円 | 471億円 |
| 2023年度 | 2,510億円 | 838億円 | 551億円 |
| 2024年度 | 2,338億円 | 850億円 | 643億円 |
| 2025年度 | 2,203億円 | 1,002億円 | 941億円 |
5年間の変化を見ると、3社で大きな違いがあります。
セブン‐イレブンは、
2,231億円 → 2,203億円
と、2021年度と比較するとほぼ横ばいです。
2023年度には2,510億円まで増加しましたが、その後は減少しています。
一方、ファミリーマートとローソンは、本部利益を大きく伸ばしています。
※各社で会計基準や開示範囲が異なるため、利益額そのものを単純比較するのではなく、それぞれの5年間の変化を見るための参考値です。
店舗数の答え合わせをしてみる
次に店舗数を比較します。
| 会社 | 2020年度 | 2025年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| セブン‐イレブン | 21,167店 | 21,927店 | +760店 |
| ファミリーマート | 16,646店 | 16,415店 | ▲231店 |
| ローソン | 14,476店 | 14,697店 | +221店 |
セブン‐イレブンは5年間で760店舗増加しました。
一方、ファミリーマートは231店舗減少しています。
それでもファミリーマートの本部利益は大きく増えています。
ここから分かるのは、
店舗数を増やすことと、経営の質を高めることは同じではない
ということです。
「質を高める」とは、誰の利益を高めることなのか
ここで、そもそもの問題に戻ります。
「経営の質を高める」とは、何を意味するのでしょうか。
売上を増やすこと。
店舗数を増やすこと。
本部利益を増やすこと。
もちろん、これらも経営成果の一つです。
しかし、フランチャイズビジネスである以上、
加盟店が安定して利益を残せること
も重要な経営成果ではないでしょうか。
本部だけが利益を増やしても、加盟店の利益が減っていけば、現場から見れば経営環境が良くなったとは感じにくい。
だからこそ、
本部利益と加盟店利益をセットで見る必要があります。
本部本位の政策では、加盟店がついていけない
中期経営計画を作るのは本部です。
しかし、その計画を実際に実行するのは、店舗で働く加盟店オーナーと従業員です。
本部がどれだけ素晴らしい政策を作っても、
現場が実行できなければ、その政策は結果につながりません。
さらに重要なのは、加盟店が努力した結果が、きちんと利益につながることです。
オーナーが人を採用する。
教育する。
売場を改善する。
販売機会を増やす。
店舗を維持する。
こうした努力を積み重ねても、
最終的にオーナー利益が増えないのであれば、「何のために頑張るのか」という疑問が生まれます。
頑張った結果が成果につながらなければ、信頼関係は生まれない
フランチャイズビジネスで重要なのが、
本部と加盟店の信頼関係
です。
本部から示された方針を加盟店が実行する。
そして、その結果として店舗の利益が改善する。
この経験が積み重なれば、
「本部の方針を実行すれば、自分たちの経営も良くなる」
という信頼につながります。
逆に、どれだけ努力しても成果につながらない状態が続けば、
「本部の政策を実行しても、自分たちの利益にはつながらない」
という感覚になってしまいます。
これは単なる不満ではありません。
長期的なフランチャイズ経営における、信頼そのものの問題です。
本部の政策→加盟店の努力→利益→信頼
フランチャイズ経営では、この循環が非常に重要だと思います。
本部が政策をつくる
↓
加盟店が実行する
↓
店舗の利益が改善する
↓
加盟店が本部の政策を信頼する
↓
さらに経営改善に取り組む
この循環が回れば、本部と加盟店の関係は強くなります。
しかし、途中で
「努力しても利益が増えない」
となれば、循環は止まります。
そして、
「本部の政策を実行することが、本当に自分たちの利益になるのか」
という疑問が生まれます。
だからこそ、本部が加盟店に努力を求めるのであれば、
加盟店の努力が成果につながる仕組みを、本部自身がつくる責任がある
のではないでしょうか。
経営戦略は「現場で成果が出て」初めて完成する
本部が経営戦略を作る。
加盟店が実行する。
店舗の利益として結果が出る。
そして、その結果を本部が検証する。
このサイクルが回って、初めて経営戦略は完成するのではないでしょうか。
もし結果が出なければ、
「加盟店の努力が足りなかった」
と考えるだけではなく、
「本部の政策そのものに問題はなかったのか」
まで検証する必要があります。
本部が現場に求めることだけではなく、
本部自身が現場に何を提供できたのか。
ここも同時に評価されるべきです。
現場を軽視した結果が、数字に表れているのではないか
今回の5年間の数字を見ると、セブン‐イレブンについて一つの疑問が浮かびます。
5年前には「既存店の経営基盤を強化し、質を高める」という方向を掲げていた。
しかし、
店舗数は増えた一方で、本部利益は2021年度と比較して大きく伸びていません。
もちろん、これだけで、
「現場を軽視したことが原因だ」
と断定することはできません。
経済環境、人件費、原材料価格、商品政策、競争環境など、さまざまな要因があるからです。
それでも、
「現場の加盟店がどれだけ利益を残せたのか」
という視点から見ると、5年前の経営戦略を改めて検証する必要があるのではないでしょうか。
もし本部の政策と現場の実態に距離があったのであれば、その積み重ねが最終的な数字にも何らかの形で表れている可能性があります。
だからこそ、
「現場を軽視した結果が数字に表れたのではないか」
という問いを、経営側は検証する必要があると思います。
本部と加盟店は「指示する側」と「実行する側」ではない
これからのフランチャイズ経営では、
本部が考えて、加盟店が実行する
という一方向の関係だけでは不十分なのではないでしょうか。
現場には、本部には見えにくい情報があります。
地域のお客様。
人材の確保。
商品の売れ方。
店舗ごとの経営環境。
そして、
「この政策を実行したら、最終的に店舗にいくら利益が残るのか」
という現場の感覚です。
本部が現場の声を経営戦略に反映する。
加盟店が実行する。
結果を数字で検証する。
そして、うまくいかなければ本部側も政策を修正する。
この双方向の仕組みがあってこそ、長期的な信頼関係が生まれるのではないでしょうか。
本当の「答え合わせ」は、加盟店利益まで見ること
5年前の中期経営計画を5年後に答え合わせするのであれば、本部利益だけでは不十分です。
見るべきなのは、
本部が何を目指したのか。
加盟店は何を実行したのか。
その結果、加盟店にどれだけ利益が残ったのか。
そして、
本部と加盟店の信頼関係は強くなったのか。
ここまで確認して、初めて「経営の質」を評価できるのではないでしょうか。
まとめ|頑張った現場が報われる経営でなければ続かない
5年前、コンビニ3社は「量から質へ」という方向に動き始めました。
5年後の数字を見ると、各社の結果には大きな違いがあります。
しかし、本当に重要なのは本部利益だけではありません。
フランチャイズビジネスである以上、
加盟店が努力した結果、その努力が利益として返ってくる仕組みになっているのか。
ここが重要です。
本部がどれだけ立派な政策を掲げても、現場が頑張った結果が成果につながらなければ、次第に信頼は失われていきます。
だからこそ、
「本部が何をしたか」ではなく、「本部の政策によって現場に何が残ったのか」
まで検証する必要があります。
5年前の中期経営計画。
5年後の本部利益。
そして加盟店の利益。
この3つを並べて初めて、本当の答え合わせができます。
現場を大切にする経営とは、現場の声を聞くだけではありません。
現場が頑張った結果を、きちんと利益という成果につなげること。
それができて初めて、本部と加盟店の間に長期的な信頼関係が生まれるのではないでしょうか?
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