最低賃金5%上昇で損益分岐点はどう変わる?AタイプとCタイプを比較【157話】

最低賃金5%上昇によるコンビニの損益分岐点をAタイプとCタイプで比較したイメージ画像 コンビニ経営

最低賃金の上昇が続いています。

2026年の全国加重平均最低賃金は1,177円。2022年の961円から5年間で216円、約22.5%上昇しました。

静岡県でも、2022年の944円から2026年は1,154円となり、5年間で210円、約22.2%上昇しています。

では、最低賃金の上昇によって人件費がさらに5%上がった場合、コンビニ経営の損益分岐点はどこまで上がるのでしょうか。

今回は日販70万円の店舗をモデルに、AタイプとCタイプを比較してみます。


結論|人件費5%上昇で必要な日販はどこまで増えるのか

今回のシミュレーションでは、人件費が5%上昇すると、AタイプとCタイプで必要となる売上増加額に差が出ました。

AタイプCタイプ
基準日販70万円70万円
人件費5%上昇約+7.3万円/月約+7.3万円/月
必要な日販増加約+1.6万円/日約+3万円/日
売上成長率約2.3%約4.3%

今回の条件では、

Aタイプ:約1.6万円/日

Cタイプ:約3万円/日

の売上増加が、人件費上昇分を吸収する目安となりました。

つまり、同じ人件費上昇でも、今回のシミュレーションではCタイプのほうが売上で補う必要が大きいという結果です。

※この金額は今回設定した条件によるシミュレーション上の参考値です。実際の店舗では、粗利率・チャージ・人件費・廃棄・その他経費などによって結果は変わります。


人件費5%上昇すると年間約88万円の負担増

今回のモデルでは、月間人件費を約146万円としています。

これが5%上昇すると、

146万円 × 5% = 約7.3万円/月

です。

年間では、

約7.3万円 × 12か月 = 約87.6万円

になります。

つまり、その他の条件が変わらなければ、年間約88万円分の利益が失われることになります。

コンビニ経営にとって、決して小さな金額ではありません。


AタイプとCタイプで必要な売上が違う

日販70万円の店舗で比較すると、今回のシミュレーションでは、

Aタイプ

70万円
↓
約71.6万円

約1.6万円の日販増加が必要です。

売上成長率では約2.3%です。

Cタイプ

70万円
↓
73万円

約3万円の日販増加が必要です。

売上成長率では約4.3%になります。

この差には、AタイプとCタイプのチャージ構造の違いが影響しています。

同じコンビニでも、契約タイプによって人件費上昇への影響が変わることが分かります。


ただし、日販が低い店舗ほど厳しくなる

ここで重要なのが、「3万円」という金額だけを見るのではなく、現在の日販に対する割合を見ることです。

例えば、

日販70万円で+3万円
→ 約4.3%増

ですが、

日販40万円で+3万円
→ 7.5%増

になります。

同じ3万円でも、日販が低い店舗ほど必要な売上成長率は高くなります。

つまり、

日販が低い店舗ほど、人件費上昇分を売上増加だけで吸収することが難しくなる

ということです。


特に注意したいのが「低日販+最低限の人員」

私が特に気になるのは、

日販が低いのに、人員をこれ以上削れない店舗

です。

24時間営業を続ける以上、深夜帯にも人員が必要です。

すでに最低限の人数で運営している店舗では、

「人件費が上がったから、さらに人を減らす」

という対策には限界があります。

そうなると、残された方法は、

売上を増やすか、利益を減らすか、営業方法そのものを見直すか

になります。

しかし、売上を毎年大きく伸ばし続けることも簡単ではありません。


最低賃金は実際にどれだけ上昇しているのか

過去5年間の全国加重平均最低賃金を見ると、上昇幅はかなり大きくなっています。

年度全国加重平均最低賃金
2022年961円
2023年1,004円
2024年1,055円
2025年1,121円
2026年1,177円

2022年から2026年までで、

961円 → 1,177円

となりました。

5年間で216円、約22.5%の上昇です。

政府も全国加重平均1,500円を2030年代前半までに、できる限り早く実現することを目標としています。

もちろん、今後毎年5%上昇すると決まっているわけではありません。

ただ、コンビニ経営を考えるうえでは、今後も人件費が上昇する可能性を前提にしておく必要があると私は考えています。


静岡県の最低賃金も大きく上昇

静岡県でも同じ傾向です。

年度静岡県最低賃金
2022年944円
2023年984円
2024年1,034円
2025年1,097円
2026年1,154円

944円から1,154円へ、

210円、約22.2%上昇

しています。

アルバイトスタッフの人件費が大きな割合を占めるコンビニにとって、この上昇は無視できません。


では、売上は人件費についてきているのか?

ここで、もう一つ考えなければならないことがあります。

人件費が上がる一方で、売上も同じように伸びているのか?

2026年度のセブン-イレブン既存店売上前年比を見ると、

月既存店売上前年比
3月103.7%
4月99.6%
5月102.7%
6月100.0%
7月100.6%

となっています。

売上が前年を上回る月もありますが、毎月5%前後のペースで伸びているわけではありません。

ここにコンビニ経営の難しさがあります。

人件費は上昇する。
しかし、売上は簡単には同じペースで伸びない。

この差が少しずつ利益を圧迫していきます。


24時間営業を見直す選択肢も出てくる

人件費の上昇が続くのであれば、

「24時間営業を続けることが本当に合理的なのか」

という問題も避けられません。

特に、

  • 深夜の売上が少ない
  • 深夜帯の人件費が高い
  • 人材確保が難しい
  • オーナー自身が不足時間を埋めている

という店舗では、24時間営業そのものが利益を圧迫している可能性があります。

営業時間を短縮する場合も、単純に「売上が減るからダメ」と考えるのではなく、

失われる粗利と削減できる人件費

を比較する必要があります。


今の利益より「これからの損益分岐点」を見る

現在、利益が出ている店舗でも、それだけで安心とは言えません。

重要なのは、

「今、いくら利益が出ているか」だけではなく、今後もその利益を維持できるのか

ということです。

人件費が上がる。

経費も上がる。

一方で、売上を大きく伸ばすのは簡単ではない。

この状態が続けば、損益分岐点は少しずつ上昇していきます。

だからこそ、

「損益分岐点が今いくらなのか」ではなく、「損益分岐点がこれからどこまで上がるのか」

を見る必要があります。


本部の改革だけに期待しない

セブン-イレブン本部も、これからの環境変化に対応するため、契約制度や店舗運営の改革を進めています。

本部の制度変更や省人化がどこまで進むのかは、オーナーにとって重要です。

しかし、それと同時に、

自分の店舗の数字を見ること

も必要です。

本部がどんな制度を作るのかを待つだけではなく、

  • 今の損益分岐点
  • 人件費が5%上がった場合
  • さらに人件費が上がった場合
  • 24時間営業をやめた場合
  • 日販が下がった場合

などを自分の店舗でシミュレーションしておく。

これがこれからの経営には重要だと思います。


「撤退」も経営判断の一つ

そして、どれだけ努力しても利益を維持できないのであれば、

撤退するという選択肢も必要です。

赤字になってから考えるのではなく、

「どこまでなら続けられるのか」

「どこから撤退を検討するのか」

というラインを、利益が出ているうちから考えておく。

撤退は必ずしも失敗ではありません。

将来の損失を防ぐための経営判断でもあります。


まとめ|余力があるうちに、未来の損益分岐点を見る

今回のシミュレーションでは、日販70万円の店舗で人件費が5%上昇した場合、

Aタイプ:約+1.6万円/日

Cタイプ:約+3万円/日

の売上増加が必要という結果になりました。

しかし、日販が低くなれば、同じ3万円でも必要な売上成長率はさらに高くなります。

だからこそ、これからのコンビニ経営では、

「今、黒字だから大丈夫」

ではなく、

「人件費が上がっても、この店舗は黒字を維持できるのか?」

を考えることが重要だと思います。

コンビニ経営で怖いのは、赤字になった瞬間だけではありません。

「まだ大丈夫」と思っている間に、損益分岐点が少しずつ上がっていくことです。

人件費が上がる。

必要な売上が増える。

しかし、売上を伸ばすのは簡単ではない。

だからこそ、

今の利益ではなく、未来の損益分岐点を見る。

そして、

余力があるうちに考える。

それが、これからのコンビニ経営にはますます重要になってくるのではないでしょうか。

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