コンビニ経営を考えるとき、
「最低収入保証があるから安心」
という言葉を耳にすることがあります。
確かに、一定額の収入が保証されることには意味があります。
しかし、ここで一度考えてみたいことがあります。
その「最低保証」は、いったい何を保証しているのでしょうか?
今回は、私が作成しているSEMCを使って、24時間営業のCタイプ店舗を日販35万円でシミュレーションしました。
すると、最低保証の数字だけでは見えてこない、店舗経営の実態が見えてきました。
セブン-イレブンの最低保証とは?
まず、最低保証について整理します。
最低保証は、オーナーの最終利益を一定額保証するものではありません。
保証されるのは、
オーナー総収入
です。
大まかに言えば、
商品売上
↓
売上総利益(GP)
↓
7-11チャージ
↓
オーナー総収入
というところまでです。
ここからさらに店舗運営に必要な費用を負担します。
- スタッフの人件費
- 廃棄
- 消耗品費
- 水道光熱費
- 清掃費
- 修繕費
- その他経費
などです。
したがって、
最低保証2,000万円=オーナーが2,000万円儲かる
という意味ではありません。
最低保証2,000万円は日販35万円程度に相当
では、SEMCで実際に計算してみます。
今回の設定は、
- Cタイプ
- 24時間営業
- 1号店
- 加盟5年未満
- 地域C
- 月30日営業
- 平均日販35万円
- GP率31.8%
です。
この場合、
商品売上高
1,050万円/月
売上総利益(GP)
333.9万円/月
7-11チャージ
166.37万円/月
オーナー総収入
167.53万円/月
年間では、
約2,010万円
になります。
つまり今回の条件では、
最低保証約2,000万円と、日販35万円の店舗から得られるオーナー総収入がほぼ同じ水準
になりました。
もちろん、これは「最低保証=日販35万円を保証する」という意味ではありません。
あくまで、今回のSEMCの条件で計算すると、最低保証額と日販35万円の店舗のオーナー総収入がほぼ同じになるということです。
日販35万円の24時間営業店舗に必要な人件費
今回のSEMCでは、店舗に必要な労働時間を33時間/日として設定しています。
そして、
- オーナー:171時間/月
- 奥様:171時間/月
- PA:約151時間/月
という勤務時間になっています。
オーナー夫妻の合計は、
342時間/月
です。
一方、PAは、
約22時間/日
です。
つまり今回の条件では、
24時間営業の店舗を維持するために、オーナー夫妻がフルタイムで働き、残りをPAが担当する
という構造になります。
PAの人件費は月約84万円
今回のSEMCでは、PAの給与を、
約83.96万円/月
としています。
これを差し引くと、
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 商品売上高 | 1,050万円 |
| 売上総利益 | 333.9万円 |
| 7-11チャージ | ▲166.37万円 |
| オーナー総収入 | 167.53万円 |
| 雑収入加算後収入 | 172.53万円 |
| PA給与 | ▲83.96万円 |
| 廃棄 | ▲26.25万円 |
| その他経費 | ▲18.50万円 |
| 最終利益 | 約41.8万円 |
となります。
一見すると、
月約41.8万円の利益
が残っています。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。
SEMCの人件費には含まれていない雇用コストがある
今回のSEMCで計算している約84万円は、基本的にPAの給与をベースにした人件費です。
実際の店舗では、スタッフを雇用するために給与以外の負担も発生します。
例えば、
- 社会保険料の事業主負担
- 労働保険料
- 有給休暇取得時の賃金
- その他の雇用関連コスト
などです。
つまり、
PA給与83.96万円=店舗が負担する人件費のすべて
ではありません。
今回のSEMCでは、これらの費用を別途加算していません。
したがって、
最終利益41.8万円は、すべての雇用関連コストを含めた実際の利益ではありません。
ここはシミュレーションを見るうえで重要な注意点です。
オーナー夫妻の労働も「無料」ではない
さらに考えなければならないのが、
オーナー夫妻自身の労働
です。
今回の設定では、
オーナー171時間+奥様171時間=342時間/月
働いています。
平均時給を約1,297円として、この労働時間を単純に評価すると、
342時間 × 1,297円
= 約44.3万円
になります。
一方、SEMC上の最終利益は、
約41.8万円
です。
単純比較すると、
41.8万円 − 44.3万円
= 約▲2.5万円
となります。
これは、オーナー夫妻の労働をPAと同じように人件費として評価した場合の管理会計上の試算です。
つまり今回の条件では、
オーナー夫妻の労働を最低賃金相当で評価すると、店舗利益はほぼ残らない
という結果になります。
PAを増やせばオーナーの労働時間は減らせる
もちろん、
「オーナー夫妻がそんなに働く必要があるなら、PAを増やせばいい」
という考え方もあります。
これはその通りです。
しかし、PAを増やせば、
PAの給与が増える
ことになります。
さらに実際には、
- 社会保険料の事業主負担
- 労働保険料
- 有給休暇
- 採用コスト
- 教育コスト
など、雇用に伴うコストも考える必要があります。
つまり、
オーナー夫妻の労働を減らすほど、店舗側の人件費負担が増える
という関係があります。
日販35万円では「最低保証」と「利益」は別問題
今回のシミュレーションから見えてくるのは、
最低保証があることと、店舗が十分な利益を出せることは別問題
ということです。
今回、
最低保証約2,000万円
と、
日販35万円の店舗のオーナー総収入
がほぼ同じ水準になりました。
しかし、その店舗を24時間営業で維持するためには、
オーナー夫妻がフルタイムで働く
という条件になっています。
そして、その労働を最低賃金相当で評価すると、利益はほぼ残りません。
さらに、PAの給与以外に発生する雇用関連コストを考慮すれば、実質的な利益はさらに小さくなる可能性があります。
では、最低保証は何のためにあるのか?
ここで最初の疑問に戻ります。
最低保証は、何のための制度なのでしょうか?
最低保証には、低日販店舗でも一定水準のオーナー総収入を確保し、事業を継続できるようにするという意味があります。
売上が低ければ、通常はオーナー総収入も低くなります。
そこで一定額を保証する。
これは加盟店にとって一つの安全網になります。
ただし、
安全網と利益保証は同じではありません。
最低保証があっても、人件費や廃棄、その他の経費が増えれば、最終的な利益は変わります。
最低保証2,000万円だけでは店舗経営の実態は分からない
「年間2,000万円保証」
という数字だけを見ると、大きな金額に感じます。
しかし今回のSEMCでは、
最低保証約2,000万円
↓
日販35万円程度の店舗のオーナー総収入
↓
オーナー夫妻342時間/月
↓
PA約22時間/日
↓
24時間営業を維持
という構造になりました。
さらに、PAの給与以外に発生する雇用関連コストや、オーナー夫妻自身の労働を考えると、見た目の利益とは違った景色が見えてきます。
本当に見るべきなのは「最低保証額」ではない
コンビニ経営を考えるとき、
「最低保証はいくらなのか?」
だけを見るのではなく、
「その保証額を得るために、オーナー夫妻はどれだけ働くのか?」
まで見る必要があります。
さらに、
- 日販
- GP率
- 7-11チャージ
- PA給与
- 社会保険料
- 労働保険料
- 有給休暇
- 廃棄
- その他経費
- オーナー夫妻の労働時間
- PAの必要時間
まで含めて考える必要があります。
最低保証とは、何を守るための制度なのか?
最低保証そのものに意味がないわけではありません。
低日販店舗でも一定水準のオーナー総収入を確保し、事業を継続するための安全網という意味はあります。
ただ、
最低保証2,000万円=オーナーが2,000万円儲かる
という意味ではありません。
今回のSEMCでは、
最低保証約2,000万円
=日販35万円程度の店舗のオーナー総収入に相当
しました。
そして、その店舗を24時間営業で維持するには、今回の条件ではオーナー夫妻がフルタイムで働き、PAは約22時間/日という設定になりました。
さらに、スタッフの給与だけではなく、社会保険料や労働保険料、有給休暇などの雇用関連コストも考える必要があります。
だからこそ、最低保証を見るときには、
「年間いくら保証されるのか?」
だけではなく、
「その保証額を得るために、オーナーはどれだけ働き、最終的にどれだけの利益と時間が残るのか?」
を見る必要があるのではないでしょうか。
保証額だけでは見えない「労働」と「実質的な収益性」まで見る。
それが、コンビニ経営を考えるうえで重要なのだと思います。
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