最低賃金1,500円時代のコンビニ経営のリアル|6年後の店舗利益は半分以下?【第168話】

最低賃金1,500円時代のコンビニ経営をSEMCで試算し、日販65万円でも店舗利益が月93万6994円から45万522円へ約51.9%減少するイメージ図 コンビニ経営
  1. 結論|日販65万円を維持しても、6年後の店舗利益は約52%減少
    1. 利益は約51.9%減少
  2. SEMCの前提条件|15年経過・Cタイプ・C地域
  3. セブン-イレブンの平均日販と商品荒利率をIRで確認
  4. 2026年の既存店売上は大きく崩れていない
    1. 「売上を維持できても、人件費が上昇したら利益はどうなるのか」
  5. 静岡県の最低賃金は5年間で241円上昇
    1. 5年間で241円、約26.4%上昇
  6. 最低賃金1,500円の根拠は政府の政策目標
  7. SEMCで最低賃金1,500円時代の店舗利益を試算
  8. SEMCの計算結果|人件費は月42万円増加
    1. 月42万172円の増加
  9. 利益が半分以下になる理由を数字で見る
    1. 最終利益は月48万6,472円減少
  10. GP率30.8%は将来予測ではなくSEMCの仮定
    1. 「GP率が1ポイント低下した場合」
  11. 複数店経営は最低賃金上昇の影響をさらに受けやすい
    1. 「店舗を増やせば売上も増える」だけでは判断できない
  12. 複数店経営では「店舗数」より利益を確認する
    1. 「その店舗単体で十分な利益を残せるか」
  13. 日販65万円を維持しても利益は維持できない
    1. 売上を維持することと、利益を維持することは別問題
  14. これから重要になるのは「損益分岐点」
    1. 「売上を伸ばす力」だけでなく「コスト上昇を吸収する力」
  15. 本部の業績と加盟店の利益は分けて考える
    1. 「自分の店舗に最終的にいくら残るのか」
  16. これからのコンビニ経営は「精度の戦い」になる
    1. 「規模の戦い」から「精度の戦い」へ。
  17. まとめ|売上を維持しても、利益まで維持できるとは限らない
    1. 年間約584万円の利益減少
    2. 売上が維持できても、利益まで維持できるとは限らない。
    3. 「上昇するコストを吸収しながら、どれだけ利益を残せるか」
    4. 「規模の戦い」から「精度の戦い」へ。

結論|日販65万円を維持しても、6年後の店舗利益は約52%減少

最低賃金が1,500円水準になった場合、コンビニ経営はどう変わるのでしょうか。

今回、SEMCを使って現在と6年後の店舗利益を比較しました。

平均日販は、現在も6年後も65万円で固定しています。

それでもSEMCの結果は、

項目現在6年後想定差額
平均日販650,000円650,000円±0円
GP率31.8%30.8%▲1.0pt
人件費1,411,971円1,832,143円+420,172円
最終利益(月間)936,994円450,522円▲486,472円
最終利益(年間)11,243,928円5,406,264円▲5,837,664円

月間利益は、

936,994円 → 450,522円

となりました。

つまり、

利益は約51.9%減少

します。

年間では約584万円の利益減少です。

ただし、これは「6年後に静岡県の最低賃金が必ず1,500円になる」という予測ではありません。

2032年をシミュレーション時点として、最低賃金1,500円水準になった場合をSEMCで試算したものです。


SEMCの前提条件|15年経過・Cタイプ・C地域

今回のシミュレーションは、すべてのコンビニ店舗を対象にしたものではありません。

15年以上経過したCタイプの店舗をモデルにしています。

項目設定
契約タイプCタイプ
加盟年数15年以上
地域C地域
24時間営業あり
店舗数1号店
営業日数30日
平均日販650,000円
現在GP率31.8%
6年後GP率30.8%
現在のSEMC平均時給1,248円
6年後の通常時給1,500円
6年後の深夜時給1,875円

今回のモデルは、長期間営業している既存店舗を想定しています。

なお、C地域は今回使用しているSEMC上の地域区分です。


セブン-イレブンの平均日販と商品荒利率をIRで確認

将来のシミュレーションをする前に、現在のセブン-イレブンの実績を確認します。

セブン&アイ・ホールディングスのIRによると、セブン-イレブン・ジャパンの全店平均日販と商品荒利率は次のように推移しています。

年度全店平均日販商品荒利率
2023年度691,000円32.2%
2024年度692,000円32.0%
2025年度699,000円31.8%

直近3年間の平均日販は約69万円。

商品荒利率は32%前後で推移し、2025年度は**31.8%**です。

今回のSEMCでは、この実績を参考に現在のGP率を**31.8%**としています。

セブン&アイ・ホールディングス「国内コンビニエンスストア事業」


2026年の既存店売上は大きく崩れていない

現在の売上動向も確認してみます。

2026年3月から8月までのセブン-イレブン既存店売上高前年同月比は、

月既存店売上高
3月103.7%
4月99.6%
5月102.7%
6月100.0%
7月100.6%
8月100.3%

となっています。

また、2027年2月期第1四半期では、既存店売上高が前年同期比2.0%増、商品荒利率は**32.0%**でした。

つまり、今回の問題は、

「売上が大きく減少するから利益が減る」

という話ではありません。

むしろ、

「売上を維持できても、人件費が上昇したら利益はどうなるのか」

という問題です。

セブン&アイ・ホールディングス「月次営業情報」


静岡県の最低賃金は5年間で241円上昇

コンビニ経営に直接影響する人件費。

その基準となる最低賃金は、静岡県でも大きく上昇しています。

年度静岡県最低賃金
2021年度913円
2022年度944円
2023年度984円
2024年度1,034円
2025年度1,097円
2026年度1,154円

2026年度は、

1,097円 → 1,154円

となり、57円の引き上げです。

2026年10月15日から適用されます。

2021年の913円と比較すると、

913円 → 1,154円

となり、

5年間で241円、約26.4%上昇

しています。

静岡労働局「最低賃金」


最低賃金1,500円の根拠は政府の政策目標

では、今回の「1,500円」という数字はどこから来たのでしょうか。

政府は、全国加重平均の最低賃金1,500円を2030年代前半のできる限り早期に達成するという目標を掲げています。

ただし、

全国加重平均1,500円=静岡県が1,500円になる

という意味ではありません。

そのため今回の記事では、1,500円を将来のシミュレーション条件として使用します。

現在は2026年なので、6年後を2032年と設定しました。

したがって、

2032年に静岡県の最低賃金が1,500円になると予測しているわけではありません。

あくまで、

「最低賃金1,500円水準になった場合、店舗利益はどうなるのか」

を確認するための試算です。


SEMCで最低賃金1,500円時代の店舗利益を試算

6年後の店舗を想定し、通常時間帯の時給を1,500円に設定しました。

深夜帯は25%の割増として、

1,875円

としています。

SEMC上の月間労働時間は、

1,131時間

です。

また、深夜割増を含めたSEMC上の平均時給は、

1,619円

となっています。

ここは、

通常時給1,500円

と

SEMCの平均時給1,619円

を区別して考える必要があります。


SEMCの計算結果|人件費は月42万円増加

今回のSEMCの出力結果を比較すると、次のようになります。

項目現在6年後想定差額
平均日販650,000円650,000円±0円
GP率31.8%30.8%▲1.0pt
月間商品売上高19,500,000円19,500,000円±0円
売上総利益(GP)6,201,000円6,006,000円▲195,000円
7-11チャージ3,242,660円3,113,960円▲128,700円
雑収入加算後収入3,008,340円2,942,040円▲66,300円
人件費1,411,971円1,832,143円+420,172円
廃棄487,500円487,500円±0円
その他経費185,000円185,000円±0円
最終利益936,994円450,522円▲486,472円

最大の変化は人件費です。

1,411,971円 → 1,832,143円

となり、

月42万172円の増加

となっています。


利益が半分以下になる理由を数字で見る

利益減少の中身を分解すると、より分かりやすくなります。

項目月間への影響
GPの減少▲195,000円
7-11チャージの減少+128,700円
チャージ後収入の減少▲66,300円
人件費の増加▲420,172円
廃棄・その他経費±0円
最終利益の減少▲486,472円

GPは、

6,201,000円 → 6,006,000円

で19万5,000円減少。

一方、7-11チャージは12万8,700円減少するため、チャージ後収入の減少は6万6,300円です。

しかし、人件費は42万172円増加。

その結果、

最終利益は月48万6,472円減少

しました。


GP率30.8%は将来予測ではなくSEMCの仮定

ここは明確にしておきます。

現在のGP率31.8%は、セブン-イレブンの2025年度商品荒利率を参考にしています。

一方、

6年後の30.8%

は、将来のセブン-イレブンの実績を予測した数字ではありません。

今回は、

31.8% → 30.8%

と、現在より1ポイント低下した場合をSEMCの条件として設定しています。

したがって、

「2032年にはGP率が30.8%になる」

と予測しているわけではありません。

あくまで、

「GP率が1ポイント低下した場合」

のシミュレーションです。


複数店経営は最低賃金上昇の影響をさらに受けやすい

今回のSEMCは1号店を前提にしています。

しかし、複数店経営になると、人件費上昇の影響はさらに大きくなる可能性があります。

単店経営では、オーナー自身が店舗に入り、一定の労働力を担うことができます。

ところが複数店になると、オーナーがすべての店舗に入ることは難しくなります。

そのため、

オーナーの労働力

を、

アルバイト・パートなどの労働力

で補う必要が出てきます。

最低賃金が上昇すれば、

店舗数が増える
↓
必要な労働時間が増える
↓
外部人材への依存が増える
↓
人件費上昇の影響が大きくなる

という構造になります。

つまり、

「店舗を増やせば売上も増える」だけでは判断できない

のです。


複数店経営では「店舗数」より利益を確認する

複数店経営で重要なのは、

何店舗持っているか

だけではありません。

むしろ、

  • 1店舗あたりの最終利益
  • 1店舗あたりの人件費
  • オーナーの労働時間
  • 人件費率
  • 損益分岐点
  • 店舗管理にかかる時間

を見る必要があります。

オーナーが現場に入らなくても、

「その店舗単体で十分な利益を残せるか」

が重要になります。

最低賃金が上昇する時代には、複数店経営ほど人件費効率が重要な経営指標になっていくのではないでしょうか。


日販65万円を維持しても利益は維持できない

今回のシミュレーションで最も重要なポイントです。

セブン-イレブンの2025年度全店平均日販は69.9万円。

今回SEMCで設定した日販は、

65万円

です。

そして、この65万円を6年後も維持すると仮定しました。

それでも、

月間最終利益

936,994円
↓
450,522円

となりました。

つまり、

売上を維持することと、利益を維持することは別問題

です。


これから重要になるのは「損益分岐点」

これからのコンビニ経営では、

「日販をいくらにするか」

だけではなく、

「その日販でいくら利益を残せるのか」

を見ることが重要になります。

例えば、

  • 時給が100円上昇したら利益はいくら減るのか
  • GP率が1ポイント下がったらどうなるのか
  • 日販が5万円増えたら利益はいくら増えるのか
  • 人員配置を変更したら利益はいくら変わるのか
  • 省人化によって労働時間をどこまで削減できるのか

こうした数字を事前に確認する必要があります。

これからは、

「売上を伸ばす力」だけでなく「コスト上昇を吸収する力」

が店舗の競争力になるのではないでしょうか。


本部の業績と加盟店の利益は分けて考える

セブン-イレブンのIRを見ると、売上は現在も大きく崩れているわけではありません。

しかし、

本部の業績

と

1店舗の加盟店利益

は同じではありません。

本部の業績を見る場合には、チェーン全体の売上や商品荒利、店舗数、営業利益などが重要です。

一方、加盟店オーナーにとって重要なのは、

「自分の店舗に最終的にいくら残るのか」

です。

そのためには、

売上
↓
GP
↓
チャージ
↓
人件費
↓
廃棄・経費
↓
最終利益

まで確認する必要があります。


これからのコンビニ経営は「精度の戦い」になる

人口減少、人手不足、最低賃金の上昇。

こうした環境では、単純に売上や店舗数を増やすだけではなく、

1店舗ごとの収益性

がますます重要になります。

同じ日販65万円でも、人件費の高い店舗と効率よく運営できる店舗では、最終的な利益は大きく変わります。

だからこそ、これからのコンビニ経営は、

「売上の競争」から「利益を残す仕組みの競争」へ。

そして、

「規模の戦い」から「精度の戦い」へ。

変わっていくのではないでしょうか。


まとめ|売上を維持しても、利益まで維持できるとは限らない

今回のSEMCでは、

15年以上経過したCタイプ・C地域・24時間営業・1号店

を前提に、平均日販65万円を現在も6年後も維持すると仮定しました。

その結果、

月間最終利益

936,994円 → 450,522円

となりました。

年間では、

11,243,928円 → 5,406,264円

。

年間約584万円の利益減少

です。

今回の数字は未来を予言するものではありません。

2032年をシミュレーション時点として、最低賃金1,500円水準、通常時給1,500円、深夜時給1,875円、GP率30.8%、日販65万円という条件を設定したSEMCの試算です。

しかし、この試算から見えてくることがあります。

売上が維持できても、利益まで維持できるとは限らない。

そして、複数店経営ではオーナーが現場に入る時間が減ることで、外部人材への依存度が高まり、最低賃金上昇の影響をさらに受ける可能性があります。

これからのコンビニ経営で重要になるのは、

「どれだけ売るか」

だけではありません。

「上昇するコストを吸収しながら、どれだけ利益を残せるか」

です。

これからのコンビニ経営は、

売上の競争から、利益を残す仕組みの競争へ。

そして、

「規模の戦い」から「精度の戦い」へ。

変わっていくのではないでしょうか。

SEMCは、その未来を数字で考えるためのツールです。

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