CSとES、どちらが先?良い接客を「させる」のではなく「生み出す」【158話】

CSとESの関係を示し、スタッフが安心して働ける環境から良い接客が生まれることを表現したコンビニ経営イメージ画像 コンビニ経営

コンビニ経営では、よく「CS(顧客満足)を高めよう」という話が出てきます。

もちろん、お客様に気持ちよく利用していただくことは大切です。

では、CSを高めるために、スタッフへ「もっと丁寧な接客を」「もっとお客様の期待を超えるサービスを」と求め続ければ、それでいいのでしょうか。

私は、CSとESはどちらか一方を選ぶものではないと思っています。

ただ、順番をつけるなら、私はESからだと考えています。

スタッフが疲弊し、安心して働けない環境で「もっとお客様満足を」と求めても、長続きする接客にはなりません。

スタッフが安心して働ける環境をつくる。
その結果として、自然なCSが生まれる。

これが、私が考えるコンビニ経営におけるCSとESの順番です。


コンビニスタッフは「十人十色」

コンビニで働くスタッフには、さまざまな人がいます。

定年後の生活費を補いたい人。

人と接する機会を持ちたい人。

子どもが学校に行っている時間を利用して働く人。

高校生で、お小遣いや将来のためのお金を稼ぎたい人。

大学生で、生活費や学費の足しにしたい人。

それぞれ働く理由が違います。

そして、性格も価値観も違います。

すべてのスタッフが、

「接客のプロになりたい」

と思ってコンビニで働いているわけではありません。

だから私は、すべてのスタッフを同じ接客スタイルにする必要はないと思っています。


理想の接客と、毎日の接客は違う

以前、セブン-イレブンでは接客コンテストがありました。

コンテストに出場するような接客は、本当に丁寧で、きれいで、非常に完成度の高いものです。

接客のお手本としては素晴らしいと思います。

ただ、私は店舗オーナーとして、

「全スタッフに、このレベルの接客を目指してください」

とは言えませんでした。

なぜなら、コンビニの仕事は接客だけではないからです。

レジ。

公共料金の支払い。

宅配便。

各種サービス。

品出し。

清掃。

売場づくり。

発注。

新商品やキャンペーンへの対応。

さらに、本部からは毎日のようにさまざまな情報が入ってきます。

スタッフは、それらを覚えながら仕事をしています。

そこへさらに、

「もっと笑顔で」

「もっと丁寧に」

「もっとお客様の期待を超える接客を」

と求め続ければ、スタッフの負担はどこまでも増えてしまいます。


「良い接客」の基準も、人によって違う

スタッフだけではありません。

お客様の価値観も、それぞれ違います。

丁寧に声をかけてもらうことを「良い接客」と感じる人もいます。

一方で、

「必要なことだけ素早くやってくれればいい」

という人もいます。

つまり、

スタッフにも価値観があり、お客様にも価値観があります。

だからこそ、全員に同じ接客を求めることには限界があります。

私は、

基本的な接客水準は店舗として統一する。
その先は、一人ひとりの個性を尊重する。

くらいが、コンビニには合っているのではないかと思っています。


「顧客満足を最大化する」より「不満足を発生させない」

私は、店舗運営では、

「お客様の満足度を最大限まで高めよう」

と考えるより、

「お客様に不満足を発生させない」

ことを重視しています。

例えば、

お客様を待たせたままにしない。

明らかなレジミスをしない。

お客様を無視しない。

分からないことを適当に答えない。

こうした基本的な部分をしっかり守る。

これは店舗として必要なルールです。

しかし、その先まで、

「もっと話しかけましょう」

「もっと笑顔で」

「もっと丁寧な言葉遣いで」

と細かく決めてしまう必要はないと思っています。

最低限のルールを守ったうえで、

一人ひとりが、自分のできる接客で一生懸命お客様に対応してくれればいい。

私はそう考えています。


ESは「給料を上げること」だけではない

では、スタッフにとって働きやすい環境とは何でしょうか。

もちろん、給料は大切です。

ただ、コンビニ経営では人件費にも限界があります。

売上が大きく伸びない中で、人件費だけを大幅に上げ続けることは簡単ではありません。

だからこそ、私はESを「給料」だけで考えるべきではないと思っています。

例えば、

  • 自分の生活に合わせてシフトを組める
  • スタッフ同士の人間関係が良い
  • 必要な情報が整理されている
  • 何を優先すればいいのか分かる
  • 困ったときに相談できる
  • 店側がスタッフを守ってくれる

こうした環境も、働きやすさには大きく影響します。


情報を増やすだけでは、ESは高まらない

コンビニでは、本部からさまざまな情報が入ってきます。

新商品。

キャンペーン。

販促。

オペレーション変更。

新しいサービス。

注意事項。

スタッフに伝えなければならないことは、決して少なくありません。

もちろん、必要な情報は共有しなければいけません。

しかし、

「情報を伝えること」と「情報を詰め込むこと」は違います。

何でもかんでもスタッフに覚えてもらおうとすると、本当に重要な情報が埋もれてしまいます。

だから私は、

必要な情報を整理し、優先順位を明確にすることもESの一つ

だと考えています。


信頼の基本は「ルールを守ること」

そして、スタッフとの信頼関係をつくるうえで、私が一番大切だと思っているのが、

法律やルールをきちんと守ることです。

パワハラやセクハラをしない。

サービス残業をさせない。

仕事をしてもらったのであれば、その時間をきちんと労働時間として扱う。

スタッフの善意に甘えない。

ここは経営者として当たり前のことだと思っています。

スタッフが自主的に仕事をしてくれたとしても、それが店舗として必要な仕事なら、きちんと労働として評価する。

逆に、本当は必要のない仕事をスタッフが善意でやっているのであれば、

「そこまでやらなくて大丈夫ですよ」

と伝えることも必要です。

スタッフの善意を利用しない。

これも、ESを考えるうえで大切なことだと思います。


クレームがあったときこそ、スタッフを守る

お客様からクレームが入ったときも同じです。

「お客様が言っているのだから、スタッフが悪い」

と最初から決めつけることはしません。

まず事実を確認します。

スタッフから話を聞く。

必要であれば防犯カメラを確認する。

事実関係を整理したうえで、スタッフに問題があれば改善する。

一方で、明らかに事実と違うクレームだったり、悪質な行為が繰り返されたりする場合には、スタッフを守ることも必要です。

場合によっては、入店をお断りすることもあります。

「お客様最優先」というのは、お客様の要求を何でも受け入れることではありません。

スタッフが、

「困ったときはオーナーが守ってくれる」

と思えることも、安心して働くためには重要です。


責任への評価と、接客への評価は別

もう一つ、コンビニ経営で考えておきたいことがあります。

店長や社員は、アルバイトスタッフとは違い、

売上や利益などの数字。

シフト作成。

人員管理。

問題が起きたときの判断。

本部とのやり取り。

店舗運営に対する責任。

こうした部分を背負っています。

だから、それに対して給与が支払われます。

一方で、店頭に立てば、

レジをする。

品出しをする。

お客様に挨拶する。

という仕事は、アルバイトスタッフと同じです。

そして実際には、

店長や社員よりも、お客様から高く評価される接客をするアルバイトスタッフもいます。

これは決して不思議なことではありません。

なぜなら、

責任に対する評価と、接客に対する評価は別だからです。

役職が上だから、必ず接客が上手いわけではありません。

給与が高いから、必ず接客が優れているわけでもありません。

それぞれの役割を、それぞれの基準で評価する必要があると思います。


良い接客を「させる」のではなく「生み出す」

私は、スタッフに良い接客を「させる」ことには限界があると思っています。

人は、細かく指示され続けると、どうしても仕事が作業になってしまいます。

一方で、

安心して働ける。

無理なことを要求されない。

人間関係が良い。

必要な情報が整理されている。

困ったときには店側が守ってくれる。

そんな環境があれば、スタッフはそれぞれの価値観や個性を生かして、お客様に対応してくれるのではないでしょうか。

もちろん、全員が同じような接客をするわけではありません。

でも、それでいいと思っています。

一人ひとりが、自分なりの接客で一生懸命仕事をする。

その積み重ねが、結果としてお客様からの信頼につながっていく。

私はそう考えています。


まとめ|ESを整えることが、安定したCSにつながる

CSとES。

どちらが先なのか。

私は、まずESを整えることが大切だと思っています。

CSを高めるために、スタッフへ次々と新しいことを要求するのではなく、

まずスタッフが安心して働ける環境をつくる。

基本的な接客ルールを決める。

お客様に不満足を発生させない仕組みをつくる。

必要な情報を整理する。

スタッフが困ったときには、店側が守る。

そして、その先の接客は一人ひとりの個性に任せる。

これが、コンビニという仕事には合っているのではないでしょうか。

CSを直接高めようとするのではなく、CSが生まれやすい環境をつくる。

そのための土台がESなのだと思います。

良い接客を「させる」のではなく、
良い接客が「生まれる環境」をつくる。

それが、私が考えるコンビニ経営におけるESとCSの関係です。

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