本部と店舗では「利益の質」が違う|最低賃金上昇で店舗利益は約半分になる【第166話】

コンビニ本部と店舗の利益構造、最低賃金上昇で店舗利益が約半分になることを示したイメージ画像 コンビニ経営

コンビニ経営では、どうしても「日販」や「売上高」に目が向きます。

しかし、店舗を経営する側にとって本当に重要なのは、

「どれだけ売ったか」ではなく、「最終的にどれだけ利益を残せたか」

ではないでしょうか。

特に現在は、最低賃金の上昇によって人件費が上がっています。

売上が変わらなくても人件費が上がれば、店舗に残る利益は減っていきます。

では、本部と店舗では、人件費上昇による影響は同じなのでしょうか。

今回はSEMCのシミュレーションを使いながら、本部と店舗の利益構造の違い、そしてこれから本当に必要になる店舗オペレーションについて考えてみます。


本部と店舗では「利益を生み出す構造」が違う

セブン-イレブン・ジャパンの2026年2月期を見ると、

  • 営業総収入:約8,877億円
  • 営業利益:約2,203億円

となっています。

営業総収入に対する営業利益率を単純計算すると、約**24.8%**です。

一方、店舗では売上を増やすと、それに伴って現場の仕事も増えます。

  • レジ対応
  • 品出し
  • 清掃
  • 発注
  • 商品管理
  • 廃棄処理
  • 接客

などです。

売上を増やすために人員を増やせば、人件費も増えていきます。

つまり、

売上が増える=利益が同じように増える

とは限りません。

ここに、本部と店舗の「利益の質」の違いがあります。

※本部の営業利益率と、後述する店舗の最終利益率は、会計上の利益の定義や分母が異なります。そのため、数字を単純に優劣として比較するものではありません。


本部はフランチャイズの規模を広げることで利益を積み上げやすい

本部には、規模の経済があります。

商品開発、物流、システム、ブランド、販促、教育など、すでに構築した仕組みを多くの店舗で共有できます。

そのため、フランチャイズ店舗の規模が拡大すれば、既存の仕組みをより大きな規模で活用できます。

つまり、

本部はフランチャイズの規模を広げることで、利益を積み上げやすい構造

を持っています。

ただし、ここで重要なのは、

フランチャイズ店舗を増やすことと、直営店を増やすことは同じではない

ということです。


直営店を増やしても、必ず利益が増えるわけではない

本部が直営店を増やせば、売上は増えます。

しかし同時に、

  • 店舗スタッフの人件費
  • 水道光熱費
  • 廃棄などの店舗コスト
  • 店舗運営費

も本部側が負担します。

つまり、

直営店を増やせば自動的に利益が増えるわけではありません。

特に最低賃金が上昇する環境では、店舗を運営するコストも上昇します。

ここから考えると、本部にとっても重要なのは単純な店舗数ではありません。

「1店舗あたり、どれだけ利益を生み出せるのか」

という店舗の生産性です。


時給1,500円になっても、本部利益が同じように半分になるわけではない

今回のSEMCシミュレーションでは、店舗の基本時給を1,200円から1,500円にすると、

最終利益が約74.4万円から約38.0万円

まで減少しました。

利益率では、

約3.5% → 約1.8%

です。

店舗利益は約半分になります。

しかし、

加盟店の人件費が上昇したからといって、本部の利益まで同じ割合で半分になるわけではありません。

加盟店で働く従業員の人件費は、基本的に加盟店側の店舗コストだからです。

もちろん、本部自身にも従業員がいるため、本部の人件費も上昇します。

ただし、

加盟店の人件費上昇と、本部自身の人件費上昇は別の問題です。

ここに、本部と店舗の利益構造の大きな違いがあります。


本当に必要なのは「直営でも利益が出る店舗オペレーション」

ここが、今回の記事で最も伝えたいポイントです。

これからのコンビニに本当に必要なのは、

「加盟店だから利益が出る仕組み」ではなく、直営で運営しても利益が出るほど強い店舗オペレーション

ではないでしょうか。

これは、全店舗を直営化するべきという意味ではありません。

そうではなく、

本部が店舗の人件費や運営コストを負担しても、十分な利益を残せる店舗モデルを作る。

ということです。

もしそれが実現できれば、そのオペレーションを加盟店にも展開できます。

直営店で検証する
↓
利益の出る仕組みを確立する
↓
加盟店へ展開する
↓
加盟店の利益も改善する

この流れが、本部と加盟店の双方にとって理想的なのではないでしょうか。


「人を減らす」のではなく「人が必要な仕事を減らす」

人件費を抑えるために、単純に従業員を減らせばいいわけではありません。

人を減らしすぎれば、接客や店舗管理の品質が低下する可能性があります。

重要なのは、

人がやらなくてもいい仕事を減らすこと

です。

例えば、

  • AIによる需要予測
  • 発注の自動化
  • セルフレジ
  • 商品補充の効率化
  • 清掃作業の効率化
  • 店舗管理のデジタル化
  • 遠隔接客
  • アバターなどを活用した接客支援

などです。

テクノロジーの目的は、単純な「省人化」ではありません。

人にしかできない仕事に、人を集中させること。

これが本当の意味での生産性向上だと思います。


店舗シミュレーションで見る人件費上昇

今回のSEMCでは、

  • 現行Cタイプ
  • 5年経過インセンティブ適用
  • 24時間営業
  • 1店舗
  • 地域C
  • 粗利率31.8%
  • 廃棄率2.5%
  • その他条件は同一

という条件で計算しています。

日販70万円・基本時給1,200円

月間売上は、

2,100万円

粗利益は、

667.8万円

最終利益は、

約74.4万円

利益率は、

約3.5%

となりました。


基本時給1,500円になると店舗利益は約半分

同じ日販70万円のまま、基本時給を1,500円にすると、

最終利益は、

約38.0万円

まで減少します。

利益率は、

約1.8%

です。

つまり、

約74.4万円 → 約38.0万円

と、店舗利益は約半分になります。

月間では約36.4万円。

年間では、

約437万円

の差です。

売上が変わっていなくても、人件費の上昇だけでこれだけ利益が変わります。


日販65万円では利益率1.4%まで低下する

さらに日販を65万円まで下げると、

基本時給1,200円では、

最終利益:約63.5万円
利益率:約3.3%

です。

しかし基本時給1,500円では、

最終利益:約26.9万円
利益率:約1.4%

まで低下します。

つまり、

日販が下がることと、人件費が上がることが重なると、店舗利益は急速に薄くなる

ということです。


人件費5%上昇を売上だけで吸収するのは難しい

今回のシミュレーションでは、

人件費が5%上昇すると、その増加分を売上で吸収するには日販約3万円の上積みが必要

という結果になりました。

しかし、過去3年間の日販が大きく変わっていないという状況を考えると、毎年の人件費上昇を売上だけで吸収するのは簡単ではありません。

すべての店舗が、

「人件費が上がったから日販を3万円増やす」

ということができるわけではないからです。

だからこそ、これからは売上だけではなく、店舗そのものの生産性を上げる必要があります。


「頑張れば利益が増える」から「頑張って利益を維持する」へ

これまでのコンビニ経営では、

売上を伸ばす
↓
粗利益が増える
↓
利益も増える

という考え方が比較的成り立ちやすかったと思います。

しかし、人件費が上昇すると、

売上が同じ
↓
人件費が増える
↓
利益が減る

ということが起こります。

その結果、

「頑張れば利益が増える」

から、

「頑張って利益を維持する」

という経営になってしまう可能性があります。

これはオーナーにとって大きな問題です。


頑張ってもオーナー所得が下がれば、現場の活力も失われる

店舗オーナーは、人材確保、シフト調整、教育、クレーム対応、店舗管理など、多くの仕事を担っています。

それにもかかわらず、人件費の上昇によって利益が減り続ければ、

「これだけ頑張っているのに、自分の所得は下がっていく」

という状況になりかねません。

これが長く続けば、オーナーのモチベーションだけでなく、店舗そのものの活力にも影響します。

だからこそ、

人の頑張りだけに依存しなくても利益を残せる店舗

を作ることが重要になります。


これまでのビジネスモデルが悪かったわけではない

これまでのコンビニのビジネスモデルが悪かったわけではありません。

人件費が現在ほど上昇していなかった時代には、合理的な仕組みだったと思います。

しかし現在は、

  • 最低賃金の上昇
  • 人手不足
  • 人材確保競争

など、前提条件が変わっています。

つまり、

ビジネスモデルが悪くなったというより、そのビジネスモデルを支えてきた前提条件が変わった

と考えるべきではないでしょうか。


必要なのは「利益配分」だけではない

人件費が上昇したからといって、すぐに本部と加盟店の利益配分だけを問題にするのも違うと思います。

まず必要なのは、

店舗そのものが少ない人員でも利益を生み出せる仕組みを作ること

です。

そのうえで、それでも店舗側に十分な利益が残らないのであれば、

本部と加盟店の利益配分をどうするのか

という議論が必要になります。

つまり、

店舗オペレーションの改革と利益配分の見直し。

この両方を考える必要があります。


本部が目指すべきなのは「店舗数」だけではない

店舗数を増やすことは、本部にとって重要な成長戦略です。

しかし、これからは、

「何店舗あるか」

だけではなく、

「1店舗あたり、どれだけ効率よく利益を生み出せるか」

が重要になります。

直営店を増やしても、1店舗あたりの利益が薄ければ、本部全体の利益を押し下げる可能性があります。

逆に、

直営でも利益を出せる店舗オペレーション

を確立できれば、その仕組みを加盟店にも展開できます。

そして、それが結果として本部の規模拡大にもつながります。


本当に強いコンビニチェーンとは

私は、これからの本部に必要なのは、単純に加盟店を増やすことだけではないと思っています。

人件費が上昇しても、自社が店舗コストを負担する直営店で利益を出せる。

そこまで生産性の高い店舗オペレーションを確立することです。

そして、その仕組みを加盟店にも提供する。

これができれば、

本部と加盟店の双方が利益を出せる可能性が高まります。

本当に強いコンビニチェーンとは、

「加盟店だから利益が出る」仕組みを持つ会社ではなく、

「自社で店舗を運営しても利益が出る」ほど強い店舗オペレーションを持つ会社

ではないでしょうか。


まとめ|これからは「店舗数」より「1店舗の生産性」

今回のSEMCシミュレーションでは、

日販70万円・基本時給1,200円
→ 最終利益 約74.4万円

だったものが、

基本時給1,500円
→ 最終利益 約38.0万円

まで減少しました。

利益率では、

約3.5% → 約1.8%

です。

一方、本部の営業総収入に対する営業利益率は約**24.8%**です。

ただし、本部と店舗では利益の定義や分母が異なるため、これらの数字を単純に優劣として比較するものではありません。

重要なのは、

本部と店舗では、人件費を含めた利益構造が違う

ということです。

本部はフランチャイズの規模を広げることで、既存の仕組みを大きな規模で活用できます。

一方、店舗は売上を増やすほど、人件費などのコストも増えやすい。

だからこそ、これから本当に必要なのは、単純な店舗数の拡大ではありません。

人件費が上昇しても、本部が直営店を運営して利益を出せるほど、生産性の高い店舗オペレーションを作ること。

そして、その仕組みを加盟店にも提供することです。

本部は規模を広げる。
店舗は利益を残す。
そして、その両方を支えるのが強い店舗オペレーション。

これからのコンビニ業界は、

「どれだけ店舗を増やせるか」から、
「1店舗でどれだけ利益を生み出せるか」へ。

売上の規模を競う時代から、

利益を残す精度を競う時代へ。

その鍵を握るのは、店舗オペレーションそのものの改革なのではないでしょうか。

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