こんにちは、コンビニ大家です。
前回は、2号店を店長に任せたことで、私は「人を任せる難しさ」を経験したことについてお話ししました。
人を任せれば、自分の仕事が減る。
最初は、そんなふうに考えていました。
しかし、実際には違いました。
人を任せることで、経営者の責任はむしろ大きくなったのです。
そして2号店の経営を続ける中で、もう一つ大きな問題が出てきました。
それは、
「誰を社員として採用するのか」
という問題です。
2号店を支える人が必要だった
2号店をオープンしてから、店長も私も休みらしい休みが取れない状態が続いていました。
1号店もあります。
2号店もあります。
店長の育成も必要です。
スタッフが辞めれば、採用もしなければなりません。
自分一人が頑張るだけでは、もう会社を支えきれませんでした。
このままでは店長自身が倒れてしまう。
私は本気でそう心配していました。
そこで、2号店を支えるために、もう一人社員を採用することを決めました。
ただし、
「人が足りないから、誰でもいいから採用する」
という考えではありませんでした。
第20話でもお話ししたように、人を任せるということには、経営者自身が責任を背負う必要があります。
社員の採用も同じです。
採用するということは、一人の人生を預かること
社員を一人採用すれば、毎月の給与を支払います。
仕事を教えます。
経験を積ませます。
将来のキャリアも考えます。
そして、会社の中で重要な仕事を任せることになります。
大企業であれば、合わなければ異動させるという選択肢もあります。
しかし、当時の私の会社はまだ2店舗です。
一人の社員が会社に与える影響は、とても大きい。
だから私は、
採用は単なる人手不足対策ではない
と考えていました。
経営者として、
「この人と一緒に会社をつくっていけるのか。」
まで考えなければいけない。
そう思っていました。
私の頭に浮かんだのは、前職の後輩だった
そんなとき、私の頭に浮かんだのが、前職の後輩でした。
彼は2号店の店長の後輩でもあり、私とは釣り仲間でもありました。
前職を退職した後も時々連絡を取っていたので、人柄はよく知っていました。
ただ、仕事が特別にできるタイプではありません。
要領が良いわけでもありません。
当時の店長からも、それほど高く評価されている人物ではありませんでした。
それでも私は、彼の別の部分を見ていました。
嘘をつかない。
不正をしない。
私は、この二つを非常に大切なことだと考えていました。
仕事の能力は、経験を積めば伸ばせます。
発注も覚えられる。
売場づくりも覚えられる。
数字の見方も教えられる。
しかし、
信用は、教えて身につけさせることが難しい。
だから私は、
能力よりも信用を選ぶことにしました。
「仕事ができる人」だけを選べばいいわけではない
もちろん、能力は大切です。
仕事を覚えるのが早い。
数字に強い。
判断が早い。
経験が豊富。
こうした人は、会社にとって大きな戦力になります。
しかし、能力が高ければ、それだけで安心して仕事を任せられるわけではありません。
嘘をつく。
約束を守らない。
ルールを軽視する。
自分の失敗を人のせいにする。
そんな人に重要な仕事を任せることには、大きなリスクがあります。
反対に、
仕事はまだ不慣れでも、
約束を守る。
嘘をつかない。
人を大切にする。
困ったときに逃げない。
責任から逃げない。
そんな人なら、時間をかけて育てていくことができます。
私はこの頃から、
「採用とは、今の能力を買うことではない。」
と考えるようになりました。
「これから一緒に会社をつくっていける人を選ぶこと」
なのだと思っています。
それでも、簡単には誘えなかった
ただ、彼を誘うことには大きな迷いがありました。
当時、彼は上場企業に勤めていました。
私の会社より規模も大きく、将来の安定性を考えれば、そこに残るという選択肢も十分にあります。
一方で、会社での評価は高くなく、労働環境の厳しい部署へ異動となっていました。
私は、彼が仕事で苦しんでいることも知っていました。
だからこそ、
「うちに来ないか。」
と簡単に声を掛けることはできませんでした。
もし転職して、会社がうまくいかなかったらどうするのか。
私の判断で、彼の生活を変えてしまうことになります。
そこで私は、最初に条件を明確にしました。
転職するなら、約束を明確にする
本人には、
「前職の給料は保証する。」
「残業は月20時間までにする。」
「休日は週休二日を基本とする。」
この三つを約束しました。
そして、もう一つ伝えました。
「将来は店長を目指してもらいたい。」
もちろん、最初から店長を任せるわけではありません。
まずは社員としてコンビニの仕事を覚える。
私と店長が責任を持って育てる。
経験を積んだ先で、将来的には店長として会社を支えてほしい。
その道筋を伝えました。
そして私は、
「家族やご両親にも相談して、本当に自分にとって良い選択なのか、よく考えてから返事をしてください。」
と伝えました。
すぐに返事を求めることはしませんでした。
私が一番恐れていたこと
私が一番恐れていたのは、
「自分の判断で、その人の人生を悪い方向へ変えてしまうこと」
でした。
彼には、今の会社に残るという選択肢もあります。
それを捨てて、私の会社へ来る。
もし会社の経営が悪化したらどうするのか。
もし私の判断が間違っていたらどうするのか。
社員を採用するということは、単純に人件費を増やすことではありません。
その人の生活がかかっています。
その家族の生活にも関係します。
だから私は、
「社員を一人採用することは、一人の人生を預かることでもある。」
と考えていました。
人件費を考えても、簡単な決断ではなかった
もちろん、会社にとっても大きな負担です。
社員を一人増やせば、毎月の人件費は増えます。
コンビニは利益率が決して高い業種ではありません。
当時の会社の利益状況を考えれば、
「本当に今、社員を一人増やして大丈夫なのか。」
という不安もありました。
それでも私は、
人件費を惜しんで、人の問題を先送りする方が危険だ
と考えました。
このまま店長が限界まで働けば、倒れてしまうかもしれない。
店長が倒れれば、2号店だけではなく会社全体に影響します。
利益は後から取り戻せる可能性があります。
しかし、
一度壊れてしまった人や組織を立て直すのは簡単ではありません。
だから私は、利益だけを見るのではなく、
会社を長く続けるために必要な人材への投資
として、この採用を決断しました。
店長にも「責任」を伝えた
私は、この採用について店長にも話しました。
そして、
「彼が来てくれるなら、その人の人生にも責任を持つ覚悟が必要だ。」
と伝えました。
しかし、最初に返ってきた言葉は、
「そこまでの責任は持てません。」
でした。
私は、その言葉を聞いて、一度は採用を見送ることにしました。
「その覚悟がないのであれば、今回は採用しない。」
そう伝えました。
店長はしばらく考えていました。
そして最後に、
「お願いします。採用してください。」
と頭を下げました。
私はその姿を見て、もう一度だけ店長を信じることにしました。
彼が入社して、店長を支えるようになった
こうして、彼は私の会社に入社しました。
まずは社員として店舗の仕事を覚えてもらいました。
発注。
品出し。
売場づくり。
接客。
スタッフとのコミュニケーション。
一つひとつ経験を積んでいきました。
そして何より大きかったのは、
それまで限界まで働いていた店長を支えられるようになったことです。
店長も少しずつ休みを取れるようになりました。
会社としても、ようやく最悪の状態から抜け出すことができました。
私は、
「この採用は間違っていなかった。」
そう思いました。
しかし、経営というのは、そう簡単には終わりません。
人が増えれば、問題がなくなるわけではありません。
むしろ、
人が増えたことで、新しい問題が始まりました。
店長と新しい社員。
二人の間に、少しずつすれ違いが生まれていったのです。
「信用」で選んだ人だからこそ、向き合う
私は彼を採用するとき、
「この人なら信用できる。」
と思っていました。
だからこそ、簡単に辞めてもらうという考えはありませんでした。
採用した以上、育てる責任があります。
会社に来てもらった以上、活躍できる環境をつくる責任もあります。
そして、店長にも、
「この人を採用すると決めた以上、一緒に育てていく責任がある。」
と考えていました。
しかし、現実には二人の価値観や仕事への向き合い方が少しずつぶつかっていきます。
私はそこで、改めて気づくことになります。
人を信用して採用することと、人間関係がうまくいくことは別の問題だ。
信用して採用したからといって、すべてが順調に進むわけではありません。
人と人が一緒に働けば、必ず考え方の違いが出てきます。
その違いをどう調整するのか。
管理者がどう向き合うのか。
そして、経営者はどこまで介入するのか。
次に私が向き合うことになったのは、
「人と人との関係」
という、数字では解決できない問題でした。
まとめ
2号店の人手不足をきっかけに、私は一人の社員を採用しました。
そのとき、私が重視したのは能力だけではありません。
信用でした。
能力は、経験を積めば伸ばせます。
知識も教えることができます。
しかし、信用を築くには時間がかかります。
だから私は、
「この人なら信用できる。」
という気持ちを大切にしました。
そして、採用する以上は、
その人の人生にも責任を持つ。
それが経営者としての覚悟だと思っています。
ただ、採用して終わりではありません。
社員が入社したことで、店長との新しい問題が始まりました。
次回は、店長と社員の間で起きた「パワハラ騒動」をきっかけに、私が「人と人との信頼関係」について考えさせられた出来事をお話しします。
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