生産性を上げ続けた先に何がある?|より豊かに、より自由にを求め続ける社会を考える【第143話】

生産性を上げ続けた先に何がある?|より豊かに、より自由にを求め続ける社会を考える【第143話】 コンビニ経営

私は、これからも生産性を上げる必要があると思っています。

コンビニ経営では、人手不足や人件費の上昇が続いています。AIや省人化、業務効率化を進めなければ、これからの経営はますます難しくなるでしょう。

社会全体も、

より早く、より安く、より効率的に。

という方向へ進み続けると思います。

この流れは、簡単には止まりません。

だからこそ私は、

生産性を上げることと、幸福になることは同じではない。

と思っています。

効率化によって利益や時間が増えても、その先でまた「もっと」を求め続ければ、いつまでも満足できないかもしれません。

だからこそ、これからの時代は、

「自分にとって何が幸福なのか」

と向き合うことが、ますます重要になるのではないでしょうか。


社会は「より効率的な行動」を評価する

私たちの社会は、

より早く。
より安く。
より多く。
より正確に。
より効率的に。

行動できる人や企業を評価する仕組みになっています。

これは悪いことではありません。

生産性を高めてきたからこそ、私たちは豊かで便利な生活を手に入れることができました。

コンビニ経営も同じです。

人手不足。

人件費の上昇。

物価高。

競争の激化。

こうした環境の中で、昔と同じやり方を続けていては利益を残すことが難しくなります。

だから、

  • AIを使う
  • 業務を効率化する
  • 発注を改善する
  • 作業を標準化する
  • 省人化する
  • 無駄な仕事を減らす

こうした取り組みは、これからますます重要になります。

生産性を上げなければ、生き残れない。

これは現実です。


この流れは、これからも止まらない

AIがさらに進化すれば、生産性向上はもっと加速するでしょう。

文章を書く。

情報を整理する。

データを分析する。

問い合わせに対応する。

店舗の状況を分析する。

これまで人間が時間をかけていた仕事を、短時間で処理できるようになります。

私は、これを否定するつもりはありません。

むしろ積極的に活用したいと思っています。

問題は、その先です。


効率化の行きつく先は「やることがない」?

例えば、1時間かかっていた仕事が30分で終わるようになったとします。

30分の余裕が生まれます。

さらに効率化して、30分の仕事が15分で終わる。

そしてAIを使えば、ほとんど人間がやらなくてもよくなる。

これを突き詰めていけば、

人間がやらなければならない仕事は、少しずつ減っていきます。

つまり、

効率化の行きつく先は、「やることがない」ことなのかもしれません。

もちろん、これは悪いことではありません。

むしろ人類は、長い時間をかけて「人間がやらなくてもいい仕事」を機械に置き換えてきました。

洗濯機。

掃除機。

自動車。

コンピューター。

スマートフォン。

そして今はAIです。

人間がやる仕事を減らすことは、文明の進歩そのものでもあります。


「やることがない」は、本当に不幸なのか?

もし将来、AIやロボットによって、

人間が働かなくても生活に必要なものを生み出せる社会

になったらどうでしょうか。

朝から晩まで働く必要がない。

面倒な事務作業もない。

家事の多くも機械がやってくれる。

仕事の多くをAIがやってくれる。

最初は、

「なんて素晴らしい世界なんだ」

と思うかもしれません。

でも、その生活が10年、20年続いたらどうでしょう。

そこで初めて、

「では、自分は何をして生きるのか?」

という問題が出てくるのではないでしょうか。


仕事は「お金を稼ぐ」だけではない

仕事には、収入以外にも役割があります。

人と関わる。

社会の中で役割を持つ。

誰かに必要とされる。

目標を持つ。

成長を感じる。

こうしたものも、仕事から得られます。

だから、

「仕事がなくなれば、すべての人が幸せになる」

とは限りません。

むしろ、

仕事がなくなった後に何をするのか

を考える必要があるのかもしれません。


「ネズミの楽園」Universe 25

ここで、少し話を変えます。

「豊かさや快適さが増えれば、それだけ幸福になるのか?」

この問いを考える材料として、非常に興味深い実験があります。

1968年、アメリカ国立精神衛生研究所の研究者ジョン・B・カルフーンが行った、マウスの社会行動に関する実験です。

後に、

「Universe 25(ユニバース25)」

として知られるようになりました。

ここで一つ、名前について誤解されやすい点があります。

「25」という数字は、25回まったく同じ実験をして、25回同じ結果が出たという意味ではありません。

カルフーンは、それ以前からラットやマウスの人口密度と社会行動について研究を重ねており、Universe 25はその研究の一連の実験の中で25番目にあたるものです。

つまり、

「25回同じ結果が出た」という話ではありません。

この点は、実験を考えるうえで重要です。


8匹から始まった「楽園」

Universe 25では、マウスにとって非常に恵まれた環境が用意されました。

  • 十分な食料
  • 十分な水
  • 外敵のいない環境
  • 天候の影響を受けない空間
  • 巣を作る場所

などです。

1968年7月、そこに4組、8匹のマウスが入れられました。

最初は順調でした。

マウスは環境に適応し、繁殖を始めます。

個体数は急速に増加し、315日目には620匹に達しました。

その後も増え続け、最終的には約2,200匹まで増加します。

食料がないわけではありません。

水もあります。

外敵もいません。

寒さもありません。

まさに、

「ネズミにとっての楽園」

のような環境でした。

ところが、個体数が増えるにつれて、少しずつ異変が起き始めます。


個体数が増えると「社会」が変わった

マウスには、

縄張り。

順位。

繁殖。

子育て。

他の個体との距離。

といった社会的な行動があります。

ところが個体数が増えるにつれて、こうした関係が崩れていきました。

攻撃行動が増える。

異常な毛づくろいが見られる。

繁殖行動が減る。

子育てが正常に行われなくなる。

他の個体との関わりを避ける個体も現れる。

カルフーンは、こうした社会行動の崩れを**「behavioral sink(行動の崩壊)」**と表現しました。


「みんなが暴れた」わけではなかった

ここはUniverse 25で特に興味深いところです。

社会が崩壊すると、

「マウス同士が激しく争うようになった」

と思うかもしれません。

実際に攻撃性が高まった個体もいました。

しかし、それだけではありません。

他の個体との関わりを避け、

食べる。

眠る。

毛づくろいをする。

そうした行動に偏る個体も現れました。

カルフーンは、こうした個体を**「Beautiful Ones(美しいものたち)」**と呼びました。

外見上は傷も少なく、争いにも参加しません。

しかし、

繁殖や子育てなど、社会を維持するための行動をしなくなっていた

とされています。


そして出生が減っていった

社会的な関係が崩れるにつれて、

繁殖行動が減少します。

子育ても正常に行われなくなります。

幼い個体が適切な社会行動を学ぶ機会も失われていきます。

その結果、幼い個体の生存率も低下しました。

やがて、

新しい出生そのものが減少していきます。

そして人口は、増加から減少へと転じました。


約2,200匹から27匹へ

ピーク時には約2,200匹まで増えたマウス。

しかし、その後は減少していきます。

カルフーンの1973年の論文では、実験開始から約1,471日後には約100匹。

そして1,588日目には27匹まで減少していました。

しかも、その27匹は23匹のメスと4匹のオスで、最も若い個体でも987日齢を超えていたと記録されています。

つまり、

食料がなくなったわけではありません。

外敵に襲われたわけでもありません。

それでも、

社会的な行動が崩れ、繁殖が止まり、個体数が減少していった。

これがUniverse 25の非常に印象的なところです。


ただし、人間社会と同じではない

ここは重要です。

マウスで起きたことを、そのまま人間社会に当てはめることはできません。

人間には文化があります。

家族があります。

法律があります。

仕事があります。

趣味があります。

そして、自分たちで社会のルールや環境を変えることもできます。

Universe 25は、人間社会の未来を予言した実験ではありません。

それでも、

「物質的な豊かさだけで、幸福を説明できるのか?」

という問いを考える材料にはなると思います。


現代社会も「もっと」を求め続けている

現代社会は、昔と比べて間違いなく豊かになりました。

でも、私たちはそこで満足しているわけではありません。

もっと稼ぐ。

もっと便利にする。

もっと効率化する。

もっと自由になる。

もっと快適に暮らす。

一つ手に入れれば、また次の「もっと」が現れます。

そして社会は、その「もっと」を評価します。

売上が増えた。

利益が増えた。

仕事が早くなった。

生産性が上がった。

数字として測りやすいからです。


でも、幸福は数字では測れない

売上は数字で測れます。

利益も測れます。

労働時間も測れます。

生産性も測れます。

でも、

「今日は幸せだった」

という感覚は、数字では測れません。

年収1,000万円の人が、必ず年収600万円の人より幸せとは限りません。

週7日働いて大きな利益を出している人が、週5日働いている人より幸せとも限りません。

逆も同じです。

だから、

社会が評価しやすいものと、自分が幸福だと感じるものは分けて考える必要があります。


自分軸の幸福と向き合う

私は、これからの時代に、

「自分にとっての幸福とは何なのか」

を考えることが、ますます重要になると思います。

どれだけ稼げば満足なのか。

どれだけ資産があれば安心なのか。

週に何日働きたいのか。

家族との時間をどれくらい持ちたいのか。

仕事にどれくらい情熱を注ぎたいのか。

趣味にどれくらい時間を使いたいのか。

そして、

仕事が減ったとき、自分は何をして過ごしたいのか。

この答えは、人によって違います。

だから、

他人の幸福を、そのまま自分の幸福にする必要はありません。

SNSで誰かが成功している。

同世代より収入が高い。

資産が多い。

大きな会社を経営している。

そんな情報を見て、

「自分ももっと頑張らなければ」

と思うことがあります。

でも、

その人が幸せになる方法と、自分が幸せになる方法は違うかもしれません。


コンビニ経営でも「もっと」には終わりがない

私自身のコンビニ経営も同じです。

売上をもっと増やしたい。

利益ももっと増やしたい。

生産性ももっと上げたい。

これは経営者として当然だと思います。

でも、

「利益を最大化することだけ」が目的になってしまったら、終わりがありません。

私の運営している2店舗は、全国平均を下回っています。

それでも、

週2日の休みがあります。

夏季・冬季休暇があります。

有給休暇もあります。

社員の給料も、決して特別高いわけではありませんが、一般的な小売店の社員と同等程度です。

私自身の給与も、

高くはない。でも、低くもない。

というくらいです。

もっと利益が増えれば嬉しい。

でも、

そのために今ある時間や自由をすべて犠牲にする必要はない。

私はそう考えています。


生産性は上げる。でも、人生まで効率化しない

私は、生産性を上げることには賛成です。

これからのコンビニ経営には必要不可欠です。

AIも使います。

業務も効率化します。

無駄も減らします。

スタッフの負担も減らします。

でも、

人生まで効率化する必要はない。

と思っています。

何の役にも立たない時間があってもいい。

効率の悪い趣味があってもいい。

ただ散歩する。

漫画を読む。

家族と話す。

旅行に行く。

何もしない。

社会の生産性という物差しでは「無駄」に見える時間でも、

自分にとって大切なら、それは無駄ではありません。

そして、もし将来、本当に「やること」が大きく減ったとしても、

それは不幸ではなく、自分の時間が増えたということかもしれません。

問題は、その時間をどう使うかです。


「もっと」のゴールを自分で決める

社会の流れを止める必要はありません。

生産性を上げればいい。

AIを使えばいい。

便利になればいい。

豊かになればいい。

自由になればいい。

ただ、その一方で、

「自分にとって、どこまであれば十分なのか」

を決めておく。

社会はこれからも、

「もっと」

を求め続けるでしょう。

だからこそ、自分自身は、

「ここまであれば十分」

という基準を持っておく。

それは、社会に逆らうことではありません。

社会の進歩を受け入れながら、

自分の人生の目的まで、社会に決めてもらわない

ということです。


まとめ

私たちはこれからも、

より快適に。
より豊かに。
より自由に。
より効率的に。

進んでいくでしょう。

AIによって、そのスピードはさらに上がるかもしれません。

コンビニ経営でも、生産性を上げなければ生き残れません。

だから、

生産性を上げることは必要です。

でも、

生産性を上げることと、幸福になることは同じではありません。

そして、効率化を突き詰めれば、

人間がやらなくてもいいことは、どんどん増えていく。

もしかすると、効率化の行きつく先は、

「やることがない」社会なのかもしれません。

そのときに重要になるのは、

「何を効率化するか」ではなく、

「増えた時間を何に使いたいのか」

ではないでしょうか。

Universe 25は、人間社会の未来を予言した実験ではありません。

それでも、

「豊かさが増えれば、それだけ幸福も増えるのか?」

という問いを考えるきっかけにはなります。

社会はこれからも、より効率的な行動を評価するでしょう。

だからこそ私たちは、

自分軸の幸福と向き合う必要がある。

どれだけ稼ぐか。

どれだけ働くか。

どれだけ効率化するか。

それだけではなく、

「自分は、どう生きたいのか」

を考える。

生産性は上げる。

効率化もする。

豊かさも求める。

でも、自分の幸福まで社会に決めてもらわない。

効率化の先に「やることがない」未来が来たとしても、それを恐れるのではなく、

「自分は、その自由な時間で何をしたいのか」

を今から考えておく。

私は、それこそが、これからの時代に必要なことなのではないかと思っています。

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