- 売上が年2%しか伸びない一方で、人件費が年5%上昇する時代に、Aタイプ・現行Cタイプ・新制度のどれが本当に有利なのか。
- 前半|なぜインフレ時代にAタイプが有利なのか
- 1.インフレ=利益が増える、ではない
- 2.平均日販は65万円から71.8万円へ
- 3.GPも増加する
- 4.問題は人件費
- 5.「売上は増えているのに利益が減る」という構造
- 6.今回の店舗モデル
- 7.オーナー夫婦の労働時間も設定
- 8.Aタイプだけに有利な条件ではない
- 9.インフレ時代に重要になる「チャージ構造」
- 後半|SEMCで5年間を実際にシミュレーション
- 10.現在の利益を比較
- 11.5年間の推移
- 12.5年後の利益を比較
- 13.平均日販が増えているのに、なぜ利益が減るのか
- 14.それでもAタイプの減少幅が小さい
- 15.Aタイプが有利なのは「利益が大きいから」だけではない
- 16.ただし、Aタイプにも大きな負担がある
- 17.今回のシミュレーションで分かったこと
- まとめ|インフレ時代は「平均日販」より「残る利益」
売上が年2%しか伸びない一方で、人件費が年5%上昇する時代に、Aタイプ・現行Cタイプ・新制度のどれが本当に有利なのか。
インフレ時代のコンビニ経営では、売上が増えても利益が増えるとは限りません。
特に問題となるのが人件費です。
今回は、セブン-イレブンのAタイプ・現行Cタイプ・新制度について、平均日販が年2%、人件費が年5%上昇する条件で5年間の利益をシミュレーションしました。
結論から言えば、今回の条件で5年間シミュレーションすると、Aタイプが最も利益を維持しやすい結果になりました。
今回のシミュレーションでは、Aタイプだけに有利な条件を設定していません。
Aタイプと現行Cタイプは、どちらも加盟15年以上のインセンティブを適用。
さらに、
- 24時間営業
- 1号店
- 地域C
- 同じ平均日販
- 同じ粗利率
- 同じ店舗労働時間
- 同じ賃金上昇率
という条件を揃えています。
そして、現在の平均日販65万円、時給1,200円をスタート地点として、
- 平均日販・GP:年+2%
- 賃金:年+5%
と仮定しました。
その結果、5年後には、
平均日販:65万円 → 約71.8万円
時給:1,200円 → 約1,532円
となります。
つまり、
平均日販は+10.4%しか増えない一方、時給は+27.6%上昇する。
この環境で、3つの契約が5年後にどれだけ利益を残せるのかをSEMCで比較しました。
前半|なぜインフレ時代にAタイプが有利なのか
1.インフレ=利益が増える、ではない
物価が上昇すると、コンビニの商品価格も上昇します。
その結果、平均日販も上昇する可能性があります。
一見すると、
物価上昇
↓
商品価格上昇
↓
平均日販上昇
↓
利益増加
と考えてしまいがちです。
しかし、コンビニ経営にはもう一つ大きな問題があります。
人件費の上昇です。
今回のシミュレーションでは、
平均日販・GP:年+2%
に対して、
賃金:年+5%
としました。
この差が5年間続くと、利益に大きな影響を与えます。
2.平均日販は65万円から71.8万円へ
今回、売上の変化は平均日販で見ていきます。
現在の平均日販を65万円とし、年2%ずつ上昇すると、
| 平均日販 | |
|---|---|
| 現在 | 65.0万円 |
| 1年後 | 66.3万円 |
| 2年後 | 67.6万円 |
| 3年後 | 69.0万円 |
| 4年後 | 70.4万円 |
| 5年後 | 71.8万円 |
となります。
5年間で、
65.0万円 → 71.8万円
です。
上昇率は、
+10.4%
です。
つまり、今回のシミュレーションでは、店舗の売上は決して減少していません。
むしろ、平均日販は着実に増えています。
3.GPも増加する
現在の粗利率を31%とすると、現在の月間GPは、
604.5万円
です。
平均日販が年2%ずつ上昇すると、GPも同じ割合で増加すると仮定します。
| 月間GP | |
|---|---|
| 現在 | 604.5万円 |
| 1年後 | 616.6万円 |
| 2年後 | 628.9万円 |
| 3年後 | 641.5万円 |
| 4年後 | 654.3万円 |
| 5年後 | 667.4万円 |
5年間で、
604.5万円 → 667.4万円
となります。
つまりGPも、
+10.4%
増加します。
ここまでは、一見すると非常に良い状況です。
平均日販も増える。
GPも増える。
では、利益も増えるのでしょうか。
4.問題は人件費
ここで人件費を見てみます。
今回のスタート時給は、
1,200円
です。
これが毎年5%上昇すると、
| 時給 | |
|---|---|
| 現在 | 1,200円 |
| 1年後 | 1,260円 |
| 2年後 | 1,323円 |
| 3年後 | 1,389円 |
| 4年後 | 1,459円 |
| 5年後 | 1,532円 |
となります。
つまり、
1,200円 → 1,532円
です。
5年間で、
+27.6%
の上昇です。
平均日販の上昇率が**+10.4%なのに対して、時給は+27.6%**。
ここに大きな差があります。
5.「売上は増えているのに利益が減る」という構造
今回のシミュレーションを簡単に表すと、
平均日販
65万円
↓
71.8万円
+10.4%
↓
GP
604.5万円
↓
667.4万円
+10.4%
↓
一方で、
時給
1,200円
↓
1,532円
+27.6%
となります。
つまり、
売上も増えている。
GPも増えている。
それでも人件費の伸びがそれ以上に速い。
このため、最終利益は減少していきます。
6.今回の店舗モデル
今回のシミュレーションは、これまで作ってきたSEMCの店舗モデルをベースにしています。
基本条件
- 平均日販:65万円
- 営業日数:30日
- 月間商品売上高:1,950万円
- 粗利率:31%
- 月間GP:604.5万円
- 24時間営業:あり
- 店舗数:1号店
- 地域:C
- 加盟年数:15年以上
- 月間店舗労働時間:1,174時間
- スタート時給:1,200円
- 賃金上昇率:年5%
- 平均日販・GP上昇率:年2%
7.オーナー夫婦の労働時間も設定
今回のシミュレーションでは、オーナー夫婦の労働時間も設定しています。
オーナー
月130時間
妻
月108時間
いずれも、
深夜勤務なし
です。
オーナー夫婦の合計労働時間は、
130時間+108時間=238時間/月
となります。
店舗全体の労働時間が1,174時間なので、
1,174時間-238時間=936時間
がその他の従業員の労働時間となります。
つまり、オーナー夫婦が深夜勤務をすることを前提にしたモデルではありません。
8.Aタイプだけに有利な条件ではない
今回の比較で重要なのはここです。
Aタイプだけに15年以上のインセンティブを適用しているわけではありません。
Aタイプ
加盟15年以上のインセンティブ適用
現行Cタイプ
加盟15年以上のインセンティブ適用
としています。
さらに、
- 24時間営業
- 1号店
- 地域C
- 同じ平均日販
- 同じGP
- 同じ労働時間
- 同じ賃金上昇率
という条件を揃えています。
つまり、
店舗条件をできるだけ同じにしたうえで、契約タイプの違いによる利益の変化を比較しています。
9.インフレ時代に重要になる「チャージ構造」
では、なぜ契約タイプによって利益の減少幅が変わるのでしょうか。
大きな要因の一つが、
チャージ構造の違い
です。
粗利益が増えれば、そのすべてが加盟店側に残るわけではありません。
本部へのチャージがあります。
そのため、
「GPが増えたとき、その増加分をどれだけ加盟店側に残せるのか」
が重要になります。
特に、インフレによってGPが増えていく環境では、この違いが長期的な利益に影響します。
後半|SEMCで5年間を実際にシミュレーション
10.現在の利益を比較
時給1,200円をスタート地点とすると、現在の月間最終利益は、
| 現在の利益 | |
|---|---|
| Aタイプ | 194.6万円 |
| 現行Cタイプ | 88.7万円 |
| 新制度 | 81.7万円 |
となります。
ここから、
平均日販・GP:年+2%
賃金:年+5%
として5年間をシミュレーションします。
11.5年間の推移
| 現在 | 1年後 | 2年後 | 3年後 | 4年後 | 5年後 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 平均日販 | 65.0万 | 66.3万 | 67.6万 | 69.0万 | 70.4万 | 71.8万 |
| 月間GP | 604.5万 | 616.6万 | 628.9万 | 641.5万 | 654.3万 | 667.4万 |
| 時給 | 1,200円 | 1,260円 | 1,323円 | 1,389円 | 1,459円 | 1,532円 |
| Aタイプ利益 | 194.6万 | 193.4万 | 191.9万 | 190.3万 | 188.3万 | 186.1万 |
| 現行Cタイプ利益 | 88.7万 | 84.7万 | 80.3万 | 75.7万 | 70.8万 | 65.5万 |
| 新制度利益 | 81.7万 | 76.2万 | 70.4万 | 64.3万 | 57.8万 | 50.9万 |
この表を見ると、今回のポイントがかなり分かりやすくなります。
平均日販は増えています。
GPも増えています。
しかし、
時給はそれ以上のスピードで上昇しています。
そして利益は減少します。
12.5年後の利益を比較
5年間の変化をまとめると、こうなります。
| Aタイプ | 現行Cタイプ | 新制度 | |
|---|---|---|---|
| 現在の利益 | 194.6万円 | 88.7万円 | 81.7万円 |
| 5年後の利益 | 186.1万円 | 65.5万円 | 50.9万円 |
| 利益減少額 | ▲8.5万円 | ▲23.2万円 | ▲30.8万円 |
| 利益減少率 | ▲4.4% | ▲26.2% | ▲37.7% |
今回の条件では、Aタイプの利益減少率が最も小さくなりました。
13.平均日販が増えているのに、なぜ利益が減るのか
ここが今回の記事で最も重要な部分です。
5年後には、
平均日販
65.0万円
↓
71.8万円
まで増えています。
GPも、
604.5万円
↓
667.4万円
まで増えています。
普通に考えれば、利益も増えそうです。
しかし、
時給
1,200円
↓
1,532円
まで上昇します。
つまり、
売上・GPの伸びより、人件費の伸びの方が速い。
このため、売上が増えているにもかかわらず、利益が減少する結果になりました。
14.それでもAタイプの減少幅が小さい
3つの契約を比較すると、
Aタイプ
194.6万円
↓
186.1万円
▲4.4%
現行Cタイプ
88.7万円
↓
65.5万円
▲26.2%
新制度
81.7万円
↓
50.9万円
▲37.7%
となります。
つまり今回の条件では、
Aタイプの利益の耐久力が最も高い
という結果になりました。
15.Aタイプが有利なのは「利益が大きいから」だけではない
今回の結果で重要なのは、Aタイプの現在の利益が大きいことだけではありません。
本当に重要なのは、
人件費が上昇したときに、利益がどれだけ残るのか
という点です。
5年間で時給は、
+27.6%
上昇します。
それでもAタイプの利益減少率は、
▲4.4%
にとどまりました。
一方、
現行Cタイプは**▲26.2%**、
新制度は**▲37.7%**です。
今回の条件では、Aタイプの方が人件費上昇に対する利益の耐久力が高いという結果になりました。
5年間の最終利益推移

平均日販は65万円から71.8万円へ増加する一方、時給は1,200円から1,532円へ上昇します。それでもAタイプは5年後の利益減少率が▲4.4%にとどまり、現行Cタイプ▲26.2%、新制度▲37.7%と大きな差が生じました。
16.ただし、Aタイプにも大きな負担がある
ここは冷静に考える必要があります。
今回の結果だけを見て、
「Aタイプなら必ず儲かる」
ということではありません。
Aタイプには、
- 土地取得費
- 建物取得費
- 借入金
- 金利
- 固定資産税
- 修繕費
- 設備更新費
などの負担があります。
これらを含めれば、実際の投資収益は変わる可能性があります。
したがって、契約タイプを判断するときは、
チャージだけを見るのではなく、土地・建物を含めた総合的な収益性
を見る必要があります。
17.今回のシミュレーションで分かったこと
今回の条件では、
平均日販
65万円 → 71.8万円
+10.4%
GP
604.5万円 → 667.4万円
+10.4%
となりました。
一方、
時給
1,200円 → 1,532円
+27.6%
です。
つまり、
売上も増える。
GPも増える。
それでも、人件費の伸びがそれを上回れば利益は減る。
ということです。
そして、その利益の減少幅は契約タイプによって変わります。
まとめ|インフレ時代は「平均日販」より「残る利益」
インフレになると、
「商品価格が上がるから平均日販も上がる」
と考えがちです。
今回のシミュレーションでも、
平均日販は65万円から71.8万円へ増加
しました。
GPも、
604.5万円から667.4万円へ増加
しています。
しかし、その一方で、
時給は1,200円から1,532円へ上昇
しました。
平均日販の上昇率が**+10.4%なのに対して、時給は+27.6%**です。
その結果、5年後の利益は、
| Aタイプ | 現行Cタイプ | 新制度 | |
|---|---|---|---|
| 現在の利益 | 194.6万円 | 88.7万円 | 81.7万円 |
| 5年後の利益 | 186.1万円 | 65.5万円 | 50.9万円 |
| 利益減少額 | ▲8.5万円 | ▲23.2万円 | ▲30.8万円 |
| 利益減少率 | ▲4.4% | ▲26.2% | ▲37.7% |
という結果になりました。
今回の条件では、Aタイプが最も利益を維持しやすい結果です。
ただし、これは、
「Aタイプが絶対に有利」
という意味ではありません。
あくまで、
平均日販・GPが年2%増加し、賃金が年5%上昇する
という一つのシナリオによる比較です。
それでも、このシミュレーションから見えてくることがあります。
人件費の上昇が平均日販の伸びを上回る時代ほど、契約タイプによる「利益の残し方」の違いが重要になる。
Aタイプがインフレ時代に有利になりやすい理由は、単純に「チャージ率が低いから」だけではありません。
増えたGPをどれだけ加盟店側に残せる構造なのか。
これを5年、10年という長期で考えることが、これからのコンビニ経営ではますます重要になってくるのではないでしょうか。
平均日販を追うだけでは、利益は残らない。
インフレ時代こそ、「最終的にいくら残るのか」を見る必要がある。
これが今回のシミュレーションから見えてきた、第134話の結論です。
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