はじめに
一棟目を購入して一年が過ぎ、不動産経営は順調に進んでいました。
毎月予定どおり家賃が振り込まれ、大きなトラブルもありません。資産形成という意味では、想定していた通りのスタートだったと思います。
しかし、私の中には一つの物足りなさがありました。
それは、「不動産経営をしている」という実感があまりなかったことです。
一棟目は新築のサブリース物件だったため、入居募集や管理、設備トラブルへの対応など、多くの業務を管理会社が担ってくれていました。本業がコンビニ経営だった私にとって、この仕組みは非常に助かるものでした。
一方で、不動産経営者として経験を積めているのかと考えると、答えは「まだ足りない」でした。
私は家賃収入を得ることだけを目的に不動産投資を始めたわけではありません。
将来的に不動産事業を成長させていくためには、自分自身が経営者として経験を積み、判断できる力を身につける必要があります。
そのためには、一棟目だけでは経験できないことを学ばなければならない。
そう考えた私は、二棟目の購入を真剣に考え始めました。
一棟目では望んでいた経験値が得られなかった
一棟目を購入したことで、不動産投資に対する漠然とした不安はなくなりました。
家賃収入が毎月入る仕組みや、融資を受けて事業を進める感覚など、多くのことを学ぶことができました。
しかし、不動産事業を本気で続けていくのであれば、それだけでは足りません。
例えば、
- 空室が出たときにどう対応するのか。
- 家賃設定は適正なのか。
- 修繕をいつ、どの程度行うべきなのか。
- 管理会社とどのように連携するのか。
- 銀行とどのような関係を築いていくのか。
こうした判断は、不動産経営では避けて通ることができません。
もちろん、一棟目のサブリース物件が悪かったという意味ではありません。
むしろ、初心者だった私にとっては、安心して不動産経営を始められる最適な選択だったと思っています。
ただ、その一方で、自分自身が経営者として成長するためには、自ら判断し、失敗や成功を経験する環境も必要だと感じるようになりました。
家賃収入を増やしたいという気持ちもありました。
しかし、それ以上に「経験値を増やしたい」という思いが、二棟目を購入する最大の理由だったのです。
なぜ地元を選んだのか
二棟目を探すにあたり、私は最初から地元で購入すると決めていました。
理由は、自分の強みを生かしたかったからです。
不動産投資の本や雑誌を見ると、東京や大阪など都心部の物件が紹介されていることが少なくありません。
人口が多く、資産価値も高く、魅力的な市場です。
実際に、多くの実績を上げている投資家もいます。
しかし、私は都心で勝負しようとは思いませんでした。
一番の理由は、土地勘がなかったからです。
駅から徒歩何分という数字だけでは、その地域の本当の住みやすさは分かりません。
昼と夜で街の雰囲気が変わる場所もあります。
周辺環境や生活の利便性、将来的な街の変化などは、実際にその地域で生活してきた人だからこそ分かることがあります。
その点、地元であれば、
どこが人気のあるエリアなのか。
どの学校区が人気なのか。
買い物の利便性はどうか。
交通事情はどうか。
今後どのような開発が予定されているのか。
こうした情報を、生活者としての感覚も含めて理解することができます。
私は、その「土地勘」こそが、自分にしかない強みになると考えました。
さらに、都心には洗練された投資家や豊富な資金力を持つ投資家が数多く参入しています。
情報量や資金力で勝負しても、私が優位に立てるとは思いませんでした。
それなら、自分が一番よく知っている市場で勝負した方が、長期的には成功する可能性が高いと考えたのです。
私は、不動産投資でも、自分の弱みで戦うより、自分の強みを生かせる場所で勝負することが大切だと思っています。
信頼関係こそ最大の財産
地元を選んだ理由は、土地勘だけではありません。
私が最も重視したのは、銀行、不動産会社、管理会社との信頼関係です。
一棟目を購入する前から、私は不動産投資について数多くの書籍を読み、インターネットでも情報を集めながら勉強を続けてきました。
しかし、実際に不動産事業へ足を踏み入れると、一つのことに気付きました。
本に書いてある通りの物件など、ほとんど存在しない。
ということです。
本には「利回り○%以上」「駅から徒歩○分以内」「空室率○%以下」など、多くの基準が紹介されています。
もちろん、それらは参考になります。
しかし、現実の物件は、その条件にぴったり当てはまるものばかりではありません。
どこかに長所があれば、どこかに短所があります。
最終的には、その地域を理解し、自分で判断しなければならないのです。
さらに、不動産事業は、外から見えない部分が非常に多い世界でもあります。
物件価格の相場。
適正な家賃。
修繕費の相場。
管理方法。
リフォーム費用。
これらは地域によっても違いますし、依頼する会社によっても大きく変わります。
同じ相談をしても、人によって答えが異なることも珍しくありません。
情報があふれている時代ですが、本当に必要なのは、自分が投資する地域で通用する正確な情報です。
なぜ信頼関係を重視するのか
私は、不動産経営を続ける中で一つの結論にたどり着きました。
プロには、どう頑張っても勝てない。
銀行には融資の専門知識があります。
不動産会社には地域の売買相場や市場動向があります。
管理会社は入居募集や管理のノウハウを持っています。
修繕業者には建物を維持する技術があります。
私が何十冊も本を読んだとしても、それぞれの専門家が何年、何十年とかけて積み重ねてきた経験には及びません。
だから私は、「プロに勝とう」と考えるのをやめました。
その代わりに目指したのは、プロから「長く付き合いたいお客様」と思ってもらえることでした。
約束を守る。
誠実に接する。
相手の話をよく聞く。
無理な値引きばかり求めない。
困ったときは素直に相談する。
そうした積み重ねが、お互いに利益のあるWIN-WINの関係につながると考えたのです。
実際に、不動産経営を続ける中では、「この物件ならコンビニ大家さんに合うと思います」と情報を持ってきてくれる担当者や、困ったときに親身になって相談に乗ってくれる方々との出会いがありました。
私は、不動産で本当に価値があるのは建物だけではないと思っています。
人との信頼関係も、大切な資産の一つです。
そして、その資産は、お金では買うことができません。
時間をかけて誠実な付き合いを続けた人だけが築くことのできる、長期的な財産なのだと私は考えています。
不動産は「誰から買うか」が経営を左右する
私は、不動産業界には誠実に仕事をしている会社や担当者が数多くいると思っています。
その一方で、自社の利益を優先し、十分な説明をしないまま契約を進めたり、知識や経験の少ない買主につけ込もうとしたりする業者が存在することも事実です。
ドラマ『正直不動産』が多くの人に支持された背景には、不動産取引に対する不安や、情報格差への関心も少なからずあったのではないかと私は感じています。
もちろん、ドラマはフィクションです。
しかし、不動産取引では、売る側と買う側が持っている情報量に差が生まれやすく、その差が判断に大きな影響を与える場面があることは、私自身も実際に経験しました。
不動産は、一件の取引金額が数千万円、ときには一億円を超えることも珍しくありません。
だからこそ、一つの判断を間違えれば、物件によっては数千万円単位で収益性が変わってしまうこともあります。
購入価格は適正だったのか。
家賃設定は市場に合っているのか。
修繕計画は現実的なのか。
管理会社の提案は本当に最適なのか。
こうした判断の積み重ねが、十年後、二十年後の結果を大きく左右します。
私は、不動産経営は「物件を買えば終わり」ではなく、「情報を集め、判断し続ける事業」だと考えています。
だからこそ、「何を買うか」と同じくらい、「誰から買うか」「誰と付き合うか」が重要なのです。
地元だからこそ得られたもの
二棟目を地元で購入したことで、多くの人とのつながりが生まれました。
銀行とは融資の相談だけでなく、将来の資金計画について話し合えるようになりました。
不動産会社とは地域の売買相場や市場の動きについて情報交換ができるようになりました。
管理会社とは空室対策や設備更新について、長期的な視点で相談できる関係になりました。
こうした関係は、一度の取引だけでは築けません。
何度も相談し、約束を守り、お互いに信頼を積み重ねることで少しずつ生まれていくものです。
私は、この信頼関係こそが、不動産経営における大きな財産だと感じています。
現実はトラブルの連続だった
しかし、二棟目を購入した後の現実は、決して順風満帆ではありませんでした。
むしろ、想像していた以上にトラブルの連続でした。
設備の故障。
修繕の判断。
業者との打ち合わせ。
予想外の費用。
管理上の問題。
本やインターネットには書かれていない出来事が次々と起こりました。
当時は、そのたびに悩み、「本当にこの判断で良いのだろうか」と迷うことも何度もありました。
しかし、今振り返ると、その一つひとつのトラブルが私を成長させてくれました。
トラブルを経験するたびに、不動産経営者としての経験値が増えました。
「このケースならこう判断する。」
「この修繕は早めに対応した方がいい。」
「この業者は安心して任せられる。」
逆に、
「このような契約には注意しよう。」
「この説明は必ず確認しよう。」
という判断基準も少しずつ身についていきました。
本を読むだけでは得られない経験が、現場には数多くあります。
私は、二棟目を購入したことで、その経験を積むことができました。
信頼できる人との出会いが財産になった
もう一つ、大きな財産になったものがあります。
それは、信頼できる人との出会いです。
銀行担当者。
不動産会社の担当者。
管理会社の担当者。
修繕をお願いする職人の方々。
最初から全員を信頼できたわけではありません。
実際には、さまざまな人と関わる中で、「この人なら安心して任せられる」と思える方々に出会うことができました。
その出会いは、一度の取引では生まれません。
誠実に付き合い、約束を守り、お互いに利益のある関係を築いてきたからこそ得られたものだと思っています。
私は、不動産経営とは建物を所有する事業ではなく、人との信頼関係を積み重ねていく事業でもあると考えています。
信頼できる人が一人増えるたびに、自分の不動産経営も少しずつ強くなっていきました。
まとめ
二棟目を購入した理由は、単に家賃収入を増やしたかったからではありません。
本当の目的は、不動産経営者として経験を積み、自分自身の判断力を磨くことでした。
そのために、自分の強みを生かせる地元を選び、銀行や不動産会社、管理会社との信頼関係を大切にしてきました。
もちろん、現実は決して順調ではありませんでした。
トラブルもありました。
失敗もありました。
判断に迷う場面も数え切れないほどありました。
しかし、その一つひとつの経験が、私の判断基準をつくり、信頼できる業者との出会いにつながり、不動産経営者として成長させてくれました。
今振り返ると、二棟目は単なる「買い増し」ではありません。
私にとって、本当の意味で不動産経営を学ぶスタート地点だったのです。
もし一棟目だけで満足していたら、現在の私はありません。
経験も、人とのつながりも、自分なりの判断基準も得られなかったでしょう。
現在の不動産経営の土台になっているのは、高い利回りでも、良い物件でもありません。
数々のトラブルを乗り越え、そのたびに学び、信頼できる人との関係を築いてきた経験です。
だから私は、これから二棟目を考えている方に伝えたいと思います。
物件選びももちろん大切です。
しかし、それ以上に大切なのは、「誰と一緒に事業を続けていくのか」という視点です。
不動産は建物を買う事業ではありません。
人との信頼を積み重ねながら、自分自身も成長していく事業なのだと、私は今でも強く感じています。
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