コンビニ経営を考えるとき、重要な指標の一つが「日販」です。
セブン-イレブンの2025年度の全店平均日販は69.9万円。商品粗利率は31.8%でした。
この数字を見ると、
「セブン-イレブンの店舗は、1日約70万円売っている」
というイメージを持つかもしれません。
しかし、全国に2万店以上ある店舗が、すべて同じ売上ということはありません。
日販100万円を超える店舗もあれば、50万円を下回る店舗もあります。
そして、私が今回考えたいのは、
平均日販69.9万円という数字だけで、オーナーの経営状態まで判断できるのだろうか?
ということです。
私が注目したいのは、**「オーナーの余力」**です。
- 平均日販69.9万円では、店舗ごとの実態は見えない
- 日販65万円でも、売上がそのまま利益になるわけではない
- 日販55~70万円で、利益はどれだけ変わるのか
- 日販50万円前後では、オーナー夫妻の時給が最低賃金を下回る可能性もある
- 黒字でも「余力」があるとは限らない
- オーナーの努力だけでは吸収できないコストもある
- 低日販店舗だけの問題ではない
- 「忙しい」がオーナーの余力を奪っていく
- オーナーの余力と法令遵守
- オーナーの余力を守ることは、スタッフを守ることでもある
- 本部にお願いしたい「新しい経営シミュレーション」
- 本部の利益シミュレーションではなく、オーナーの財布と時間を見てほしい
- まとめ|平均日販だけでは「持続可能性」は分からない
平均日販69.9万円では、店舗ごとの実態は見えない
平均値は、全体を把握するためには非常に便利な数字です。
しかし、平均値だけでは、店舗ごとのばらつきは分かりません。
そこで私は、あくまで当ブログ独自の仮説として、日販の分布を次のように想定しました。
| 日販 | 当ブログ独自の想定 |
|---|---|
| 40万円以下 | 5% |
| 40~50万円 | 10% |
| 50~60万円 | 20% |
| 60~70万円 | 25% |
| 70~80万円 | 18% |
| 80~90万円 | 10% |
| 90~100万円 | 6% |
| 100万円以上 | 6% |
これは、セブン-イレブンが公表している店舗別の日販分布ではありません。
平均日販69.9万円という公式データをもとに、当ブログ独自に設定した仮説モデルです。
このモデルでは、日販50~80万円の店舗が58%。
そして、60~70万円が最も厚い層になります。
そこで今回は、
日販65万円を当ブログ独自の標準モデル
として、店舗経営を考えてみます。
日販65万円でも、売上がそのまま利益になるわけではない
当ブログの標準モデルで日販65万円とすると、
65万円 × 365日 = 年間売上2億3,725万円
となります。
月間では、
65万円 × 30日 = 1,950万円
です。
大きな売上に見えます。
しかし、コンビニ経営では売上そのものがオーナーの利益になるわけではありません。
今回のSEMCシミュレーションでは、商品粗利率31.0%など、一定の条件を設定しています。
日販65万円の場合、月間の商品粗利益は、
約604.5万円
です。
ここから、
- 7-11チャージ
- 人件費
- 廃棄
- その他経費
などを差し引きます。
つまり、
「売上が大きい」ことと「オーナーに余力がある」ことは、同じではありません。
日販55~70万円で、利益はどれだけ変わるのか
同じ条件で、日販だけを変えてシミュレーションしてみました。
| 日販 | 月間売上 | 最終利益 | オーナー夫妻労働時間 | 簡易実質時給 |
|---|---|---|---|---|
| 55万円 | 1,650万円 | 約38.4万円 | 278時間 | 約1,383円 |
| 60万円 | 1,800万円 | 約50.1万円 | 278時間 | 約1,803円 |
| 65万円 | 1,950万円 | 約67.1万円 | 278時間 | 約2,410円 |
| 70万円 | 2,100万円 | 約78.5万円 | 278時間 | 約2,825円 |
このシミュレーションで見えてくるのは、
日販が5万円、10万円違うだけでも、最終的に残る利益が大きく変わる
ということです。
一方、今回のモデルでは、オーナー夫妻の労働時間は日販に関係なく月278時間としています。
つまり、売上が増えても労働時間が同じなら、
利益の増加が、そのままオーナー夫妻の「1時間当たりの経営成果」の違いになる
わけです。
「簡易実質時給」は、オーナーの本当の給料ではない
ここは誤解のないようにしておきたいと思います。
今回の「簡易実質時給」は、
店舗最終利益 ÷ オーナー夫妻の労働時間
で計算した、当ブログ独自の参考指標です。
これは、
オーナーの給与や実際の手取りを表すものではありません。
社会保険料、労働保険料、税金など、オーナー側の負担をすべて差し引いた数字でもありません。
それでも、この数字を見る意味はあります。
なぜなら、
「この利益を得るために、オーナー夫妻は何時間働いているのか?」
を考えることができるからです。
さらに見落としやすいのが、スタッフの有給休暇
そして、ここにはまだ考えなければならないコストがあります。
それが、
スタッフの有給休暇です。
スタッフが有給休暇を取得しても、店舗営業を止めるわけにはいきません。
そのため、店舗の人員状況によっては、
- 有給休暇取得者への賃金
- その時間を埋めるための代替スタッフ
- シフト調整
- 採用活動
- 新人教育
- 急な欠勤への対応
などの負担が発生します。
もちろん、有給休暇を取得したから必ず追加の人件費が発生するという意味ではありません。
既存のシフト内で吸収できるケースもあります。
しかし、人手不足の店舗ほど、こうした負担を吸収する余力が小さくなる可能性があります。
今回のシミュレーションでも、スタッフの有給休暇取得に伴う追加的な負担を十分に織り込んでいるわけではありません。
ここを考えると、店舗の「本当の人件費」は、単純な給与額だけでは語れないのではないでしょうか。
日販50万円前後では、オーナー夫妻の時給が最低賃金を下回る可能性もある
日販55万円の場合、今回のモデルでは最終利益は約38.4万円。
オーナー夫妻の労働時間は月278時間。
この条件で計算すると、簡易実質時給は約1,383円です。
しかし、日販がさらに下がって50万円前後になれば、利益はさらに薄くなります。
さらに、
- スタッフの有給休暇
- 採用コスト
- 教育コスト
- 欠勤対応
- オーナー自身の追加勤務
などを考慮すれば、
オーナー夫妻の労働時間を最低賃金相当で評価した場合、実質的な時給が最低賃金を下回る店舗が発生する可能性もあります。
もちろん、
「日販50万円なら必ず最低賃金を下回る」
という話ではありません。
店舗によって条件は大きく違います。
だからこそ、
日販だけで店舗の良し悪しを判断するのではなく、利益とオーナーの労働時間まで合わせて見る必要がある
と私は考えています。
黒字でも「余力」があるとは限らない
ここが、今回の記事で一番伝えたいところです。
店舗の最終利益がプラスなら、会計上は黒字です。
しかし、
黒字=余裕がある
とは限りません。
例えば、月38万円の利益を残すために、オーナー夫妻が毎月278時間働いているとしたらどうでしょうか。
数字だけを見れば、
「38万円の利益が出ている」
となります。
しかし、
「夫妻で278時間働いて38万円」
と考えると、見え方は大きく変わります。
そして利益が薄くなれば、
- スタッフを増やせない
- 教育に時間をかけられない
- 急な欠勤に対応できない
- オーナーが休めない
- 設備投資を後回しにする
- 手元資金を積み上げにくい
といった問題につながる可能性があります。
だから私は、
利益の厚み=経営の選択肢
だと考えています。
利益が薄くなると、最後はオーナーの時間で埋める
店舗の利益が減ったとき、最も簡単に人件費を抑える方法があります。
それは、
オーナー自身が働くことです。
人件費として計上されないオーナー夫妻の労働によって、店舗を回すことができます。
短期的には非常に合理的です。
しかし、これを続ければ、オーナーの時間がなくなります。
本来オーナーが行うべき、
- スタッフ教育
- 採用
- 店舗管理
- 数字の分析
- 接客・売場改善
- 将来への投資
に使える時間が減ってしまいます。
つまり、
人件費を抑えた代わりに、オーナーの経営余力を失っている
可能性があります。
オーナーの努力だけでは吸収できないコストもある
もちろん、加盟店経営にはオーナー側の責任があります。
経営者として、
- 数字を理解する
- 人材を採用する
- スタッフを教育する
- 経費を管理する
- 法令を守る
ことは当然必要です。
私自身も、オーナー側の経営能力や努力が重要だと考えています。
しかし、現在の店舗経営には、
個々のオーナーの努力だけでは吸収しにくいコスト上昇
もあります。
例えば、
- 最低賃金の上昇
- 社会保険
- 労働保険
- 水道光熱費
- 人手不足
- 採用コスト
- 有給休暇
- 教育コスト
などです。
これらすべてを、
「オーナーがもっと頑張ればいい」
で解決することには限界があります。
低日販店舗だけの問題ではない
本部も、低日販店舗の負担を軽減するための制度変更や支援策を行っています。
これは必要な取り組みだと思います。
しかし、問題は低日販店舗だけではありません。
最低賃金や人件費が上昇すれば、これまで何とか利益を確保できていた中間の日販帯にも負担が広がっていく可能性があります。
例えば、
人件費が上がる
↓
利益が減る
↓
オーナーがシフトに入る
↓
オーナーの時間がなくなる
↓
採用・教育・管理に時間を使えなくなる
という循環です。
これはすべての店舗で起こるという話ではありません。
しかし、
「オーナーの余力」という視点で店舗経営を考える必要性は、以前より高まっている
と私は感じています。
「忙しい」がオーナーの余力を奪っていく
店舗が忙しいこと自体は悪いことではありません。
売上が増えれば、当然仕事も増えます。
問題は、
売上に対して、必要な人員を確保できるだけの利益が残っているのか
ということです。
オーナー自身がシフトに入れば、人件費を抑えることはできます。
しかし、その代わりにオーナーの時間が失われます。
そして、
「現場に入る」
ことが増えれば増えるほど、
「経営する時間」
が減ってしまう可能性があります。
「忙しい」と書いて、
心を亡くす。
これは単なる言葉遊びではありません。
経営者の余力がなくなれば、店舗全体を考える時間まで失われてしまう可能性があるからです。
オーナーの余力と法令遵守
そして、私はここを非常に重要な問題だと考えています。
法令を遵守できない企業は存在するべきではない。
法令遵守は、
「できれば守るもの」
ではありません。
守ることを前提に経営を設計するもの
だと思います。
だからこそ、
スタッフの休暇を保障する。
必要な人員を確保する。
適切な労務管理を行う。
そして、その結果としてオーナー自身も無理なく経営できる。
ここまで考えた経営モデルが必要なのではないでしょうか。
オーナーの余力を守ることは、スタッフを守ることでもある
オーナーに余力があれば、
スタッフの教育に時間を使えます。
採用にも力を入れられます。
急な欠勤にも対応しやすくなります。
店舗の改善にも取り組めます。
そして何より、
オーナー自身が休むことができます。
反対に、余力がなくなれば、
「自分が働いて何とかする」
という経営になりやすい。
それが長期化すれば、オーナー自身だけでなく、スタッフの労働環境にも影響する可能性があります。
だから私は、
オーナーの余力を守ることは、スタッフの労働環境を守ることでもある
と考えています。
そして最終的には、
セブン-イレブンというブランドを守ること
にもつながるのではないでしょうか。
本部にお願いしたい「新しい経営シミュレーション」
では、これから本部が加盟店に提供する経営シミュレーションは、どうあるべきなのでしょうか。
私は、
店舗利益だけで終わらないシミュレーション
が必要だと思っています。
例えば、
店舗側
売上
↓
粗利
↓
チャージ
↓
人件費
↓
有給休暇に伴うコスト
↓
廃棄
↓
水道光熱費
↓
その他経費
↓
店舗最終利益
ここまでは店舗経営の基本です。
しかし、その先に、
オーナー側
社会保険
↓
労働保険
↓
税金など
↓
最終的な手残り
まで見る。
さらに、
オーナー夫妻の年間労働時間
を計算する。
そして、
最終的な手残り ÷ オーナー夫妻の労働時間
を見る。
ここまでやって初めて、
「この店舗はオーナーにとって持続可能なのか」
が見えてくるのではないでしょうか。
本部の利益シミュレーションではなく、オーナーの財布と時間を見てほしい
本部が加盟店を支援するのであれば、
「この店舗ならどれくらい利益が出るのか」
だけではなく、
「この店舗を経営したオーナーには、最終的にいくら残るのか」
まで見てほしい。
そして、
「その利益を得るために、オーナー夫妻は年間何時間働くのか」
まで見てほしい。
さらに、
スタッフの有給休暇や採用・教育まで含めて、本当に必要な人件費はいくらなのか
まで見てほしい。
私は、これからの加盟店支援には、この視点が必要だと思っています。
まとめ|平均日販だけでは「持続可能性」は分からない
セブン-イレブンの2025年度の平均日販は69.9万円です。
これは重要な数字です。
しかし、平均値だけでは、
どのくらい利益が残るのか。
オーナー夫妻が何時間働いているのか。
スタッフの有給休暇などを含めた人件費はいくらなのか。
オーナーにどれだけの余力が残るのか。
までは分かりません。
だから私は、これからのコンビニ経営では、
売上を見る。
↓
利益を見る。
↓
オーナーの時間を見る。
↓
経営余力を見る。
という視点が必要だと考えています。
店舗が黒字であることは大切です。
しかし、
法令を守り、スタッフを雇用し、必要な休暇を保障し、オーナー夫妻も無理なく働き、それでも将来に向けて利益を残せる。
そこまでできて初めて、
「持続可能な店舗経営」
と言えるのではないでしょうか。
そして本部にお願いしたいことは、
本部の利益シミュレーションだけではなく、オーナーの財布と時間までシミュレーションしてほしい。
ということです。
オーナーの余力を守ることは、店舗を守ること。
店舗を守ることは、スタッフを守ること。
そして最後には、
セブン-イレブンというブランドを守ることにつながる。
私はそう考えています。
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