コンビニ経営をしていると、時々こんな疑問を持ちます。
本部は、本当に加盟店と同じ目線で店舗経営を見ているのだろうか。
売上を上げる。
人を育てる。
作業効率を上げる。
廃棄を減らす。
人件費を管理する。
どれも店舗経営には欠かせません。
しかし、加盟店オーナーにとって最終的に重要なのは、
「その結果、いくら利益が残るのか」
ということです。
この視点で考えると、日本マクドナルドの創業者・藤田田氏が、なぜ直営店を重視したのかが非常に興味深く見えてきます。
- 藤田田は、なぜ直営店を重視したのか
- 直営店は「実験場」であり「学校」
- 「店舗を運営すること」と「経営リスクを負うこと」は違う
- 藤田田が掲げた「日本一の給料」
- 「安い人件費」ではなく「高い生産性」
- 私が感じた「本部と加盟店の目線の違い」
- 「時短什器」で感じた、もう一つの疑問
- 作業負担の軽減 ≠ 労働時間の削減
- 本部が本当に同じ目線なら、具体的な数字があるはず
- 直営店の価値は「店舗数」ではなく「成功モデル」
- 1,000店舗を増やす前に、既存店舗を強くする
- 本部と加盟店が見るべき数字を同じにする
- 加盟店支援とは「提案すること」ではなく「利益を改善すること」
- 「売上を上げる」から「利益を残す」へ
- 1,000店舗より、21,000店舗を強くするという考え方
- まとめ|店舗数ではなく「1店舗の強さ」を高める
藤田田は、なぜ直営店を重視したのか
日本マクドナルドは1971年、銀座三越に1号店をオープンしました。
その後、フランチャイズ展開を進め、日本全国へ店舗網を拡大していきました。
フランチャイズを大きく展開するためには、本部が加盟店に提供できる「成功する店舗モデル」が必要です。
そのために重要になるのが、直営店です。
直営店なら、本部自身が店舗を運営しながら、
- どの時間帯に何人必要なのか
- どの作業に時間がかかるのか
- どこに無駄があるのか
- どの教育方法が効果的なのか
- どの発注方法が利益につながるのか
- どれだけ売れば、どれだけ利益が残るのか
を実際の店舗で検証できます。
つまり直営店は、
「本部が運営する店舗」ではなく、「成功する店舗モデルを作るための実験場」
として考えることができます。
直営店は「実験場」であり「学校」
フランチャイズビジネスで本当に価値があるのは、
「この方法でやってください」
と加盟店に伝えることだけではありません。
重要なのは、
「実際に店舗で試した結果、これだけ改善しました」
というデータを加盟店に返すことです。
例えば、
この時間帯の人員配置を変更すると、1日30分削減できます。
発注方法を変更すると、廃棄が月3万円減ります。
作業工程を変更すると、年間300時間削減できます。
最低賃金が上昇しても、この方法なら年間○万円の利益を維持できます。
このような情報なら、加盟店オーナーは自分の店舗に置き換えて判断できます。
逆に、
「売上を上げましょう」
「人材を育成しましょう」
「作業効率を上げましょう」
だけでは、経営判断に必要な情報としては不十分です。
なぜなら、
「それをやった結果、利益はいくら変わるのか?」
が分からないからです。
「店舗を運営すること」と「経営リスクを負うこと」は違う
ここは、フランチャイズを考えるうえで重要なポイントだと思います。
本部社員が直営店を運営することと、加盟店オーナーが店舗を経営することは、同じではありません。
加盟店オーナーは、
- 自分の資金
- 借入金
- 人件費
- 採用リスク
- 売上減少リスク
- 最低賃金上昇
- 廃棄
- 修繕費
- オーナー自身の労働時間
- 最終的な利益
まで背負います。
一方で、直営店の店長や社員が店舗を運営する場合、店舗運営の経験は得られても、加盟店オーナーと同じ形で事業リスクを負っているわけではありません。
だからこそ、
直営店を持っていることだけで「加盟店と同じ目線で経営している」とは言えない
と思います。
重要なのは、
加盟店が背負っているリスクまで含めて、店舗の数字を見ることができているか。
ここではないでしょうか。
藤田田が掲げた「日本一の給料」
藤田田氏の経営思想で、もう一つ興味深いのが「給料」に対する考え方です。
藤田氏は従業員に対して、
「日本一の給料を出す」
という考え方を掲げていたことで知られています。
ここで大切なのは、
高い給料を払うこと自体が目的ではない
ということです。
高い給料を継続的に支払うためには、それを支える生産性と利益が必要です。
つまり、
高い給料を払える会社
=高い生産性を持つ会社
という考え方につながります。
「安い人件費」ではなく「高い生産性」
コンビニ経営では、人件費が大きな経費になります。
最低賃金が上がれば、人件費は上昇します。
人手不足になれば、採用するためにさらに時給を上げる必要も出てきます。
ここで、
「人件費が上がったから利益が減った」
だけで終わってしまえば、経営はどんどん苦しくなります。
必要なのは、
人件費が上がっても利益を残せる店舗を作ること
です。
そのためには、
「何円で人を雇うか」
だけを見るのではなく、
「1時間でどれだけの価値を生み出せるか」
を見る必要があります。
つまり、
低賃金で働かせる経営から、高生産性で高い時給を払える経営へ。
これからのコンビニには、この発想が必要なのではないでしょうか。
私が感じた「本部と加盟店の目線の違い」
ここからは、私自身の経験です。
2023年、イオンがパートタイマーなど約40万人を対象に、平均7%程度の賃上げを打ち出しました。
コンビニオーナーにとって、競合企業の賃上げは単なるニュースではありません。
近隣店舗の時給が上がれば、
- 自店の採用条件
- アルバイトの流出
- 時給設定
- 人件費
- シフト編成
- 最終利益
に直接影響します。
私は当時、本部のオーナー相談室にいた元幹部の方に、この賃上げについて話をしました。
ところが、その方はこのニュースを把握していませんでした。
もちろん、これは私が経験した一つの出来事です。
これだけで本部全体の情報共有について判断することはできません。
しかし、私はそのとき考えました。
競合企業の賃金政策は、加盟店経営にとって非常に重要な情報ではないのか。
本部が加盟店を経営支援するのであれば、こうした外部環境の変化を、
「加盟店の利益にどう影響するのか」
まで分析してほしいと思うのです。
「時短什器」で感じた、もう一つの疑問
もう一つ、私自身の経験があります。
本部から「時短什器」が提案されました。
私は実際に導入しました。
確かに作業は楽になりました。
現場の負担も軽くなりました。
これは明確なメリットです。
しかし、私は別の疑問を持ちました。
「作業が楽になったこと」と「労働時間が減ったこと」は同じなのだろうか?
そこでオーナー相談室に、
「時短什器は毎年提案されていますが、実際に1日どれくらいの時間削減を目標にしているのでしょうか?」
と聞きました。
すると、
「時短什器は必要ないということですか?」
という趣旨の回答でした。
しかし、私は「必要ない」と言っているわけではありません。
作業が楽になったことは評価しています。
私が知りたかったのは、
「時短」と呼ぶなら、その効果を数字で検証できないのか?
ということです。
作業負担の軽減 ≠ 労働時間の削減
これは店舗経営で非常に重要な考え方だと思います。
例えば、1日30分の作業時間を削減できたとします。
年間では、
30分 × 365日 =182.5時間
です。
時給1,200円なら、
182.5時間 × 1,200円 =21万9,000円
になります。
これはあくまで単純な試算です。
しかし、経営者にとっては意味のある数字です。
もし時短什器によって年間182.5時間削減できたなら、
その182.5時間は、店舗のどこに現れたのでしょうか?
- 人員を減らしたのか
- 他の作業に回したのか
- 教育に使ったのか
- 売場改善に使ったのか
- 接客に使ったのか
- 従業員の休憩に回したのか
ここまで確認して初めて、「時短」の効果を経営成果として評価できます。
だから私は、
作業負担の軽減と、労働時間の削減は分けて考える必要がある
と思っています。
本部が本当に同じ目線なら、具体的な数字があるはず
加盟店オーナーは、毎月の損益を見ています。
売上。
粗利益。
チャージ。
人件費。
廃棄。
水道光熱費。
社会保険。
税金。
借入金。
そして最後に残る利益。
さらに、
自分自身が何時間働いたのか
まで考えます。
だからこそ、本部が加盟店と同じ経営目線で店舗を見ているのであれば、
具体的な数字でフィードバックできるはずです。
例えば、
「この改善で年間50万円利益が増えます」
「この作業変更で年間300時間削減できます」
「最低賃金が50円上がっても、この方法なら利益への影響を○万円抑えられます」
「この発注方法なら廃棄を月○万円削減できます」
こうした情報こそ、加盟店にとって価値のある経営支援ではないでしょうか。
直営店の価値は「店舗数」ではなく「成功モデル」
私は、直営店を増やすこと自体を否定しているわけではありません。
むしろ、本部が直営店を持つのであれば、
徹底的に活用すべきだ
と思っています。
直営店を、
「店舗運営の研究施設」
として使うのです。
例えば、
最低賃金が上がった。
↓
どの作業を減らせるのか。
↓
何時間削減できたのか。
↓
その結果、人件費はいくら変わったのか。
↓
利益はいくら改善したのか。
↓
その方法を加盟店へ展開する。
このサイクルを繰り返す。
これこそが、直営店を持つ大きな意味ではないでしょうか。
1,000店舗を増やす前に、既存店舗を強くする
人口減少、人手不足、最低賃金上昇という環境を考えると、
店舗数を増やすことだけを成長と考える時代ではない
と私は思います。
例えば、既存21,000店舗で、
1店舗あたり月5万円
利益を改善できたとします。
21,000店舗 × 5万円
= 月10.5億円
年間では、
126億円
です。
もちろん、これは単純なシミュレーションです。
すべての店舗で同じ改善ができるわけではありません。
しかし重要なのは、
新しい店舗を作らなくても、既存店舗の生産性を高めることで大きな利益改善が可能
ということです。
本部と加盟店が見るべき数字を同じにする
本部と加盟店が本当に同じ方向を向くのであれば、見るべき数字も共通しているべきだと思います。
例えば、
- 売上
- 粗利益
- チャージ
- 人件費
- 社会保険料
- 廃棄
- 水道光熱費
- 労働時間
- 1時間あたりの生産性
- オーナーの労働時間
- 最終的な利益
です。
そして施策を提案するなら、
「この施策によって、あなたの店舗では年間いくら改善するのか」
まで示してほしい。
そうすれば、加盟店オーナーは投資判断ができます。
「導入するべきか」
「導入しないべきか」
「導入するなら、どの店舗から始めるか」
を数字で判断できます。
加盟店支援とは「提案すること」ではなく「利益を改善すること」
私はここが重要だと思っています。
新しい什器を提案する。
新しい設備を導入する。
新しい販売方法を提案する。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
しかし、本当に重要なのは、
「その結果、加盟店の経営がどう改善したのか」
です。
だから、
提案 → 導入 → 効果測定 → 数字化 → 改善 → 加盟店へ展開
まで行って初めて、経営支援になるのではないでしょうか。
「売上を上げる」から「利益を残す」へ
これからのコンビニ経営では、
売上を上げることだけが成長ではありません。
人件費が上がる。
最低賃金が上がる。
採用コストが上がる。
社会保険料が上がる。
さまざまなコストが上昇する中で、
同じ売上でも、より多くの利益を残せる店舗を作る。
これも立派な成長です。
藤田田氏の考え方から学べるのは、
「高い給料を払いたければ、それを支えられる生産性を作る」
という発想ではないでしょうか。
1,000店舗より、21,000店舗を強くするという考え方
セブン-イレブンの1,000店舗出店計画を否定したいわけではありません。
出店によって新しい市場を開拓できる可能性もあります。
ただ、人口減少と人手不足が進む環境では、
「店舗を増やすこと」と「既存店舗を強くすること」
のどちらに投資した方が、長期的な企業価値につながるのかを考える必要があります。
私は、
新しい店舗を1,000店舗増やすことと同じくらい、既存店舗の生産性を高めることに投資してほしい
と思っています。
そのためには、本部が持つ直営店や現場データを最大限に活用する。
そこで成功モデルを作る。
そして加盟店に、
「この方法なら年間○時間削減できます」
「この方法なら年間○万円利益が増えます」
と具体的な数字で返す。
これこそが、本当の意味での加盟店支援ではないでしょうか。
まとめ|店舗数ではなく「1店舗の強さ」を高める
藤田田氏が直営店を重視した理由を考えると、単純に「直営店を増やす」という話ではないと思います。
重要なのは、
直営店で実際に試す。
数字で検証する。
成功モデルを作る。
その結果を加盟店へ戻す。
この循環です。
そして、加盟店と本部が本当に同じ目線で経営するのであれば、
「この施策によって、あなたの店舗の利益は年間○万円改善します」
というところまで説明できるはずです。
私は、これからのコンビニ経営に必要なのは、
「もっと売上を上げましょう」
だけではないと思っています。
必要なのは、
「どうすれば1店舗あたりの生産性と利益を高められるのか」
を数字で示すことです。
店舗数を増やす時代から、
1店舗1店舗を強くする時代へ。
直営店を持つ意味も、
店舗数を増やすことではなく、
「加盟店が儲かる店舗モデルを作ること」
にあるのではないでしょうか。
そして私は、
本部が本当に加盟店と同じ目線で経営できているのであれば、具体的なフィードバックがあるはずだ
と思っています。
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