最低賃金1,500円の先に何が起こる?|7年後、日販65万円でも利益1.6万円【第186話】

最低賃金1,500円の先をSEMCで検証し、7年後に時給1,624円、日販65万円でも利益約1.6万円となるコンビニ複数店経営のシミュレーション SEMC使い方講座

最低賃金の引き上げが続いています。

最低賃金1,500円という数字を聞くと、

「まだ先の話では?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、今回考えたいのは、最低賃金が1,500円になった瞬間だけではありません。

その先も最低賃金が上昇し続けたら、コンビニの利益はどうなるのでしょうか。

今回はSEMCを使って、最低賃金の上昇がコンビニ複数店の経営にどのような影響を与えるのかを検証します。


1.最低賃金が毎年5%上昇したら?

今回は、最低賃金が毎年5%ずつ上昇すると仮定します。

現在の最低賃金1,154円を起点に単純計算すると、以下のようになります。

経過時給の試算
現在1,154円
1年後約1,212円
2年後約1,272円
3年後約1,336円
4年後約1,403円
5年後約1,473円
6年後約1,546円
7年後約1,624円
8年後約1,705円

これは、あくまで「毎年5%上昇する」と仮定したシミュレーションです。

実際の最低賃金が、この通りに上昇するとは限りません。

今回はこの仮定をもとに、

「人件費が上昇し続けた場合、コンビニ経営の利益はどこまで圧迫されるのか」

をSEMCで確認します。


2.今回のSEMC設定

今回の条件は以下の通りです。

・Cタイプ
・加盟15年以上
・24時間営業
・複数店
・C地域
・GP率31.8%
・店長不在
・オーナー・奥様は店舗運営に入らない
・パート・アルバイトのみで運営
・平均日販65万円
・1日の必要労働時間47時間
・月間労働時間1,410時間

7年後のモデルとして、最低賃金を約1,624円と仮定し、通常時間帯の時給も1,624円として計算しました。

深夜時間帯は25%割増として、

1,624円 × 1.25 = 2,030円

としています。


3.日販65万円は、決して低い売上ではない

今回の平均日販は65万円です。

月間商品売上高は、

65万円 × 30日=1,950万円

となります。

日販65万円という数字だけを見ると、

「十分売れている店舗」

と感じるかもしれません。

では、この店舗を7年後の人件費水準で運営したら、どれだけ利益が残るのでしょうか。


4.7年後、日販65万円でも最終利益は約1.6万円

今回のSEMCでは、

商品売上高:1,950万円

売上総利益:620.1万円

7-11チャージ:約305.7万円

総収入:約314.4万円

雑収入加算後収入:約319.4万円

となりました。

ここから、

人件費:約243.6万円

廃棄:約58.5万円

その他経費:約18.5万円

を差し引きます。

その結果、

SEMC上の最終利益は約1.6万円/月

となりました。

年間にすると約19万円です。

つまり、

日販65万円を維持していても、7年後の人件費水準では、SEMC上の利益がほぼ残らない

という結果になりました。


5.最低賃金1,500円の時点では約20万円だった

ここで、これまでのシミュレーションと比較してみます。

同じ、

・日販65万円
・Cタイプ
・加盟15年以上
・24時間営業
・C地域
・GP率31.8%
・パート・アルバイトのみで運営

という条件で、人件費だけを変えてみます。

通常時給SEMC上の最終利益
1,500円約20.2万円
1,575円約9.0万円
1,624円約1.6万円

売上は変えていません。

営業時間も変えていません。

必要労働時間も1日47時間で同じです。

それでも、

人件費の上昇だけで、利益が約20万円から約1.6万円まで縮小しました。

これは非常に大きな変化です。


6.本当に怖いのは「赤字になる瞬間」ではない

今回の検証で私が一番気になったのは、

「いつ赤字になるのか」

ということだけではありません。

もっと重要なのは、

黒字の状態から、利益の余力が急速に失われていくこと

です。

時給1,500円では、

約20.2万円の利益。

時給1,575円では、

約9万円の利益。

時給1,624円では、

約1.6万円の利益。

売上は同じ日販65万円です。

それでも、人件費が上昇するだけで利益がほぼ消えてしまいます。

つまり、

「赤字になっていないから問題ない」

とは言えません。

利益が20万円ある店舗と、利益が1.6万円しかない店舗では、経営の余力は大きく違います。


7.今回の1,410時間は「純粋な店舗労働時間」

ここにも重要なポイントがあります。

今回のSEMCで計算している月間1,410時間は、

店舗を営業するための純粋な労働時間

です。

しかし、実際の店舗経営では、それ以外にも仕事があります。

・店舗ミーティング
・個店での販売政策
・販促活動
・求人募集
・面接
・新人教育
・研修
・シフト作成・調整
・急な欠勤への対応
・退職者への対応
・スタッフとの面談
・店舗管理

などです。

これらの時間は、今回の1,410時間には含まれていません。

つまり、

「月1,410時間で店舗経営のすべてが完結する」

という計算ではありません。

あくまで、

24時間営業を維持するための純粋な店舗労働時間

です。


8.有給・社会保険料・求人・教育費も考慮していない

さらに、今回のSEMCでは、

・有給休暇
・社会保険料などの事業主負担
・雇用保険等
・求人費
・教育費
・店長・責任者の給与

なども十分に織り込んでいません。

そのため、

約1.6万円=実際に経営者の手元に残る利益

ではありません。

あくまで、

今回SEMCに設定した条件における最終利益

です。

むしろ、これらの追加コストを考えれば、日販65万円では利益を確保する余力がかなり小さいと考える必要があります。


9.現在の日販70万円でも安心とは限らない

では、日販を70万円まで上げればどうでしょうか。

日販70万円なら、

70万円 × 30日=2,100万円

の月間商品売上高になります。

当然、日販65万円より利益は改善します。

しかし重要なのは、

「売上が70万円あれば、人件費上昇を十分吸収できるのか?」

ということです。

現在は余力があるように見える店舗でも、人件費が上昇すれば、その利益は急速に削られていきます。

日販が増えなければ、時給上昇による人件費増加を、そのまま利益から吸収することになるからです。


10.コンビニは「売上が増えなくても人件費が増える」

24時間営業を続けるためには、売上に関係なく一定の労働時間が必要です。

今回の店舗では、

1日47時間

の労働力が必要でした。

月間では、

1,410時間

です。

最低賃金が上昇すれば、この1,410時間に対して支払う人件費も増えていきます。

つまり、

売上が同じ

↓

必要労働時間も同じ

↓

時給だけ上昇

↓

人件費増加

↓

利益減少

という構造です。


11.これからは「日販」だけでは経営を判断できない

コンビニ経営では、

「日販」

が非常に重要な指標として扱われてきました。

もちろん、売上は重要です。

しかし、人件費が上昇していく環境では、

「日販はいくらか」

だけではなく、

「その日販を作るために、何時間の労働力が必要なのか」

を見る必要があります。

さらに、

・求人
・教育
・店舗ミーティング
・個店政策
・シフト管理

など、店舗を維持・成長させるための見えない労働も考えなければなりません。


12.まとめ|7年後、日販65万円でも利益は約1.6万円

今回のSEMCでは、

Cタイプ

加盟15年以上

24時間営業

複数店

C地域

GP率31.8%

という条件で、

店長不在・オーナー夫婦不在・パート・アルバイトのみ

の店舗運営を想定しました。

さらに、最低賃金が毎年5%ずつ上昇すると仮定し、7年後の最低賃金を約1,624円として計算しました。

その結果、

日販65万円でも、SEMC上の最終利益は約1.6万円/月

となりました。

そして、この数字には、

・店舗ミーティング
・個店での販売政策
・求人
・教育

などの追加労働時間は含まれていません。

さらに、

・有給休暇
・社会保険料等
・求人費
・教育費
・店長・責任者の給与

なども十分に反映していません。

だから今回の検証から見えてくるのは、

「最低賃金1,500円になったら、突然コンビニ経営が成り立たなくなる」

という単純な話ではありません。

むしろ、

今は黒字で余力のある店舗でも、人件費が上昇するにつれて、その余力が急速に削られていく可能性がある

ということです。

今回のシミュレーションでは、

時給1,500円 → 約20.2万円

時給1,575円 → 約9万円

時給1,624円 → 約1.6万円

まで利益が縮小しました。

これは、売上が落ちた結果ではありません。

人件費が上昇した結果です。

コンビニ経営にとって、これから重要になるのは、

「どれだけ売るか」

だけではなく、

「その売上を作るために、どれだけの人件費と労働時間が必要なのか」

という視点ではないでしょうか。

今は黒字だから大丈夫。

そう考えるのではなく、

7年後、8年後にも利益を残せる経営なのか。

SEMCを使って、これからも検証していきたいと思います。

おすすめ記事

「セブン-イレブンのファッション参入に異議あり」について思うこと【第185話】
セブン-イレブンのファッション参入について現役オーナーが考察。アンドエスティHDとの取り組みや20〜40代女性を狙う戦略を踏まえ、ユニクロとの組み合わせや「未来のコンビニエンス」を考えます。
契約上の本部と加盟店は平等である。その指標とは?【第183話】
本部と加盟店は契約上、独立した事業者です。では「平等な立場」とは何を意味するのでしょうか。情報の透明性、リスクと利益、基準の明確さ、再現性、変化への対応から、持続可能なフランチャイズ経営を考えます。
本部の生産性向上を、加盟店の利益につなげるには?【本部と店舗、それぞれの生産性を考える】【第182話】
セブンイレブンの本部人件費、従業員数、直営店数、加盟店利益を分析。本部の1人当たり人件費が上昇する一方、加盟店利益が減少する中で、本部の生産性向上を加盟店の利益につなげる方法を考えます。
セブンイレブンの最低保証2,000万円は何のため?日販35万円で24時間営業をSEMC検証【第181話】
セブンイレブンの最低保証2,000万円は利益保証ではありません。SEMCで日販35万円・24時間営業を試算し、オーナー夫妻の労働時間やPA人件費、雇用関連コストまで含めて最低保証の意味を検証します。
時短の価値が下がった?|2026年8月コンビニ・外食速報から見える消費行動の変化【第175話】
2026年8月のコンビニ・スーパー・ドラッグストア・外食の速報値を比較。客数の変化から、時短の価値と消費者の選択肢がどう変化しているのかを現役コンビニオーナーが考察します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました