なぜコンビニは人手不足なのか?1人の欠員が店舗を苦しめる理由【第179話】

コンビニの人手不足と1人の欠員が店舗経営に与える影響を考えるイメージ コンビニ経営

コンビニの人手不足というと、

「働く人が減っているから」

と考えられがちです。

もちろん、それも大きな要因です。

しかし、実際に店舗を経営していると、それだけでは説明できないと感じます。

コンビニには、人手不足を慢性化させやすい独特の店舗運営構造があるからです。

そして、この問題を突き詰めていくと、単なる「採用問題」ではなく、店舗運営そのものの問題に行き着きます。


コンビニはなぜ1人の欠員で店舗運営が苦しくなるのか?

工場などでは、ある程度まとまった人数で同じ時間帯に働いている場合があります。

例えば10人で仕事をしていて、1人が休んでも、

10人 → 9人

です。

もちろん負担は増えますが、残った人で吸収できる余地があります。

一方、コンビニは少人数で店舗を運営しています。

例えば2人体制なら、

2人 → 1人

です。

1人の欠員が、単純計算で50%の戦力減になります。

コンビニでは、もともとの配置人数が少ないからこそ、1人の欠員が店舗運営に与える影響が大きくなります。


24時間営業だから人員確保が難しい

さらにコンビニには、24時間営業という特徴があります。

仮に1シフトを4時間とすると、

24時間 ÷ 4時間 = 6コマ。

2人体制なら、

6コマ × 2人 = 12人コマ/日。

1週間では、

12人コマ × 7日 = 84人コマ

になります。

例えば週3日・1日4時間勤務のスタッフなら、1人あたり週12時間。

単純計算では、

84時間 ÷ 12時間 = 7人

必要になります。

もちろん、実際の店舗では長時間勤務者や社員、店長などもいるため、これはあくまで単純化した計算です。

それでも、

コンビニは毎週、かなりの勤務時間を継続的に埋めなければならない

ということは分かります。


「1人辞めたから1人採用」では人手不足は解決しない

さらに難しいのが、退職した人と同じ時間に働ける人を探すことです。

例えば、

火・木・土の17時~21時

に働いていたスタッフが退職したとします。

必要なのは、単純に「4時間働ける人」ではありません。

必要なのは、

火・木・土の17時~21時に働ける人

です。

ところが応募があっても、

「その時間は働けない」

「週1日しか入れない」

「土日は働けない」

など、店舗が必要とする条件と合わず、採用できないケースがあります。

つまり、

応募者がいることと、採用できることは別問題です。

人手不足を「応募者数」だけで判断できない理由がここにあります。


コンビニは時間帯によって必要な人材が違う

さらに、コンビニでは時間帯によって仕事内容も変わります。

早朝

  • 納品
  • 品出し
  • 売場整理

昼

  • 来店客が集中する時間帯のレジ対応
  • 品出し
  • 売場整理

夕方

  • 帰宅客への対応
  • 商品補充
  • 売場整理

深夜

  • 納品
  • 品出し
  • 清掃
  • 廃棄処理

同じ「1人」でも、時間帯によって求められる役割が違います。

だから、

「誰でもいいから1人採用すればいい」

というわけにはいきません。

必要なのは、

必要な時間に、必要な仕事を担える人

です。


低日販店舗ほど余剰人員を抱えにくい

では、

「人手不足になるなら、最初から多めに採用すればいい」

と思うかもしれません。

しかし、それも簡単ではありません。

人を余分に配置すれば、そのまま人件費が増えるからです。

特に低日販店舗では、この問題は非常にシビアです。

売上規模が小さい店舗で、

「欠員に備えて、余分に人を採用しておこう」

という余裕はありません。

必要最低限の人数でシフトを組んでいるからこそ、1人の退職や長期欠勤の影響が大きくなります。

例えば、インフルエンザなどで1人が長期間休めば、残ったスタッフが穴を埋めることになります。

それが長期化すれば、

勤務時間が増える
↓
負担が増える
↓
疲弊する
↓
さらに退職者が出る

という悪循環につながる可能性があります。


私が直営店から2号店を引き継いだときに感じたこと

私自身、2号店を直営店から引き継いだ経験があります。

そのとき、非常に印象に残ったことがあります。

その店舗は、社員4人体制でした。

どの時間帯にも社員がいるような状態で、アルバイトの都合に合わせて社員が勤務時間を調整していました。

アルバイトが入れない時間帯を社員が埋める。

そうすることで、店舗運営を維持していたのです。

しかし、オーナー店で同じことをするのは簡単ではありません。

社員4人を配置し、アルバイトの都合に合わせて社員が勤務時間を調整する。

そのような人件費を、一般的なオーナー店が負担することは現実的ではないからです。


オーナー店では人件費と利益のバランスが厳しい

オーナーにとって、人件費は非常に大きなコストです。

人を増やせば店舗運営は楽になります。

しかし、

人を増やせば利益は減ります。

特に低日販店舗では、この問題は非常にシビアです。

だからオーナー店では、必要最低限の人数でシフトを組まざるを得ません。

ここで重要なのは、

直営店でできる人員配置と、オーナー店でできる人員配置は同じではない

ということです。

直営店で社員を多く配置できるからといって、その方法をそのままオーナー店に求めることはできません。

だからこそ本部には、

オーナー店でも利益を残しながら再現できる店舗運営モデル

が必要なのではないでしょうか。


セブン‐イレブンの直営店は5年間で約65%減少している

ここで、もう一つ気になる数字があります。

セブン‐イレブン・ジャパンの直営店は、公式IRによると次のように推移しています。

年度直営店FC店
2020年度453店20,632店
2021年度427店20,778店
2022年度265店20,987店
2023年度193店21,170店
2024年度150店21,402店
2025年度158店21,564店

2020年度の453店から2025年度の158店まで、

295店減少し、約65%減少しています。

一方、FC店は、

20,632店 → 21,564店

と932店増えています。

つまり、店舗運営の中心はさらにFC加盟店へ移っています。

ここで私は、一つの疑問を持ちます。

これからの店舗運営モデルを、どこで検証するのでしょうか?


もし直営店の減少理由が採算性なら、加盟店で本当に成立するのか?

もちろん、直営店が減少した理由について、

「採算が合わないから減らした」

と断定することはできません。

直営店の増減には、さまざまな要因があると考えられるからです。

ただ、もしその理由の一つに、

直営店として運営すると、人件費などのコストを含めて採算を取りにくい

という事情があるのだとしたら、私は疑問を感じます。

それは、

直営店で採算が合わない店舗を、加盟店オーナーなら採算が合う店舗として運営できるのでしょうか?

という疑問です。

もちろん、直営店と加盟店では経営条件が違います。

加盟店ではオーナー自身が店舗運営に入ることもあります。

人件費の構造も違います。

しかし、

売上が少ない。

必要な人員が多い。

人手不足で人を集められない。

24時間営業を維持しなければならない。

といった店舗そのものが抱える問題は、経営主体が変わっただけで消えるわけではありません。

だからこそ、もし直営店で採算が合わない店舗があるのであれば、

「なぜ採算が合わないのか」

をまず本部自身が検証する必要があるのではないでしょうか。


直営店こそ「未来の加盟店」を検証する場所ではないか

直営店には、加盟店にはない役割があります。

本部が直接運営する店舗だからこそ、

  • 人員配置を変える
  • シフトを変更する
  • 作業を減らす
  • 作業時間を見直す
  • 省人化を試す
  • 欠員が出た場合の対応を検証する

といったことを実際の店舗で試すことができます。

そして、その結果を数字で検証できます。

例えば、

「この売上規模なら、何人いれば店舗を維持できるのか」

「1人退職した場合、どうシフトを組み替えればいいのか」

「必要な時間帯に人が集まらなかった場合、どの仕事を削ればいいのか」

という問題です。

直営店でこうした検証を行い、

加盟店でも再現できる店舗運営モデル

にしていく。

これこそ、直営店の大きな役割の一つではないでしょうか。


直営店でできないことを、オーナーの努力だけで実現するのは難しい

ここは、人手不足を考えるうえで非常に重要です。

直営店で実現できない店舗運営を、加盟店オーナーの努力だけで実現するのは難しい。

例えば、直営店で社員4人を配置しなければ安定して店舗を運営できないのであれば、

「オーナー店ではもっと少ない人数でやってください」

と言われても、簡単にはいきません。

逆に、直営店で、

「この人数でも店舗を維持できる」

「この作業はなくしても問題ない」

「この時間帯はこうすれば少人数でも対応できる」

という方法が実証されているのであれば、それは加盟店にとって非常に価値のあるノウハウになります。

だからこそ、

直営店でできていることを、加盟店でも再現できる形にする。

この考え方が重要なのではないでしょうか。


直営店でできていることなら、OFCがオーナーに指導できるはず

そして、ここでOFCの役割が重要になります。

もし直営店で、

「この人数で運営できる」

「この時間帯はこの配置で対応できる」

「1人欠員が出ても、この方法なら店舗を維持できる」

ということが実証されているのであれば、

その方法をOFCが加盟店オーナーに指導することもできるはずです。

もちろん、すべての店舗が同じ条件ではありません。

売上も違います。

立地も違います。

客層も違います。

店舗の大きさも違います。

だから、直営店の方法をそのまま押し付ける必要はありません。

必要なのは、

直営店で検証した方法を、店舗条件に合わせて再現できる形にすること

です。

例えば、

「直営店ではこうしています」

で終わるのではなく、

「あなたの店舗なら、この部分をこう変えれば再現できます」

というところまで落とし込む。

それがOFCの重要な役割の一つではないでしょうか。


「採用してください」ではなく「こう運営してください」

人手不足の店舗に対して、

「求人を出しましょう」

「採用を頑張りましょう」

と言うことは簡単です。

しかし、それだけでは構造的な問題は解決しません。

必要なのは、

「人が足りないとき、どうやって店舗を運営するのか」

という答えです。

例えば、

  • 1人退職したらどうするのか
  • 長期欠勤が発生したらどうするのか
  • 応募者が来なかったらどうするのか
  • 必要な時間帯に人が集まらなかったらどうするのか

それでも店舗は営業し続けなければなりません。

だからこそ、本部には、

人が足りないことを前提にした店舗運営モデル

が必要なのではないでしょうか。

どの業務を減らすのか。

どの時間帯を少人数化するのか。

どの仕事を集約するのか。

どこまで省人化するのか。

そして、

どの程度の人件費なら店舗利益を維持できるのか。

ここまで考えたモデルを、加盟店に提供してほしいと思います。


フランチャイズだからこそ「再現性」が重要

フランチャイズの強みは、個々のオーナーが一から店舗運営の答えを探すことではありません。

本部が持っている知識や経験、データ、店舗運営のノウハウを加盟店が活用できることにあります。

だからこそ、

再現性

が重要になります。

私は、次のようなサイクルが必要だと思います。

直営店で検証する

↓

数字で結果を確認する

↓

再現できるモデルにする

↓

OFCが加盟店に伝える

↓

加盟店で実践する

↓

結果を本部へフィードバックする

↓

さらに改善する

この循環ができれば、人手不足への対応も、

「オーナー個人の頑張り」から「チェーン全体の仕組み」

へ変わっていきます。


契約制度を変える今だからこそ「人」の問題も考えてほしい

セブン‐イレブンでは、長年続いてきた加盟店契約制度が大きく見直されています。

契約制度を変えるということは、それだけ店舗を取り巻く環境が変わったということでもあります。

そして、人を取り巻く環境も大きく変わりました。

  • 働く人の人口
  • 若年層の人口
  • 最低賃金
  • 他業種との人材獲得競争
  • 働き方に対する価値観
  • 24時間営業を取り巻く環境

昔と現在では、大きく違います。

だからこそ、新しい契約制度を考えるのであれば、

「人がいることを前提とした店舗運営」そのものも見直す必要があるのではないでしょうか。


フランチャイズ加盟店を募集するなら「人」の問題にも答えてほしい

本部がフランチャイズ加盟店を募集し、加盟店に店舗経営を委ねるのであれば、

「人の問題をどう解決するのか」

についても、本部には大きな役割があると思います。

もちろん、採用やスタッフ管理は加盟店の経営者が担う仕事です。

しかし、

「人が採用できない」

「必要な時間帯に人が集まらない」

「1人辞めるとシフトが崩れる」

という問題が、全国の加盟店で繰り返し起きるのであれば、それは個々のオーナーだけの問題ではありません。

チェーン全体の経営課題です。

だからこそ本部には、

加盟店が再現性高く店舗を運営できる仕組み

を作ってほしいと思います。


人手不足は「採用問題」ではなく「経営問題」

コンビニの人手不足は、単純に「働く人がいない」という問題ではありません。

24時間営業

少人数運営

2人体制

時間帯によって異なる作業

応募者と必要シフトのミスマッチ

余剰人員を抱えにくい利益構造

これらが重なって起きています。

そして、特に低日販店舗では、人件費の問題がより深刻になります。

だからこそ、

「どうすれば人を採用できるか」

だけではなく、

「限られた人数で、どうすれば店舗を維持し、オーナーにも利益を残せるのか」

を考える必要があります。

直営店が2020年度の453店から2025年度の158店へ大きく減少し、FC店が店舗運営の中心となっている今だからこそ、この問題はさらに重要だと思います。

もし直営店の減少理由の一つに採算性の問題があるのであれば、

その問題を加盟店に移すだけではなく、まず本部自身が解決方法を検証する必要があるのではないでしょうか。

直営店で検証する。

再現性のある方法にする。

OFCが加盟店に伝える。

加盟店で実践する。

そして、その結果をさらに本部へ戻す。

これが、フランチャイズチェーンだからこそできる強みだと思います。

直営店でできていることなら、OFCがオーナーに指導できる。

逆に、

直営店で実現できないことを、オーナーの努力だけで実現するのは難しい。

だからこそ、

「人が足りなければ採用してください」

ではなく、

「人が足りない時代でも、この方法なら店舗を運営できます」

という答えを、本部には示してほしい。

人手不足は、オーナー個人の採用問題ではありません。

これからのコンビニ経営モデルそのものを考える問題なのではないでしょうか。

おすすめ記事

当たり前の安心は、当たり前じゃない。コンビニ経営者が警察官に感謝する理由【第178話】
コンビニ経営10年以上の経験から、万引き・強盗・酔っ払い・トラブルなどに対応する警察官の大変さを考察。24時間営業や深夜の安心を支える日本の治安と、警察に頼ることの大切さを現場経験から語ります。
コンビニの落とし物対応は意外と大変|財布・現金を警察へ届けるまでの店舗の仕事【第177話】
コンビニで財布や現金などの落とし物を拾った後、店舗では何をしているのか。防犯カメラの確認、保管、スタッフ間の情報共有、警察への届け出まで、現役コンビニオーナーが現場の実態と見えないコストを解説します。
カスハラ対策が義務化|コンビニに必要なのはスタッフを一人にしない仕組み【第176話】
2026年10月からカスハラ対策が義務化。コンビニ現場でスタッフを一人にしないための対応基準、責任者への連絡体制、緊急ボタンや避難ルールなど、現場で必要な対策を解説します。
POSAカード詐欺、店員はどこまで止められる?|コンビニ現場で感じた「声かけ」の限界【第174話】
POSAカード詐欺をコンビニ現場から考察。違和感のある購入への声かけ、被害者が相談できない理由、銀行との防犯体制の違い、スタッフへの表彰や報奨金、そして自己防衛の重要性を現役オーナーが解説します。
コンビニ客離れ?お客様はどこへ行ったのか【第173話】
コンビニの客数が伸びにくい理由を、スーパー・ドラッグストア・ネット通販などとの競争から解説。便利さの選択肢が増える中、アパレルやPayPayなど新しい来店理由について現役コンビニオーナーが考えます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました