- はじめに
- 1.まず、自分の現在の生活費を知る
- 2.今の30万円は、30年後も30万円ではない
- 3.そもそもインフレは止まるのか?
- 4.年金も増えるが、物価と同じようには増えない
- 5.個人事業主のコンビニオーナーは、年金の土台が違う
- 6.個人事業主には「定年がない」という強みがある
- 7.「いつまでも働く」を老後計画にしてはいけない
- 8.老後資金は「年金+事業収入+資産収入」で考える
- 9.第135話で考えた「資産形成」がここにつながる
- 10.新NISAを活用して資産形成をする
- 11.例えば、夫婦で2,400万円の資産を作ったら
- 12.全世界株の過去の実績から考える
- 13.老後資金は「いくら貯めるか」ではなく「どう生活するか」
- 14.「今の30万円」を未来から逆算する
- 15.未来に100%備えることはできない
- 16.未来を見据えて、今できることは数多くある
- 17.「働かなくてもいい」という選択肢を作る
- おわりに
はじめに
コンビニオーナーとして、毎日真面目に働く。
売上を伸ばす。
スタッフを育てる。
経費を管理する。
店舗を守る。
現役時代は、目の前の経営に追われていると、老後のことはどうしても後回しになりがちです。
しかし、コンビニオーナーだからこそ、早い段階から考えておきたい問題があります。
それが、
老後資金です。
個人事業主としてコンビニを経営している場合、会社員のように厚生年金が上乗せされるとは限りません。
一方で、個人事業主には会社員のような定年がないという大きなメリットもあります。
だからこそ、
「働き続けられるから大丈夫」
ではなく、
「働けなくなっても生活できる状態をどう作るか」
まで考えておく必要があると私は思っています。
第135話では、インフレや人件費上昇によってコンビニ経営の利益が圧迫される可能性と、現役時代から資産形成を考える必要性について書きました。
今回は、その先にある老後について考えてみます。
コンビニオーナーの老後資金は大丈夫なのか?
1.まず、自分の現在の生活費を知る
老後資金を考えるとき、いきなり、
「2,000万円必要」
「3,000万円必要」
と考える必要はありません。
まずやるべきことは、
自分の家庭が現在いくらで生活しているのかを把握すること
です。
家庭によって生活費は大きく違います。
住宅ローンがあるのか。
持ち家なのか賃貸なのか。
車を何台所有しているのか。
旅行や趣味にどれくらいお金を使うのか。
子どもへの援助があるのか。
医療費や介護費用をどの程度考えるのか。
価値観によっても必要な生活費は変わります。
だからこそ、老後資金の出発点は、
「自分の家庭は、今いくらあれば生活できているのか」
を知ることだと思います。
2.今の30万円は、30年後も30万円ではない
ここで重要なのが、インフレです。
例えば、現在の生活費が月30万円だとします。
仮に物価が毎年2%ずつ上昇した場合、30年後には現在の30万円と同じ生活水準を維持するために、
約54.3万円
が必要になります。
これは、
30万円 × 1.02³⁰
という単純な試算です。
もちろん、30年間ずっと2%のインフレが続くと予測しているわけではありません。
実際の物価上昇率は毎年変わります。
重要なのは、
「現在30万円で生活できているから、老後も30万円あれば大丈夫」
とは限らないということです。
老後資金を考えるときには、現在の生活費だけでなく、将来の購買力まで考える必要があります。
3.そもそもインフレは止まるのか?
では、インフレはこの先も続くのでしょうか。
未来は誰にも分かりません。
インフレ率が下がる可能性もあります。
一時的に物価が下落することもあるでしょう。
逆に、想定以上の物価上昇が続く可能性もあります。
ここで重要なのは、
「インフレ率が下がること」と「物価が元の水準に戻ること」は別だということです。
例えば、100円の商品が110円になったとします。
その後、インフレ率が0%になったとしても、110円の商品が100円に戻るとは限りません。
110円のまま、価格上昇が止まる可能性もあります。
つまり、
インフレ率が低下しても、一度上がった物価水準は簡単には元に戻らない
ということです。
世界的に見ても、インフレ率は上下します。
デフレになる時期もあります。
しかし、長期的な生活設計を考えるなら、
物価水準が将来上昇する可能性を無視することはできません。
だから私は、
「インフレが止まるか」ではなく、「インフレが続いても困らないか」
を考えることが重要だと思っています。
4.年金も増えるが、物価と同じようには増えない
「インフレになれば年金も増えるのでは?」
確かに、公的年金は賃金や物価の変動に応じて毎年度改定されます。2026年度は、国民年金の基礎年金が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%引き上げられました。
ただし、
年金が物価上昇率と完全に同じ割合で増えるわけではありません。
年金には「マクロ経済スライド」という仕組みがあり、少子高齢化などを背景に、年金額の伸びを調整する仕組みがあります。2026年度も基礎年金について0.2%、厚生年金の報酬比例部分について0.1%の調整が行われています。
つまり、
物価が上がる
↓
年金も改定される
↓
しかし、物価上昇と同じだけ増えるとは限らない
ということです。
そのため、老後資金を考えるときには、
「年金も増えるから大丈夫」
と単純に考えるのではなく、
「将来の生活費に対して、年金でどこまでカバーできるのか」
を見る必要があります。
5.個人事業主のコンビニオーナーは、年金の土台が違う
コンビニオーナーには、個人事業主として店舗を経営している人もいます。
個人事業主の場合、会社員のように厚生年金が積み上がるとは限りません。
2026年度の老齢基礎年金の満額は、
月70,608円
年間では、
84万7,300円
です。これは40年間保険料を納付した場合の満額です。
夫婦2人とも満額なら、
月約14万1,000円
です。
もちろん、実際の受給額は納付期間などによって変わります。
また、会社員時代に厚生年金へ加入していたオーナーであれば、その加入期間や給与・賞与などに応じた老齢厚生年金が上乗せされます。
日本年金機構が示す2026年度の「標準的な年金額」は、平均的な収入で40年間就業した場合の夫婦2人分の基礎年金を含めて月23万7,279円ですが、これはあくまでモデルケースであり、すべての人に当てはまる金額ではありません。
つまり、
コンビニオーナーの老後の年金額は、それまでの働き方によって大きく変わる
ということです。
だからこそ、自分自身の「ねんきんネット」などで将来の年金見込み額を確認しておくことが重要です。
6.個人事業主には「定年がない」という強みがある
ここまで読むと、
「個人事業主のコンビニオーナーは老後に不利なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、私はそうは考えていません。
個人事業主には大きなメリットがあります。
それが、
定年がないことです。
会社員のように、一定年齢になったから必ず仕事を辞めなければならないわけではありません。
健康で店舗を経営できるのであれば、65歳、70歳になっても働き続けることができます。
これはコンビニオーナーにとって大きな強みです。
ただし、
「働けること」と「老後資金が十分にあること」は別の問題です。
7.「いつまでも働く」を老後計画にしてはいけない
「定年がないから、70歳まで働けばいい」
そう考えることもできます。
しかし、30年後も今と同じように働ける保証はありません。
健康状態が変わるかもしれません。
人手不足がさらに深刻になるかもしれません。
コンビニ業界の仕組みそのものが変わるかもしれません。
本部との契約やビジネスモデルも変化するでしょう。
だから私は、
「働けるから大丈夫」ではなく、「働けなくなっても生活できる状態」を作っておく
ことが重要だと考えています。
未来に100%備えることはできない。それでも今できることがある
8.老後資金は「年金+事業収入+資産収入」で考える
私は、コンビニオーナーの老後について、
年金だけで生活する
という考え方ではなく、
年金+事業収入+資産収入
という3本柱で考えることが重要だと思っています。
① 公的年金
国民年金や厚生年金。
② 事業収入
65歳以降もコンビニ経営を続けることで得られる収入。
③ 資産収入
NISAなどを活用して形成した株式・投資信託などから得られる配当や運用益。
この3つを組み合わせることで、老後の収入源を分散できます。
9.第135話で考えた「資産形成」がここにつながる
第135話では、
「真面目に働くだけではなく、まだ余力があるうちに資産を作る」
という考え方を書きました。
第136話では、その理由を老後資金という視点から考えています。
現役時代はコンビニ経営から収入を得る。
その一方で、利益の一部を長期的な資産形成に回す。
そして老後には、
年金+資産収入
を組み合わせる。
まだ働けるのであれば、
年金+事業収入+資産収入
という形にする。
こうしておけば、老後の生活を本業だけに依存しなくて済みます。
10.新NISAを活用して資産形成をする
老後資金を準備する方法の一つとして、私は新NISAを活用した長期的な資産形成を検討する価値があると考えています。
2024年からのNISAでは、年間投資枠が最大360万円、非課税保有限度額が1,800万円となっています。成長投資枠はそのうち1,200万円が上限です。
NISAの大きなメリットは、一定の投資について運用益が非課税になることです。
もちろん、
NISAを使えば必ず利益が出るわけではありません。
株式や投資信託には価格変動があります。
だからこそ、短期的な利益だけを狙うのではなく、
長期・分散・積立
などを意識しながら、自分のリスク許容度に合った方法で資産形成を考えることが重要です。
11.例えば、夫婦で2,400万円の資産を作ったら
第135話でも取り上げた例を、老後資金という視点から考えてみます。
例えば、夫婦それぞれ1,200万円、合計2,400万円を資産形成したとします。
仮に平均5%の配当収入が得られた場合、
2,400万円 × 5% = 年間120万円
です。
月にすると、
約10万円
になります。
もちろん、これはあくまで仮定です。
5%の配当利回りが将来も維持される保証はありません。
減配や株価下落などのリスクもあります。
また、配当を受け取り続ける方法だけが資産形成ではありません。
重要なのは、
「老後に年金以外の収入源があったらどうか」
と考えることです。
例えば、夫婦で国民年金を満額受給した場合の約14万円に、資産から月10万円の収入が加われば、
約24万円
になります。
さらに、まだ店舗経営を続けられるのであれば、そこに事業収入が加わります。
重要なのは、
「年金だけで足りるか」ではなく、「不足する部分をどう補うか」
という考え方です。
12.全世界株の過去の実績から考える
長期的な資産形成を考えるとき、世界全体の経済成長に投資する方法もあります。
例えば、全世界株式の代表的な指数であるMSCI ACWIは、過去20年間に高い成長をしてきました。
ただし、
過去の実績が将来も続く保証はありません。
過去20年間のリターンを、そのまま将来の期待利回りとして使うべきではありません。
むしろ、
「世界経済の成長を長期的に取り込む」という考え方
の一つとして捉えることが重要だと思います。
老後資金を考えるときも、
「毎年○%で増える」
と決めつけるのではなく、複数のケースを想定しておく。
これが大切です。
13.老後資金は「いくら貯めるか」ではなく「どう生活するか」
老後資金というと、
「2,000万円必要」
「3,000万円必要」
という数字が先に出てきます。
しかし、本当に重要なのは金額だけではありません。
まず、
老後にどんな生活をしたいのか。
そして、
その生活には毎月いくら必要なのか。
次に、
年金はいくら受け取れそうなのか。
さらに、
不足する金額を資産や事業収入でどう補うのか。
この順番で考えることが大切です。
14.「今の30万円」を未来から逆算する
例えば現在、月30万円で生活しているとします。
まず30万円を基準にします。
そこから、
30年後にはいくら必要なのか。
年金はいくら見込めるのか。
毎月いくら不足するのか。
その不足分を何で補うのか。
を考えます。
老後資金は、60歳になってから突然作るものではありません。
今の生活費を把握し、未来の生活費を考え、今から少しずつ準備する。
これが重要です。
15.未来に100%備えることはできない
ここまで考えても、未来を100%予測することはできません。
30年後の物価がいくらになっているのか。
年金制度がどうなっているのか。
コンビニ業界がどのように変化しているのか。
自分自身が何歳まで健康に働けるのか。
誰にも分かりません。
だからといって、
「未来が分からないから何もしない」
というわけにはいきません。
むしろ、未来が分からないからこそ、
今できることを少しずつ始めることが重要なのだと思います。
16.未来を見据えて、今できることは数多くある
現在の生活費を把握する。
将来の生活費をインフレ率別に考える。
自分が受け取れる年金額を確認する。
老後に不足する金額を計算する。
本業以外の収入源を作る。
新NISAなどを活用して長期的な資産形成を始める。
健康を維持して、できるだけ長く働ける状態を作る。
そして、コンビニ経営そのものについても、将来起こり得る変化を想定しておく。
これらは、未来を正確に予測するためのものではありません。
未来がどうなっても、できるだけ困らないようにするための準備です。
17.「働かなくてもいい」という選択肢を作る
コンビニオーナーには、定年がないという強みがあります。
働ける限り働くこともできます。
しかし、
「働かなければ生活できない」
状態と、
「働いてもいいし、働かなくてもいい」
状態では、人生の自由度が大きく違います。
資産形成の目的は、単純にお金を増やすことだけではありません。
将来の選択肢を増やすこと
でもあります。
65歳になっても働く。
70歳まで働く。
仕事量を減らす。
店舗を譲渡する。
引退する。
どの選択をするかは、そのときの自分が決めればいい。
そのために、
選択できる状態を作っておく。
私は、これが老後資金を準備する大きな意味だと思っています。
おわりに
コンビニオーナーの老後資金を考えるとき、
「国民年金だから不安」
「定年がないから大丈夫」
このどちらか一方だけで考えるのではなく、
年金+事業収入+資産収入
という複数の柱で考えることが重要だと思います。
そして、最初にやるべきことは、
現在の生活費を把握すること。
現在30万円で生活しているなら、30年後も30万円で同じ生活ができるとは限りません。
仮に年2%のインフレが30年間続けば、現在30万円の生活水準を維持するためには約54万円が必要になります。
これは未来を予言しているわけではありません。
だからこそ、
「未来はいくらになるか」を当てるのではなく、「未来がどうなっても困らないように準備する」
ことが大切です。
未来に対して100%備えることはできません。
インフレがどうなるのかも分かりません。
年金制度がどう変わるのかも分かりません。
コンビニ業界がどう変化するのかも分かりません。
自分自身が何歳まで働けるのかも分かりません。
でも、
未来を見据えて、今できることは数多くあります。
生活費を把握する。
年金を確認する。
インフレを考える。
本業の利益を守る。
資産形成を始める。
新NISAを活用する。
そして、働けるうちに少しずつ将来の選択肢を増やしていく。
未来を予測することはできなくても、
未来への準備は、今日から始めることができます。
第135話で書いた「資産形成」は、単にお金を増やすためだけのものではありません。
それは、
将来、自分の働き方や生き方を自分で選ぶための準備
でもあります。
真面目に働く。
そして、その利益を未来のためにも使う。
私は、これからのコンビニオーナーには、そんな考え方も必要になってくるのではないかと思っています。
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