「国選弁護人から電話が来た」|コンビニ万引きで奪われるのは商品だけではない【第141話】

国選弁護人から電話が来た」|コンビニ万引きで奪われるのは商品だけではない【第141話】 コンビニ経営

こんにちは、コンビニ大家です。

コンビニを10年以上経営していると、現場では本当にいろいろなことが起こります。

お客様同士のトラブル。

クレーム。

従業員の問題。

商品の破損。

そして、私が特に問題だと感じているのが、

「万引き」

です。

「1,000円の商品を盗まれただけ」

そう思われるかもしれません。

しかし、コンビニ経営の現場にいると、万引きによって失われるのは商品だけではないことが分かります。

防犯カメラを確認するオーナーの時間。

対応する従業員の時間。

警察に対応する時間。

そして、刑事事件として扱えば、警察官の時間も使われます。

さらに、その背景には社会全体のコストがあります。

今回は、過去に私が経験した、国選弁護人から示談の申し入れを受けた万引き事件についてお話しします。


コンビニは「薄利多売」のビジネス

コンビニ経営は、売上が大きくても、そのすべてが利益になるわけではありません。

店舗や契約条件によって異なりますが、最終的にオーナー側に残る利益は、売上に対して3~6%程度になるケースがあります。

例えば、最終利益率を5%として単純計算すると、

1,000円の利益を生み出すためには2万円の売上が必要

ということになります。

逆に言えば、

1,000円の商品を万引きされた場合、その1,000円を利益で取り戻すには約2万円の売上が必要

という計算になります。

もちろん、実際の損失は商品の原価やチャージ、経費などによって変わります。

それでも、

「1,000円くらいなら大したことない」

とは言えません。

コンビニは薄利多売のビジネスだからこそ、少額の損失でも積み重なれば大きな問題になります。

そして、私が本当に問題だと感じているのは、商品代金だけではありません。


本当に大きいのは「時間」の損失

万引きが発生すると、まず防犯カメラを確認することになります。

いつ盗まれたのか。

誰が来店したのか。

どの商品を手に取ったのか。

どの売場にいたのか。

商品を持ったまま店外へ出たのか。

場合によっては、数時間分の映像を確認することになります。

コンビニオーナーには、売上管理、発注、採用、シフト管理、教育、設備管理など、日々やらなければならない仕事があります。

そこに万引き事件が起きると、通常業務とは別の仕事が突然増えます。

防犯カメラを確認する。

警察に説明する。

必要な情報を整理する。

現場確認に対応する。

つまり、

万引き犯に奪われるのは、商品だけではありません。

オーナーの時間も奪われます。


警察官の時間も使われる

さらに、万引きを刑事事件として扱えば、警察にも多くの時間と手間がかかります。

店舗からの通報。

現場確認。

事情聴取。

防犯カメラの確認。

証拠の確認。

犯人の捜査。

その後の手続き。

もちろん、犯罪を取り締まることは警察の重要な仕事です。

被害に遭った店舗が通報することを、遠慮する必要もありません。

それでも現場のオーナーとしては、

「1,000円の商品をめぐって、これだけ多くの人の時間が使われるのか」

と思うことがあります。

警察官も仕事として対応していますが、その人件費を含めた社会的なコストは、最終的には私たち国民が負担しています。

だから私は、ときどき、

「警察の方に、ここまで時間を使ってもらって申し訳ないな」

と感じることがあります。


それでも、万引きを放置するわけにはいかない

では、

「面倒だから見逃せばいいのか」

というと、もちろん違います。

万引きを放置すれば、

「この店なら盗んでも大丈夫」

と思われる可能性があります。

同じことが繰り返されるかもしれません。

他のお客様にも迷惑がかかります。

従業員にも負担がかかります。

店舗を守るためには、一定の線引きが必要です。

だから私は、

万引きは金額だけで判断するべきではない

と考えています。


一番印象に残っている万引き事件

これまでコンビニを経営してきた中で、特に印象に残っている事件があります。

ここでは個人が特定されないよう、詳しい情報は控えます。

その人物は、日本語学校に通っていたベトナム人男性でした。

聞いた話では、実家は比較的裕福な家庭だったそうです。

だからこそ、私はこの事件について、余計に理解できない部分がありました。

もちろん、家庭の経済状況だけで、その人の行動を判断できるわけではありません。

それでも、

「なぜ、そこまでして万引きをしたのだろう」

という疑問は残りました。

ある日、その男性が酒に酔った状態で当店に来店しました。

そして、万引きをしたのです。


店を出たところで現行犯

男性は商品を持ったまま店舗を出ました。

そこで私は、現行犯として確保しました。

「カバンの中を見せてください」

そう伝えると、

「私は何も取っていない」

と言います。

さらに、こちらに殴りかかるような素振りまで見せました。

この時点で、

「これは自分たちだけで対応する問題ではない」

と判断しました。

すぐに警察へ連絡しました。


警察の取り調べで自供

その後、警察官が数人来店し、本人から事情を聞きました。

最初は否認していましたが、取り調べの中で最終的には万引きを認めました。

その場で逮捕され、あとは警察に任せることになりました。

ここまででも、店舗側にはかなりの時間と労力がかかっています。

防犯カメラの確認。

警察への説明。

現場での対応。

従業員への説明。

そして、通常の店舗業務。

万引きは、

商品だけでなく、店舗の時間まで奪う犯罪

だと改めて感じました。


数日後、10人ほどで店に来た

ところが、事件はこれで終わりませんでした。

数日後、その男性の知人と思われる人たちが、10人ほどで店にやってきました。

そして、

「本人は酔っぱらっていただけです」

「許してほしい」

という話をしてきました。

私は、その言葉を聞いて、正直かなり違和感を覚えました。


「酔っていれば何をしてもいいのですか?」

私は、その人たちにこう伝えました。

「それは裏を返せば、酔っぱらっていれば何をしてもいいということですか?」

もちろん、私はお酒を飲んだ人すべてを悪く言いたいわけではありません。

しかし、

「酔っていたから許してほしい」

という理由だけでは、今回の件を簡単に許すことはできませんでした。

商品を盗んだことは事実です。

さらに、店を出たところで確保された際には、

「何も取っていない」

と否認し、こちらに殴りかかるような素振りまで見せています。

その状況で、

「酔っぱらっていただけだから許してください」

と言われても、私としては納得できません。

「これ以上話しても仕方がない」

と伝え、その人たちには帰ってもらいました。


その後、国選弁護人から電話が来た

それから数日後、私のところに電話がかかってきました。

電話の相手は、

国選弁護人でした。

内容は、

「本人は非常に反省しています」

そして、

「示談にしていただけないでしょうか」

というものでした。

実は、私は過去にも数回、万引き事件をきっかけに国選弁護人から電話を受けたことがあります。

内容は、

本人が反省している。

被害店舗と示談したい。

被害を弁償したい。

という話です。


示談になると、何が変わるのか

刑事事件になったからといって、必ず有罪判決を受けるわけではありません。

示談や被害弁償などは、その後の刑事処分を判断する際の事情の一つになります。

そして、不起訴となれば前科はつきません。

そのため、本人側からすると、

「何とか店舗と示談したい」

ということになります。

ただし、示談したから必ず不起訴になる、あるいは前科がつかなくなるという意味ではありません。

最終的な刑事処分は、事件の内容や証拠、本人の状況などを踏まえて判断されます。


店舗側にも被害がある

では、店舗側は何を考えるのでしょうか。

当然ですが、

「商品代金だけ返してくれれば、それで終わり」

というわけではありません。

防犯カメラを確認する。

警察へ連絡する。

事情を説明する。

現場確認に対応する。

従業員にも説明する。

通常業務を止めて対応する。

これだけの負担が発生しています。

そのため、示談の話になれば、

商品代金や、事件への対応に伴って発生した費用などについて、被害弁償を求めることがあります。

ただし、実際にどこまで請求できるかは、事件の内容や法的な根拠によって変わります。

何でも自由に請求できるというものではありません。


ところが、現実には「お金がない」

ここが、さらに難しいところです。

弁護士から、

「本人は非常に反省しています」

と言われても、

「では、被害を弁償してください」

となると、

「お金がありません」

ということがあります。

そうなると、店舗側の選択肢も限られます。

現実的には、

商品代金を回収する。

あるいは、

示談に応じない。

という判断になることがあります。

もちろん、事件の内容や本人の反省、被害弁償の状況などによって判断は変わります。


私が弁護士に聞いたこと

今回の事件で、私は国選弁護人に一つ質問しました。

「過去に同じような事件は起こしていませんか?」

すると、

「数回の前科があります」

という回答でした。

私は、それを聞いて、簡単に示談に応じることはできないと判断しました。

そこで、

「今回は示談には応じません」

と伝えました。

私自身の基本的なスタンスとしては、

前科があるなど、悪質性や再犯性が高いと考えられるケースについては、より厳正に対応する

という考えです。

一方で、

初犯である。

本人が深く反省している。

被害弁償がきちんと行われる。

今後、二度と繰り返さないための対応がある。

こうした事情があれば、

「そこまで厳しい対応をする必要があるのか」

と考えることもあります。

すべての万引きを同じ基準で判断することはできません。

だからこそ、事件ごとに事実を確認して判断する必要があると思っています。


国選弁護人から聞いた「その後」

その後、弁護士からは、

「おそらく強制送還になる可能性が高い」

という趣旨の説明を受けました。

ただし、これはあくまで当時、私が弁護士から聞いた説明です。

実際に退去強制の対象になるか、どのような処分になるかは、犯罪の内容や刑事処分、在留資格などによって異なります。

私は、その後の詳しい結果までは知りません。


「反省しています」だけでは判断できない

この経験を通して、私は改めて考えました。

「本人は非常に反省しています」

これは大切な言葉です。

しかし、店舗側からすると、

反省していると言われれば、それだけですべてを許せるわけではありません。

その前に、

商品を盗まれています。

店舗が対応しています。

防犯カメラを確認しています。

警察にも時間を使ってもらっています。

従業員にも負担がかかっています。

そして今回は、後から複数の前科があることも分かりました。

だから私は、

「反省しています」という言葉だけではなく、その後の行動を見る必要がある

と思っています。


コンビニオーナーは犯人を裁く人ではない

一方で、私たちオーナーは犯人に刑罰を与える立場ではありません。

どのような刑事処分にするかを決めるのも店舗ではありません。

だからこそ、

「絶対に許さない」

という感情だけで判断するのではなく、

事実を確認する。

警察に適切に届ける。

必要な証拠を提供する。

弁護士から申し入れがあれば内容を聞く。

そのうえで、

店舗として示談に応じるのか、応じないのかを判断する。

私は、この距離感が大切だと思っています。


万引きで本当に失われているもの

ここまで書いてきましたが、私が一番伝えたいのは、

「万引きは商品代金だけの問題ではない」

ということです。

仮に1,000円の商品を盗まれたとしても、利益率5%なら単純計算で約2万円の売上が必要になります。

しかし、それだけではありません。

防犯カメラを確認する。

警察に連絡する。

現場確認に対応する。

事情を説明する。

弁護士と話をする。

示談について判断する。

場合によっては従業員にも対応してもらう。

そこには大量の「時間」が使われています。

そして、その時間は誰かのものです。

オーナーの時間。

従業員の時間。

警察官の時間。

弁護士の時間。

そして、それらを支える社会のコスト。

もちろん、犯罪を取り締まることは必要です。

被害を受けた店舗が警察に届け出ることも当然です。

だから、

「警察に申し訳ないから万引きを見逃す」

という考え方にはなりません。

ただ、

「たった1,000円の商品を盗んだことで、これだけ多くの人の時間が使われる」

という現実は、もっと知られてもいいのではないかと思っています。


まとめ

コンビニは薄利多売のビジネスです。

1,000円の万引きでも、利益率5%で単純計算すれば、その損失を利益で取り戻すには約2万円の売上が必要になります。

しかし、本当の負担は商品代金だけではありません。

防犯カメラを確認するオーナーの時間。

対応する従業員の時間。

現場確認や捜査をする警察官の時間。

そして、社会全体のコスト。

万引きは、商品だけではなく、人の時間まで奪っています。

商品を盗まれるだけなら、損失は数字で計算できます。

でも、本当に大きな損失は、その後に失われていく**「人の時間」**なのかもしれません。

オーナーの時間。

従業員の時間。

警察官の時間。

そして社会の時間。

1,000円の万引きでも、失われているものは1,000円ではありません。

コンビニ経営は、売上や利益だけでは語れません。

毎日の現場には、数字だけでは表せない出来事があります。

そして時には、

「まさか自分のところに国選弁護人から電話が来るとは……」

と思うようなことまで起こります。

それもまた、

10年以上コンビニを経営してきた私が経験した、コンビニ経営のリアルです。

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