こんにちは、コンビニ大家です。
セブン‐イレブンには、加盟店向けに「オーナー相談部」という部署があります。
年に一度ほど店舗を訪問し、オーナーの悩みや意見を聞いてくれる部署です。
数年前、その担当者と「接客」について話をする機会がありました。
当時、セブン‐イレブンでは接客コンテストを開催するなど、接客品質の向上に力を入れていました。
私は、その方針そのものを否定するつもりはありません。
企業が限られた経営資源をどこへ投資するかは、一つの経営判断です。
未来がどうなるかは、誰にも分かりません。
だからこそ、企業は挑戦と改善を繰り返しながら前へ進んでいく必要があります。
ただ、その話を聞きながら、私には一つだけ気になることがありました。
それは、
「接客の質を高める前に、働く人への待遇や環境をもっと大切にするべきではないか」
ということです。
「もっと良い接客を」と言うなら、まず何をするべきか
接客をするのは、本部社員ではありません。
毎日店舗に立ち、お客様と向き合っているスタッフです。
そこで私は、担当者に率直に質問しました。
「今まで以上の接客を求めるのであれば、まず待遇や労働環境を改善することが先ではありませんか?」
すると、
「やりがいがあれば、人は動きます。」
という話がありました。
私は、やりがいで仕事を頑張る人がいること自体は理解しています。
私自身も、コンビニ経営にやりがいを感じています。
しかし、
「やりがいがあるから、待遇はそこまで重要ではない」
という考え方には、違和感があります。
私は、
やりがいを待遇の代わりにしてはいけない
と思っています。
やりがいは会社が押し付けるものではない
仕事にやりがいを感じるかどうかは、人それぞれです。
お客様から「ありがとう」と言われることに喜びを感じる人。
仕事を覚えて成長することが楽しい人。
仲間と働くことが好きな人。
将来のために経験を積みたい人。
いろいろな価値観があります。
だから私は、
やりがいは会社が与えるものではなく、本人が仕事を通じて見つけるもの
だと考えています。
会社がやるべきなのは、
「この仕事にはやりがいがあります。」
と説明することではありません。
まず、
安心して働ける環境をつくること。
そして、
仕事に見合った対価を支払うこと。
その上で、スタッフ自身が仕事にやりがいを感じてくれれば、それが一番だと思っています。
必要な仕事なら、きちんと給料を払う
私は、スタッフに仕事をお願いするときに、いつも考えることがあります。
「これは本当に必要な仕事なのか?」
そして、
「必要なら、その仕事に人件費をかける価値があるのか?」
ということです。
例えば、店頭のPOP作成など、本部社員からスタッフへお願いされることがありました。
スタッフの中には、
「やります。」
と快く協力してくれる人もいます。
それ自体はありがたいことです。
しかし私は、
「スタッフがやってくれるから、無償でお願いしていい」
とは考えません。
本当に店舗に必要な仕事であれば、
仕事としてお願いし、その時間には給料を支払う。
これが経営者として当然だと思っています。
反対に、
「そこまでしてやる必要がない」
「人件費をかけるほどの効果がない」
のであれば、
そもそもお願いしません。
人件費は「コスト」だけではなく投資
スタッフに給料を支払うということは、単純に経費が増えるということではありません。
その仕事によって、
売上が増える。
作業効率が上がる。
接客品質が上がる。
スタッフが成長する。
離職率が下がる。
こうした効果が期待できるのであれば、人件費は会社にとって必要な投資です。
例えば、スタッフの人件費が時給2,500円だとします。
その場合、少なくとも2,500円以上の価値を生み出してもらわなければ、経営としては成り立ちません。
仮に粗利率を約30%とすれば、2,500円の粗利を生み出すには約8,300円の売上が必要になります。
さらに、人件費以外の経費や利益まで考えれば、
「その仕事にどれだけの売上・粗利への貢献があるのか」
まで考える必要があります。
私は、単純に
「人件費を削れば利益が増える」
とは考えていません。
必要な仕事には、必要な人件費をかける。
そして、その人件費に見合う成果を生み出す。
これが経営だと思っています。
「やりがい」で無償の仕事を増やさない
経営者として、最も避けなければならないのは、
「やりがいがあるから、これくらいお願いしてもいいよね」
という考え方だと思っています。
「お店のためだから。」
「お客様のためだから。」
「経験になるから。」
「みんな頑張っているから。」
こうした言葉は、一見すると前向きに聞こえます。
しかし、それが続けば、
本来は仕事として対価を支払うべき業務まで、
「善意」や「やりがい」でお願いすることになってしまいます。
私は、それは正しい経営ではないと思っています。
スタッフが自発的に協力してくれることは、本当にありがたいことです。
だからこそ、その善意に甘えてはいけない。
経営者は、そこを線引きする責任があります。
「お願いする」と「仕事として依頼する」は違う
私はスタッフにお願いするとき、
「これは仕事としてお願いしているのか?」
「それとも、単なる善意に頼っているのか?」
を考えるようにしています。
仕事として必要なら、給料を払う。
必要なければ、お願いしない。
費用対効果が低ければ、やり方を変える。
これだけです。
「やってくれるからお願いする」
ではありません。
「会社として必要だから、適正な対価を払ってお願いする」
という考え方です。
これはスタッフを大切にすることでもありますが、同時に会社を守ることでもあります。
同調圧力を生まないことも経営者の仕事
私は、
「やりがい」
「愛社精神」
「お客様のため」
という言葉そのものを否定しているわけではありません。
問題なのは、それらが、
待遇改善や労働環境の改善を後回しにする理由になってしまうこと
です。
「会社のためだから。」
「お客様のためだから。」
「みんな頑張っているから。」
そんな空気が強くなると、
「自分だけ断るのは申し訳ない」
「頑張らなければいけない」
と感じるスタッフも出てきます。
私は、こうした同調圧力を生まないことも経営者の仕事だと思っています。
頑張りたい人は頑張ればいい。
そこまで求めない人は、決められた仕事をきちんとやればいい。
それぞれの価値観を尊重できる職場の方が、長く働いてもらえる
と私は考えています。
インフレ時代に「お願いする経営」は難しくなる
今は、物価も最低賃金も上昇しています。
働く人にとっては、
食費。
家賃。
光熱費。
社会保険料。
さまざまな負担が増えています。
そんな中で、
「やりがいがあれば頑張ってくれる」
という考え方だけでは、人材を確保することは難しくなっていくと思います。
働く人にとって、
給料は生活そのものに直結するからです。
だからこそ経営者は、
待遇を考える。
労働環境を考える。
人件費を予算に組み込む。
そして、その人件費に見合う仕事を設計する。
これまで以上に、こうした経営が重要になると私は考えています。
私が会社で大切にしていること
私自身も経営者です。
だから、スタッフにお願いする仕事はたくさんあります。
しかし、
「会社のために頑張ってほしい。」
という言葉だけで動かそうとは思いません。
まず会社側が、
安心して働ける環境をつくる。
適正な給料を支払う。
法令を守る。
必要な教育をする。
無理な仕事を押し付けない。
その責任を果たした上で、
スタッフが自ら、
「この仕事をもっと良くしたい」
と思ってくれたら、それが一番うれしいことです。
私は、それが本当の意味での「やりがい」だと思っています。
会社が提供するのは「やりがい」ではなく「土台」
私は10年以上コンビニを経営してきて、
会社がスタッフに提供するべきものは、
「やりがい」そのものではない
と考えるようになりました。
会社が提供するのは、
安心して働ける土台です。
適正な待遇。
働きやすい環境。
必要な教育。
公平なルール。
そして、仕事に対する正当な評価。
その土台があるからこそ、
人は安心して仕事に取り組めます。
安心できるから挑戦できる。
挑戦するから成長できる。
成長するから、仕事が面白くなる。
そして、その先に、
本人が「やりがい」を見つける。
私は、この順番が大切だと思っています。
まとめ
待遇とやりがい。
どちらが先なのか。
私の答えは明確です。
まず待遇と環境。
やりがいは、その先にあるものです。
会社が、
「やりがいを持って働いてください。」
と押し付けるのではありません。
まず会社が責任を果たす。
必要な仕事には給料を支払う。
費用対効果がなければ、その仕事自体を見直す。
そして、スタッフ自身が仕事に価値を感じてくれれば、それが一番です。
私は10年以上コンビニを経営してきました。
その中で強く感じているのは、
経営者の仕事は、スタッフの「やる気」を引き出すことだけではありません。
安心して働ける環境をつくり、その仕事に見合った対価を支払うことです。
やりがいは、会社が押し付けるものではない。
働く人自身が見つけるもの。
それが、私が10年以上コンビニを経営してきてたどり着いた、一つの結論です。
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