コンビニ経営で「やりがい」は押し付けない|現役オーナーが本部へ伝えたこと【第59話】

現場で考えるのは「次の10年」のこと 体験談

こんにちは、コンビニ大家です。

セブン‐イレブンには、加盟店向けに「オーナー相談部」という部署があります。

年に一度ほど店舗を訪問し、オーナーの悩みや意見を聞いてくれる部署です。

数年前、その担当者と「接客」について話をする機会がありました。

当時のセブン‐イレブンでは、接客コンテストを開催するなど、接客品質の向上に力を入れていました。

私は、その方針そのものを否定するつもりはありませんでした。

企業が限られた経営資源をどこへ投資するかは、一つの経営判断です。

未来は誰にも分かりません。

だからこそ企業は、挑戦と改善を繰り返しながら前へ進んでいく必要があります。

しかし、その話を聞きながら、私には一つだけ大きな違和感がありました。


私が感じた違和感

接客をするのは、本部社員ではありません。

毎日店舗でお客様と向き合っている現場のスタッフです。

そこで私は担当者へ、率直に質問しました。

「今まで以上の接客を求めるのであれば、まず待遇や労働環境を改善することが先ではありませんか。」

担当者から返ってきた言葉は、

「やりがいがあれば、人は動きます。」

というものでした。

私は、その言葉を聞いて自分の考えを伝えました。

「やりがいで動く人がいることは理解しています。」

「しかし、それを会社が求めるのは違うのではないでしょうか。」

「私は、それは『やりがいの搾取』につながる危険性があると思います。」

少し緊張した空気になりました。

それでも、この考えだけは譲れませんでした。


やりがいは会社が与えるものではない

もちろん、仕事にやりがいを感じる人はいます。

私自身も、コンビニ経営にやりがいを感じています。

だから私は、やりがいそのものを否定しているわけではありません。

しかし、

やりがいとは、会社が求めるものではなく、本人が仕事を通じて自然に感じるものだと思っています。

本部は加盟店へ仕事をお願いする立場です。

加盟店はスタッフへ仕事をお願いする立場です。

お願いする立場だからこそ、

最初に考えるべきなのは、

「この仕事に見合う対価や環境を提供できているか。」

ではないでしょうか。

私は、経営とはまず働く人への責任を果たすことから始まると考えています。


同調圧力を生まないために

私は、

「やりがい」

「愛社精神」

「お客様は神様」

という言葉そのものを否定しているわけではありません。

問題なのは、それらの言葉が、

待遇改善や労働環境の改善を後回しにする理由になってしまうことです。

「会社のためだから。」

「お客様のためだから。」

「みんな頑張っているから。」

こうした言葉が積み重なると、

現場では同調圧力が生まれます。

本当は改善すべき問題があっても、

声を上げにくくなります。

結果として、

長時間労働。

人手不足。

離職。

こうした問題につながることもあります。

私は、経営者としてそれだけは避けたいと思っています。


働く人への投資が最優先

日本のコンビニや飲食業、小売業は、世界でも高いサービス品質を提供しています。

その品質を支えているのは、

マニュアルではありません。

現場で働く一人ひとりの責任感です。

だからこそ、

新しいサービスを求めるのであれば、

まず働く人への投資が必要です。

待遇を改善する。

教育に投資する。

働きやすい環境を整える。

こうした土台があるからこそ、

安心して仕事に取り組めます。

安心があるから信頼が生まれる。

信頼があるから挑戦できる。

そして、その先に、

やりがいは自然と生まれるものだと思っています。


インフレ時代は「お願いする経営」が通用しにくくなる

私たちが経験してきたデフレ時代は、

「頑張ってください。」

「協力してください。」

というお願いだけでも成り立つ場面がありました。

しかし現在は違います。

最低賃金は上昇し、

物価も上がり、

社会保険料の負担も増えています。

働く人にとっても、

生活そのものが厳しくなっています。

こうしたインフレ経済では、

精神論だけで人は動きません。

だからこそ、

待遇や労働環境という土台が、これまで以上に重要になると私は考えています。


私が会社で大切にしていること

私自身も経営者です。

だから、

スタッフへお願いする場面はたくさんあります。

しかし私は、

「会社のために頑張ってほしい。」

という言葉をできるだけ使わないようにしています。

まず会社が、

安心して働ける環境をつくる。

利益を残し、

待遇を維持する。

法令を守る。

その責任を果たしたうえで、

スタッフが自ら、

「この会社で働いて良かった。」

そう思ってくれたら、それが一番うれしいことです。

私は、それこそが本当の意味での「やりがい」だと思っています。


まとめ

待遇とやりがい。

私の答えは明確です。

待遇が先、やりがいはその結果です。

会社がつくるべきものは、

やりがいではありません。

安心して働ける環境です。

働く人への投資。

適正な待遇。

法令を守れる職場。

その土台があるからこそ、

人は安心して挑戦し、

成長し、

仕事に誇りを持てるようになります。

私は10年以上コンビニを経営してきました。

その中で強く感じるのは、

会社は「やる気」を管理する場所ではなく、

「安心して働ける環境」を整える場所だということです。

その環境があるからこそ、人は自ら成長し、やりがいを見つけていく。

それが、私が経営者としてたどり着いた一つの結論です。

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