セブン‐イレブン・ジャパンは、2030年に既存店平均日販80万円を目標に掲げています。
2026年2月期について、セブン&アイ・ホールディングスは「昨年度は既存店平均日販70万円を達成した」と説明しており、そこから2030年に80万円を目指す方針を示しています。
70万円から80万円へ。
数字だけを見れば、あと10万円です。
しかし、ここで私は一つの疑問を持っています。
現在のセブン‐イレブンは、本当に日販80万円に向けて順調に進んでいるのでしょうか?
そして、もう一つ重要なのが、
その進捗や課題を、加盟店オーナーと十分に共有できているのでしょうか?
日販80万円という目標そのものを否定したいわけではありません。
むしろ、明確な目標があることは大切です。
問題は、その目標に向かって、
本部と加盟店が同じ数字を見て、同じ課題を認識し、一緒に改善できているのか。
今回は、そこを考えてみたいと思います。
- 1.日販80万円までの道のり
- 2.実績を見ると、現在の売上はどうなっているのか
- 3.日販は「客数×客単価」で決まる
- 4.客数を増やすために、まず「なぜ減っているのか」を考える
- 5.「現場に原因がある」と「現場が悪い」は同じではない
- 6.オーナーの自己犠牲で店舗を維持していないか
- 7.本部が取り組むべきなのは「店舗の生産性」ではないか
- 8.客離れを「現場だけの問題」にしてはいけない
- 9.本部も「検証される側」であるべき
- 10.「共創」と言うなら、情報を共有してほしい
- 11.本当に欲しいのは、マスコミ向けのリップサービスではない
- 12.大企業だからこそ、もっと謙虚に現状を見る
- 13.70万円を達成したからこそ、次の10万円を慎ましく考える
- 14.日販80万円は「目的」ではなく「結果」
- 15.本当に必要なのは「現場と一緒に進むこと」
- まとめ|言葉ではなく、行動で「共創」を示してほしい
1.日販80万円までの道のり
2025年度、既存店平均日販は70万円を達成しました。
そして2030年には80万円。
5年間で10万円伸ばすと考えれば、単純計算では年間2万円ずつ日販を伸ばす必要があります。
例えば、均等に伸ばした場合は、
| 年度 | 日販イメージ |
|---|---|
| 2025年度 | 70万円 |
| 2026年度 | 72万円 |
| 2027年度 | 74万円 |
| 2028年度 | 76万円 |
| 2029年度 | 78万円 |
| 2030年度 | 80万円 |
となります。
ただし、この72万円、74万円などは私が単純計算した目安であり、セブン‐イレブンが公表した年度ごとの公式目標ではありません。
重要なのは、2030年の80万円だけを見るのではなく、
「現在、どこまで進んでいるのか」
を毎年検証することです。
2.実績を見ると、現在の売上はどうなっているのか
では、実際の数字を見てみます。
セブン&アイ・ホールディングスが公表している2026年度の月次営業情報では、セブン‐イレブン既存店の前年同月比は次のようになっています。
| 2026年度 | 売上 | 客数 | 客単価 |
|---|---|---|---|
| 3月 | 103.7% | 99.0% | 104.7% |
| 4月 | 99.6% | 97.5% | 102.2% |
| 5月 | 102.7% | 100.8% | 101.9% |
| 6月 | 100.0% | 96.5% | 103.6% |
| 7月 | 100.6% | 97.8% | 102.9% |
| 8月 | 100.3% | 98.1% | 102.2% |
ここで注目したいのが客数と客単価の差です。
6か月のうち、客数が前年を上回ったのは5月だけ。
一方、客単価はすべての月で前年を上回っています。
つまり現在の売上は、
「お客様の数が大きく増えている」というより、「一人当たりのお買い上げ金額が増えることで支えられている」
という構造が見えてきます。
もちろん、これは悪いことではありません。
しかし、2030年に日販80万円を目指すのであれば、
客数をどうするのか?
という問題から目をそらすことはできないと思います。
3.日販は「客数×客単価」で決まる
店舗の日販は、基本的には、
客数×客単価
で決まります。
したがって、日販70万円から80万円へ伸ばすには、
- 客数を増やす
- 客単価を上げる
- あるいは、その両方を実現する
必要があります。
現在の実績を見る限り、客単価には伸びが見られます。
一方で、客数については前年割れの月が続いています。
だからこそ、
「客単価を上げれば80万円になる」だけではなく、「どうすればお客様にもう一度選んでもらえるのか」
を考える必要があるのではないでしょうか。
4.客数を増やすために、まず「なぜ減っているのか」を考える
お客様が来店しなくなった理由には、さまざまな可能性があります。
例えば、
- 商品
- 価格
- 品質
- 品揃え
- 店舗環境
- 接客
- 利便性
- 販促
- 競合店
- 消費者の生活スタイルの変化
などです。
そのため、
「客数が減った=店舗の努力不足」
と単純に結論づけるのは危険です。
本当に必要なのは、
「なぜ客数が減っているのか?」
を一つずつ検証することです。
セブン&アイ自身も、日販80万円に向けたトップライン改善について、「セブン‐イレブンにもう一度行こう」と思ってもらえるような商品や販促、顧客とのコミュニケーションが重要だと説明しています。
であれば、なおさら客数の動きを重要な指標として追いかける必要があります。
5.「現場に原因がある」と「現場が悪い」は同じではない
もちろん、店舗側に原因があるケースもあります。
接客が悪い。
品揃えが悪い。
売場が乱れている。
清掃が行き届いていない。
こうした問題が客数に影響することはあるでしょう。
しかし、
「現場に原因がある」ことと「現場が悪い」ことは同じではありません。
例えば、人手不足によって店舗の接客や売場づくりに十分な時間をかけられなくなったとします。
すると、
人手不足
↓
オーナーがシフトに入る
↓
オーナーの労働時間が増える
↓
店舗運営に追われる
↓
売場改善や接客改善に時間を使えない
↓
店舗の魅力が低下する
↓
客数が減る
という流れが起こる可能性があります。
この場合、
「なぜ現場がその状態になっているのか」
まで掘り下げなければ、本当の原因にはたどり着けません。
6.オーナーの自己犠牲で店舗を維持していないか
コンビニ経営では、問題が起きるとオーナーが自ら穴を埋めることがあります。
スタッフが休めば自分が出る。
人が足りなければ自分が働く。
トラブルがあれば自分が対応する。
店舗運営が大変なら、自分の時間を削る。
一見すると、店舗は問題なく運営されています。
しかし、その裏側でオーナーが長時間働いているだけかもしれません。
つまり、
オーナーの自己犠牲によって、店舗の問題が見えなくなっている可能性があります。
これは、本当の意味での生産性向上ではありません。
7.本部が取り組むべきなのは「店舗の生産性」ではないか
もし日販80万円を本気で目指すのであれば、
「もっと頑張ってください」ではなく、「どうすれば少ない負担で、より良い店舗を作れるのか」
を本部が考える必要があります。
例えば、
- 発注作業の効率化
- 品出し作業の効率化
- 清掃作業の効率化
- レジ業務の効率化
- 売場変更の負担軽減
- 新人教育の効率化
- 店舗オペレーションの標準化
- 少人数でも店舗品質を維持できる仕組み
などです。
実際、セブン&アイは2030年に向けた改革の中で、店舗オペレーションの効率化・省人化や、削減した販管費を加盟店成長・加盟店支援に再投資する方向性を示しています。
これは非常に重要なポイントです。
なぜなら、
現場の生産性を上げることは、客数を取り戻すための土台にもなるからです。
8.客離れを「現場だけの問題」にしてはいけない
客数が減っているのであれば、
「店舗側に問題がある」
と考えるだけでは不十分です。
本部が決めた、
- 商品政策
- 価格政策
- 販促
- 品揃え
- 店舗オペレーション
- システム
- 作業基準
なども含めて検証する必要があります。
もちろん、すべてを本部の責任にする必要もありません。
重要なのは、
店舗側も検証する。
そして、
本部側も検証する。
ということです。
9.本部も「検証される側」であるべき
セブン‐イレブンが大切にしてきた考え方の一つに、
仮説→実行→検証→修正
があります。
これは加盟店だけに求めるものではないはずです。
例えば、
「この商品なら売れる」
という仮説を本部が立てたのであれば、
実際に販売する。
結果を見る。
売れなければ原因を調べる。
そして改善する。
同じことを、本部の政策にも当てはめるべきではないでしょうか。
「この施策で客数が増える」
「この仕組みで店舗の生産性が上がる」
「この政策で加盟店の負担が減る」
そうした仮説を実行したのであれば、
どれだけ改善したのかを数字で検証する。
例えば、
- 客数は何%変わったのか
- 日販は何円変わったのか
- 作業時間は何時間減ったのか
- 店舗の負担はどれだけ減ったのか
まで見ていく。
「やりました」だけでは、検証にはなりません。
結果が出たのか。
ここまで確認して初めて、本当の意味でPDCAを回したと言えるのではないでしょうか。
10.「共創」と言うなら、情報を共有してほしい
阿久津社長は、日販80万円に向けて「共創型」の企業文化を掲げています。
私は、この考え方そのものには賛成です。
ただ、
共創とは、言葉だけで成立するものではありません。
本当に加盟店をビジネスパートナーと考えるのであれば、
- 現在の数字
- 目標までの進捗
- 客数の状況
- 客単価の状況
- 成功した施策
- 失敗した施策
- 失敗した理由
- 次に何を修正するのか
こうした情報を、加盟店と共有していくことが重要ではないでしょうか。
「本部が考える80万円」ではなく、
「本部と加盟店が一緒に目指す80万円」
にする必要があります。
もし既に十分な情報共有が行われているのであれば、その内容を加盟店にも分かる形で示してほしい。
それこそが、「共創」を現場が実感できる一つの方法だと思います。
11.本当に欲しいのは、マスコミ向けのリップサービスではない
ここは、あえて厳しく書きたいと思います。
欲しいのは、マスコミ向けのリップサービスではありません。
「共創します」
「日販80万円を目指します」
「新しいセブンを作ります」
こうした言葉だけでは、店舗は変わりません。
加盟店が本当に求めているのは、
目的に向かって、現場やお客様の声に謙虚に耳を傾け、泥臭くPDCAを回し続けることです。
客数が減った。
では、なぜ減ったのか。
現場に原因がある。
では、なぜその状態になったのか。
生産性が低い。
では、何を変えれば生産性が上がるのか。
施策を実行した。
では、数字はどう変わったのか。
結果が出なかった。
では、何を修正するのか。
ここまで繰り返してこそ、
「共創」
だと思います。
12.大企業だからこそ、もっと謙虚に現状を見る
セブン‐イレブンは、日本を代表するコンビニチェーンです。
だからこそ、本部と現場との距離が広がってしまう危険性があります。
本部から見える景色と、
店舗から見える景色は違います。
そして、
本部の仮説が常に正しいとは限りません。
だからこそ、
もっと謙虚に現状を正しく認識することが必要なのではないでしょうか。
「なぜお客様が来なくなったのか」
「なぜ現場が疲弊しているのか」
「なぜ店舗の生産性が上がらないのか」
「なぜ加盟店が同じ方向を向けないのか」
こうした問いに、本部自身も向き合う必要があります。
13.70万円を達成したからこそ、次の10万円を慎ましく考える
日販70万円を達成したことは、大きな成果です。
しかし、そこで満足してはいけません。
むしろ、
「なぜ70万円になったのか」
を正しく分析することが重要です。
客数が増えたのか。
客単価が上がったのか。
商品力によるものなのか。
価格上昇によるものなのか。
それとも別の要因なのか。
そして、
なぜ客数が伸びていないのか。
ここまで分析しなければ、次の10万円は見えてきません。
14.日販80万円は「目的」ではなく「結果」
私は、日販80万円という目標そのものには反対ではありません。
むしろ、目標は必要です。
ただし、
日販80万円を達成すること自体を目的にしてはいけない
と思っています。
本当に目指すべきなのは、
お客様から選ばれる店舗を作ること。
加盟店が持続的に経営できること。
スタッフが過度な負担なく働けること。
オーナーが自己犠牲を続けなくても店舗を運営できること。
その結果として、
日販80万円が実現する。
この順番ではないでしょうか。
売上だけを追いかけて、
オーナーが疲弊する。
スタッフが疲弊する。
その結果、店舗の魅力が低下する。
そんな状態で日販80万円を達成しても、長続きしません。
15.本当に必要なのは「現場と一緒に進むこと」
2030年の日販80万円。
70万円から80万円まで、あと10万円あります。
しかし、現在の実績を見ると、単純に「毎年2万円ずつ伸ばせばいい」という話ではありません。
客数が伸びているのか。
客単価だけが伸びているのか。
新しい商品が客数増加につながっているのか。
販促が実際の来店につながっているのか。
店舗オペレーションの改善が現場の負担軽減につながっているのか。
一つずつ検証する必要があります。
そして、
本部と加盟店が一緒に考える。
お客様の声を聞く。
数字を見る。
仮説を立てる。
実行する。
検証する。
失敗したら認める。
修正する。
そして、また実行する。
この繰り返しこそが、目標達成への道だと思います。
まとめ|言葉ではなく、行動で「共創」を示してほしい
日販80万円という目標は、分かりやすく、挑戦する価値のある目標だと思います。
しかし、目標を掲げただけでは店舗は変わりません。
実際、2026年度3月から8月までの既存店実績を見ると、売上は前年を上回る月が多い一方、客数は前年割れが続き、客単価が前年を上回っています。
この数字をどう見るのか。
ここからが重要です。
本当に客数を増やす必要があるのか。
なぜ客数が伸びないのか。
現在の施策は、本当にお客様から選ばれる理由になっているのか。
そして、
現場の負担を増やさずに、それを実現できるのか。
必要なのは、
本部と加盟店が同じ数字を見て、同じ課題を共有し、一緒に仮説を立て、実行し、検証し、修正すること。
客数が減っているのであれば、
「現場の努力が足りない」
と簡単に結論づけるのではなく、
なぜ客数が減っているのか。
なぜ現場がその状態になっているのか。
本部の政策や仕組みに問題はないのか。
そこまで掘り下げる必要があります。
もし現場に原因があるのであれば、
なぜオーナーが自己犠牲を払わなければ店舗を維持できないのか。
そこまで検証してほしいと思います。
本部が本当に加盟店をビジネスパートナーとして考えているのであれば、情報を共有し、現場の声を聞き、数字で検証し、結果が出なければ自ら修正する。
それが「共創」ではないでしょうか。
欲しいのは、マスコミ向けのリップサービスではありません。
目的に向かって、
現場やお客様の声に謙虚に耳を傾け、泥臭くPDCAを回し続けること。
70万円を達成したことに満足するのではなく、
「なぜ70万円なのか」
「なぜ客数が伸びないのか」
「何を変えれば80万円に近づくのか」
を、本部と加盟店が一緒になって考える。
そして、間違っていれば修正する。
もっと謙虚に現状を正しく認識し、慎ましく努力する。
私は、それこそが2030年の日販80万円に向かう、本当に必要な経営ではないかと思います。
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