コンビニ経営を考えるとき、最も分かりやすい数字は「売上」です。
売上が伸びた。
客数が増えた。
日販が上がった。
こうした数字を見ると、経営が順調に見えます。
しかし、加盟店オーナーの立場から考えると、本当に重要なのは、
「その売上が、最終的にどれだけ加盟店の利益につながったのか」
ではないでしょうか。
6年前、ローソンはこの考え方を大きく変えました。
本部の経営目標を「売上」から「店利益」へ変更し、さらに全社員の賞与KPIも「店利益」に変更すると発表したのです。
そして現在、その後の実績を見ると、非常に興味深い結果が出ています。
今回は、6年前のローソンの判断を、現在の売上・客数・加盟店利益の実績から「答え合わせ」してみたいと思います。
- 1.KPIとは「会社が何を重要視するか」を示す数字
- 2.6年前、ローソンは「売上」から「加盟店利益」へ軸を変えた
- 3.売上を増やすことと、利益を増やすことは同じではない
- 4.加盟店利益をKPIにすると、本部の見る場所が変わる
- 5.そして6年後、加盟店利益はどうなったのか
- 6.では、売上と客数はどうなったのか
- 7.「売上を増やす」のではなく「利益を増やすために売上を見る」
- 8.セブン・ローソン・ファミリーマートの実績を比較する
- 9.売上だけでは、店舗の実態は分からない
- 10.最低賃金・水道光熱費・物価高は「共通する外部環境」
- 11.「環境が厳しい」だけでは、経営の答えにならない
- 12.加盟店利益を増やすために「何を改善したのか」を見る
- 13.人件費を見るときも「時給」だけでは足りない
- 14.本部社員の評価も「売上」だけではなく「加盟店利益」へ
- 15.数字は「何が起きたか」を教えてくれる
- 16.セブン-イレブンにも、もっと「加盟店利益」を見てほしい
- 17.6年前に示された答え、その先へ
1.KPIとは「会社が何を重要視するか」を示す数字
KPIとは、企業が目標達成のために重要視する指標です。
簡単に言えば、
「会社が何を大切にして経営しているのか」
を表す数字とも言えます。
例えば、
「売上を伸ばす」
ことを最重要KPIにすれば、社員も現場も売上を伸ばすことを優先します。
一方で、
「加盟店利益を伸ばす」
ことをKPIにすれば、考え方は変わります。
売上だけではなく、
- 客数
- 客単価
- 人件費
- 廃棄
- 水道光熱費
- 作業効率
- 商品構成
- 店舗オペレーション
などを含めて、
「最終的に加盟店にどれだけ利益を残せるか」
を考える必要が出てきます。
つまり、KPIを何にするかは、本部社員の行動そのものを変える可能性があります。
2.6年前、ローソンは「売上」から「加盟店利益」へ軸を変えた
2020年、ローソンは本部の経営目標を「売上」から「店利益」へ変更しました。
さらに、
全社員の賞与KPIも「店利益」に変更
すると発表しました。
これは非常に大きな方向転換です。
単純に、
「売上を増やしてください」
と本部社員に求めるのではありません。
「加盟店の利益を増やしてください」
という目標に変えたわけです。
この違いは大きいと思います。
なぜなら、加盟店利益を増やすためには、売上だけを見ていても足りないからです。
3.売上を増やすことと、利益を増やすことは同じではない
例えば、店舗の年間売上が1,000万円増えたとします。
しかし、そのために、
人件費が600万円増えた。
その他経費が300万円増えた。
とすれば、最終的に残る利益は100万円です。
売上は1,000万円増えています。
しかし、利益は100万円しか増えていません。
つまり、
「売上が増えた=経営が良くなった」
とは限りません。
だからこそ、加盟店オーナーにとって重要なのは、
「売上がどれだけ増えたか」ではなく、「最終的にどれだけ利益が残ったか」
なのです。
4.加盟店利益をKPIにすると、本部の見る場所が変わる
ここが、ローソンの考え方で重要なところだと思います。
加盟店利益を本部社員の評価基準にするなら、
「売上を増やせ」
だけでは終わりません。
例えば、
「どうすれば客数を増やせるのか」
「どうすれば客単価を上げられるのか」
「どうすれば無駄なコストを減らせるのか」
「どうすれば店舗の作業効率を上げられるのか」
「どうすればオーナーの負担を減らせるのか」
というところまで考える必要があります。
つまり、
加盟店利益をKPIにすることで、売上・客数・コスト・オペレーションを総合的に見る必要が出てくる
わけです。
5.そして6年後、加盟店利益はどうなったのか
では、実際の結果を見てみます。
ローソンの公表資料によると、
オーナー1人あたりの店利益は、2019年度から2025年度まで7年連続で増加
しています。
2020年に「売上」から「店利益」へ経営目標を変更してから、その後も加盟店利益が継続的に増加しているわけです。
もちろん、
「KPIを店利益に変えたから利益が増えた」
と単純に断定することはできません。
商品政策、販促、店舗改装、客数、客単価、コスト削減など、さまざまな要因があります。
しかし、
6年前に「加盟店利益を重視する」と方向を変え、その後に加盟店利益が7年連続で増加している。
この事実は、非常に興味深いと思います。
私はこれを、
6年前の経営判断に対する「答え合わせ」の一つ
として見ています。
6.では、売上と客数はどうなったのか
ここで重要なのが、
「加盟店利益を重視したら、売上や客数を無視するようになったのか?」
という点です。
実際には、そうではありません。
ローソンの既存店実績を見ると、売上も客数も伸びています。
2023年度は、
売上+4.6%、客数+4.0%
2024年度は、
売上+3.6%、客数+1.5%
2025年度は、
売上+4.5%、客数+0.8%
となっています。
つまり、
加盟店利益を重要なKPIにしたからといって、売上や客数を軽視することにはなっていません。
むしろ、
「加盟店利益を増やすために、売上や客数をどう伸ばすのか」
という考え方になったと見ることができます。
7.「売上を増やす」のではなく「利益を増やすために売上を見る」
ここが今回の記事で一番伝えたいところです。
売上をKPIにすると、
売上を増やすことが目的
になります。
一方で、加盟店利益をKPIにすると、
加盟店利益を増やすことが目的
になります。
すると、売上や客数は「目的」ではなく、
利益を増やすための手段
として考えることができます。
例えば、
客数が増えた。
売上も増えた。
しかし、人件費も大きく増えた。
結果として加盟店利益が増えていない。
これでは、本当の意味で経営が改善したとは言えません。
逆に、
客数を増やし、
売上を増やし、
必要なコストをコントロールし、
最終的に加盟店利益が増えた。
のであれば、
売上も客数も「加盟店利益を増やすために機能した」
と考えることができます。
8.セブン・ローソン・ファミリーマートの実績を比較する
ここで、大手3社の既存店実績を見てみます。
セブン-イレブン
2023年度から2025年度にかけて、
売上:+3.0% → +0.2% → +1.2%
客数:+1.6% → +0.2% → ▲0.9%
となっています。
2025年度は、
売上が+1.2%なのに対して、客数は▲0.9%
でした。
売上は増えていますが、客数は減っています。
その差を客単価の上昇が補っています。
ローソン
ローソンは、
売上:+4.6% → +3.6% → +4.5%
客数:+4.0% → +1.5% → +0.8%
となっています。
売上だけを見るのではなく、客数も含めて見ることで、
「売上がどのように作られているのか」
が見えてきます。
ファミリーマート
ファミリーマートも、
2023年度は、
既存店日商+8.5%、客数+3.2%
2024年度は、
既存店日商+2.9%、客数+0.4%
でした。
こちらも売上と客数が同じ割合で動いているわけではありません。
9.売上だけでは、店舗の実態は分からない
3社の数字を見ると、
「売上」と「客数」は必ずしも同じ動きをしていない
ことが分かります。
客数が増えれば売上が増える。
これは当然です。
しかし、
客数が減っていても売上が増える場合があります。
その場合は、客単価の上昇など別の要因があります。
だから、
「売上が増えた」
だけでは、店舗経営の良し悪しを判断できません。
そして、さらに重要なのが、
「その売上から、最終的に加盟店にどれだけ利益が残ったのか」
です。
10.最低賃金・水道光熱費・物価高は「共通する外部環境」
現在のコンビニ経営は、どのチェーンにとっても簡単な環境ではありません。
最低賃金は上昇しています。
人件費も上昇しています。
水道光熱費もあります。
物流費も上がっています。
物価も上昇しています。
もちろん、各社の契約条件や店舗構成によって実際の負担は異なります。
しかし、
最低賃金上昇、人手不足、物価上昇といった大きな外部環境は、同じ市場で競争する各社に共通しています。
だからこそ、
「その環境の中で、各社がどのような結果を出しているのか」
を見ることができます。
11.「環境が厳しい」だけでは、経営の答えにならない
外部環境が厳しい。
これは事実です。
しかし、
「環境が厳しいから利益が減った」
だけでは、経営の答えにはなりません。
重要なのは、
「その環境変化を、どう吸収したのか」
です。
本部には、加盟店1店舗ではできないことがあります。
例えば、
- 設備投資
- 物流改革
- システム改善
- 作業効率化
- 商品政策
- 店舗オペレーション改善
などです。
チェーン本部が規模を持つ意味は、
こうした問題をチェーン全体で解決できること
にもあります。
12.加盟店利益を増やすために「何を改善したのか」を見る
ここまで考えると、重要なのは、
「加盟店利益が増えたか」
だけではありません。
次に見るべきなのは、
「なぜ加盟店利益が増えたのか」
です。
客数が増えたのか。
客単価が上がったのか。
商品政策が改善したのか。
廃棄が減ったのか。
人件費を効率化したのか。
店舗設備を改善したのか。
本部の支援によって何が変わったのか。
ここまで見て、初めて、
「加盟店利益をKPIにした経営が、現場でどう機能したのか」
を考えることができます。
13.人件費を見るときも「時給」だけでは足りない
加盟店利益を考えるうえで、人件費も重要な項目です。
特に最低賃金が上昇している現在、
「時給がいくら上がったか」
だけを見るのでは不十分です。
人件費は、
時給 × 必要な労働時間
で決まります。
同じ時給上昇でも、必要な労働時間が多い店舗ほど負担は大きくなります。
だからこそ、
「その店舗を運営するために、どれだけの労働が必要なのか」
を見ることも重要です。
ただし、目標は単純に労働時間を減らすことではありません。
必要な仕事を削るのではなく、
必要な仕事を、より効率よく終わらせる。
その結果として人件費を抑え、加盟店利益を増やす。
これが本来の生産性向上ではないでしょうか。
14.本部社員の評価も「売上」だけではなく「加盟店利益」へ
ローソンが6年前に行った改革で、私が特に注目しているのが、
全社員の賞与KPIを「店利益」にしたこと
です。
これは、
「売上を上げることが本部の仕事」
という考え方から、
「加盟店に利益を残すことが本部の仕事」
という考え方への転換とも言えます。
もちろん、売上は重要です。
客数も重要です。
しかし、それらは最終目的ではありません。
本部が加盟店を支援するのであれば、
加盟店の利益がどう変化したのか
を評価することには、大きな意味があります。
15.数字は「何が起きたか」を教えてくれる
売上。
客数。
客単価。
加盟店利益。
人件費。
これらは、すべて重要な数字です。
しかし、数字だけでは、
「なぜ、その結果になったのか」
までは分かりません。
客数が減った。
なぜでしょうか。
競合店が増えたのか。
商品の魅力が落ちたのか。
人手不足で売場が維持できていないのか。
接客に問題があるのか。
営業時間帯に問題があるのか。
逆に、
客数が増えた。
なぜでしょうか。
商品政策なのか。
販促なのか。
店舗改装なのか。
地域の変化なのか。
数字は「何が起きたか」を教えてくれます。
しかし、
数字の理由は現場を見なければ分かりません。
16.セブン-イレブンにも、もっと「加盟店利益」を見てほしい
私はこの記事を、セブン-イレブンを批判するために書いているわけではありません。
現役オーナーとして、
もっと本部に現場と加盟店利益を見てほしい。
そう思っています。
売上を上げる。
客数を増やす。
これは大切です。
しかし、その結果として、
オーナーの利益がどうなったのか。
ここまで見なければ、本当の経営改善とは言えないのではないでしょうか。
そして、本部社員の仕事も、
「売上を上げるためのアドバイス」
だけではなく、
「加盟店利益を増やすための具体的な改善」
で評価されるべきではないでしょうか。
17.6年前に示された答え、その先へ
6年前、ローソンは、
「売上」から「加盟店利益」へ
経営の軸を変えました。
そして、その後、
加盟店利益は7年連続で増加
しています。
さらに、売上や客数も伸びています。
もちろん、
「加盟店利益をKPIにしたことだけが、この結果を生み出した」
と断定することはできません。
しかし、
「加盟店利益を増やすこと」を本部全体の目標にしたことで、売上・客数・コストなどを総合的に考える経営につながった
と見ることはできます。
ここに、私は一つの答えがあると思っています。
売上を増やすことを目的にするのではなく、
加盟店利益を増やすことを目的にする。
そして、
そのために売上を見る。
客数を見る。
客単価を見る。
コストを見る。
必要な労働時間を見る。
そして最後に、
現場を見る。
これが、6年前にローソンが示した考え方から、現在のコンビニ経営が学べることではないでしょうか。
数字は結果を教えてくれます。
しかし、
数字の理由は、現場にあります。
だからこそ、
現場を見なければ、問題の本質は分からない。
私は現役オーナーとして、これからもSEMCを使いながら、
「売上」ではなく「加盟店利益」を起点に、コンビニ経営を検証していきたいと思います。
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