契約上の本部と加盟店は平等である。その指標とは?【第183話】

本部と加盟店が天秤を挟んで向き合い、平等な立場を考えるイメージ SEMC使い方講座

コンビニのフランチャイズ契約では、本部と加盟店はそれぞれ独立した事業者です。

つまり、契約上は「雇う側と雇われる側」ではなく、対等な事業者同士の契約関係です。

では、本部と加盟店が「平等」であるとは、具体的に何を意味するのでしょうか。

契約書に署名していることだけで、本当に平等と言えるのでしょうか。

私は、ここを一度整理する必要があると考えています。

契約上は平等でも、実際の交渉力は同じなのか

本部と加盟店は、それぞれ独立した事業者です。

しかし、実際の店舗運営を考えると、両者が持っている情報や組織力には大きな違いがあります。

本部には、

  • 商品・物流に関するデータ
  • 多数の店舗から集まる販売データ
  • システムや運営ノウハウ
  • 法務・人事・経理などの専門部署
  • 全国の店舗を運営してきた経験

があります。

一方、加盟店側は、一人のオーナー、あるいは家族や少人数で経営しているケースもあります。

つまり、契約上は、

「本部 対 加盟店」

でも、実際の構造は、

「一人のオーナー 対 組織」

になっています。

この構造そのものが悪いということではありません。

問題は、この差がある状態で、本当に実質的な「平等な交渉」ができる仕組みになっているのかということです。

情報量が違えば、対等な交渉は難しい

本部と加盟店では、持っている情報にも違いがあります。

本部が保有する内部データや制度設計の考え方には、守秘義務などによって加盟店側が確認できないものもあります。

そのため加盟店側からすると、

「どのようなデータを基に判断しているのか」

「その制度はどのような前提で設計されているのか」

「現在の店舗運営に本当に適合しているのか」

を完全に検証することは容易ではありません。

もちろん、本部にも開示できない情報があることは理解できます。

しかし、

情報を十分に確認できない状態で、加盟店側に経営責任だけを求めることが、本当に平等な関係と言えるのか。

ここは考える必要があると思います。

「他のオーナーからは言われていない」では答えにならない

例えば、オーナーが本部に対して、数字や根拠を示しながら問題を提起したとします。

そのとき、

「他のオーナーからは、そのような話は聞いていません」

という回答があったとしたら、どうでしょうか。

これは、その問題が正しいのか間違っているのかという問いへの答えにはなっていません。

必要なのは、

「その数字はどこが違うのか」

「その前提条件はなぜ違うのか」

「本部としては、どのような根拠でその制度を設計しているのか」

という具体的な説明ではないでしょうか。

多数派であることと、論理的に正しいことは同じではありません。

だからこそ、本部と加盟店の関係には、感覚ではなく客観的な基準が必要になります。

平等を判断するための指標が必要ではないか

本部と加盟店の「平等」を考えるのであれば、少なくとも次のような指標が必要だと思います。

① 情報の透明性

制度や運営基準が、どのような数字や考え方によって決められているのか。

② リスクと利益のバランス

売上減少、人件費上昇、最低賃金上昇などによって発生するリスクを、どちらがどの程度負担しているのか。

③ 意思決定への参加

加盟店側の意見が、制度変更や運営ルールにどの程度反映される仕組みになっているのか。

④ 基準の明確さ

「頑張ればできる」という曖昧な話ではなく、現在の法律や労働環境の中で、何をどこまで実行できるのか。

⑤ 再現性

本部が示す標準的な店舗運営が、実際の店舗で継続的に再現できるのか。

私は、特に④と⑤が重要だと考えています。

売上に応じた「基準オペレーション」が必要ではないか

例えば、日販35万円の店舗と日販70万円の店舗では、必要な作業量も必要な人員も同じではありません。

そこで、

売上規模に応じて、標準的に必要となる労働時間を明確にする。

例えば、

日販基準労働時間必要人員基準人件費
30万円○時間○人○万円
35万円○時間○人○万円
40万円○時間○人○万円
50万円○時間○人○万円

というような基準です。

もちろん、実際の店舗には立地、営業時間、店舗面積、商品構成などの違いがあります。

だからこそ、すべての店舗を一つの数字で決めるのではなく、一定の条件を設定したうえで、売上規模ごとの標準モデルを作ることが重要だと思います。

標準オペレーションは、本当に再現できるのか

では、その標準オペレーションが本当に実行可能なのか。

ここを検証する必要があります。

本部が考える標準的な店舗運営を、現在の最低賃金、労働時間、法令、人手不足などの環境下で実際に再現できるのか。

直営店は、その検証材料の一つになり得ます。

例えば、

「日販35万円の店舗で、このサービス水準を維持するためには、何時間の労働力が必要なのか」

ということを実際の店舗運営から検証する。

そして、その結果を加盟店の標準モデルにも反映する。

ここで重要なのは、

「直営店でできなければ加盟店にも要求できない」

と単純に決めることではありません。

直営店を含めた実際の店舗データから、本当に再現可能な運営モデルなのかを検証することが重要なのです。

最低賃金が上がるたびに、制度を見直せる

ここで「基準」の意味がさらに重要になります。

最低賃金は上昇します。

社会保険料も変わります。

労働環境に対する社会の要求も変化します。

人手不足によって、以前と同じ条件で人材を確保できなくなることもあります。

しかし、売上規模ごとの基準オペレーションと必要労働時間が明確になっていれば、環境変化による影響を数字で把握できます。

例えば、

必要労働時間 × 新しい人件費

によって、標準的な店舗運営に必要な人件費がどれだけ増えたのかを計算できます。

さらに社会保険料や労働保険料などの事業主負担も含めれば、店舗運営コストの変化をより正確に把握できます。

そうすれば、

「最低賃金が上がったけれど、あとはオーナーの経営努力で吸収してください」

という話ではなく、

「標準オペレーションを維持するためのコストが、これだけ上昇しました。では制度をどう見直すのか」

という数字に基づいた議論ができます。

基準があるから、変化に対応できる

店舗経営を取り巻く環境は、常に変化しています。

最低賃金が上がる。

法律が変わる。

人手不足が進む。

労働環境に対する社会の要求が変わる。

こうした変化を避けることはできません。

だからこそ、基準を持つことが重要なのではないでしょうか。

基準があれば、現在の環境との違いを測ることができます。

そして、その差を数字にすることで、制度を見直すことができます。

つまり、

基準があるから、変化を測ることができる。

変化を測ることができるから、制度を見直すことができる。

この仕組みがあれば、環境が変わっても、制度を現実に合わせて更新していくことができます。

「変化への対応」を制度そのものに組み込む

セブン-イレブンの成長を語るうえで、鈴木敏文氏が重視してきた考え方の一つに、**「変化への対応と基本の徹底」**があります。

私は、この考え方は店舗運営だけではなく、フランチャイズ制度そのものにも必要なのではないかと思います。

「基本」は大切です。

しかし、基本となるオペレーションが、時代が変わっても同じでよいとは限りません。

最低賃金が変わる。

法律が変わる。

人手不足が進む。

労働環境に対する社会の要求が変わる。

そうした変化が起きれば、同じサービスを維持するためのコストも変わります。

だからこそ、

基準を固定するのではなく、基準を持ったうえで、その基準そのものを変化に合わせて更新する。

これが重要なのではないでしょうか。

誰が基準を作り、誰が検証するのか

ここで、もう一つ重要な問題があります。

基準を作れば、それだけで公平になるのでしょうか。

私は、そうではないと思います。

重要なのは、

その基準を誰が作り、誰が検証するのか

ということです。

もし本部だけが基準を作り、本部だけが「この基準で問題ない」と判断するのであれば、その基準自体が現場の実態に合っているのかを検証することが難しくなります。

だからこそ、

  • 実際の店舗データ
  • 直営店での検証
  • 加盟店の運営実態
  • 必要労働時間
  • 実際に発生している人件費
  • 法律や最低賃金などの環境変化

などをもとに、継続的に検証する仕組みが必要なのではないでしょうか。

基準を作ることだけではなく、基準を検証し、更新できること。

そこまで含めて初めて、基準として機能するのだと思います。

「オーナーの努力」だけでは持続可能にならない

もちろん、店舗経営には加盟店側の努力が必要です。

売上を上げる。

無駄を減らす。

人材を育成する。

効率を改善する。

これらはオーナーの重要な経営責任です。

しかし、

その経営努力を評価するためにも、基準が必要なのではないでしょうか。

何をもって適正な人員配置とするのか。

何をもって適正な人件費とするのか。

どの程度の作業量を標準オペレーションとするのか。

そこが明確でなければ、

「もっと効率化してください」

「人件費を抑えてください」

「他店ではできています」

という議論になってしまいます。

基準があるから、持続可能になる

フランチャイズという仕組みを長く続けるためには、加盟店が継続して事業を行えることが重要です。

そして、そのためには現在の環境に合った店舗運営モデルが必要です。

長い歴史の中で、店舗を取り巻く環境は大きく変化してきました。

最低賃金も、労働法制も、人材確保の環境も変わっています。

だからこそ、過去に作られた仕組みをそのまま維持するのではなく、

現在の環境に合わせて基準を更新していくこと

が必要なのではないでしょうか。

基準がある。

だから変化を測ることができる。

変化を測ることができる。

だから制度を見直すことができる。

制度を見直すことができる。

だから、本部と加盟店の双方が長く事業を続けることができる。

私は、これこそが持続可能なフランチャイズシステムにつながるのではないかと思います。

本部と加盟店の「平等」を何で測るのか

本部と加盟店が同じ規模の組織になる必要はありません。

本部には本部の役割があり、加盟店には加盟店の役割があります。

重要なのは、

それぞれの役割と責任に見合った情報、権限、リスク、利益のバランスが取れているか。

そして、

その判断をするための客観的な基準が存在しているか。

さらに、

その基準を双方が検証し、環境の変化に合わせて更新できる仕組みがあるか。

では、契約上「本部と加盟店は平等」であるなら、その平等を具体的な数字と基準で説明できるのでしょうか。

私は、

「基準があること」

「その基準を検証できること」

「環境の変化に合わせて基準を更新できること」

この3つが、本当の意味での平等と持続可能性を考えるうえで、重要な指標になるのではないかと思います。

契約上の平等だけではなく、

変化に対応できる仕組みとしての平等。

そこまで考えることが、これからのフランチャイズには必要なのではないでしょうか。

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