- 結論|現在の延長線上では約9年後に逆転する
- 現在の店舗を基準にする
- オーナー夫婦の労働時間
- 「約9年後」の計算方法
- 【後半】コンビニは「売上」から「生産性」の時代へ
- 問題は「人件費が高いこと」ではなく「生産性」
- 人件費を下げるのではなく「時間数」を減らす
- そこで期待しているソフトバンク・PayPayなどとの戦略的パートナーシップ
- ソフトバンクのAI・ロボット技術に期待する理由
- 私が一番期待しているのは「オーナーの時間を減らすこと」
- これからは「売上」だけではなく「人時」を見る
- まとめ|現在の延長線上では厳しい。だから今から準備する
- 少ない人時で、同じ売上、あるいはそれ以上の利益を生み出すこと。
- 9年後になって突然問題が起きるわけではありません
結論|現在の延長線上では約9年後に逆転する
コンビニ経営を今後10年間続けたら、オーナー夫婦が働くことの価値はどう変わるのでしょうか。
現在の店舗データを基準に、10年間のシミュレーションを行ってみました。
結論から言うと、
約9年後に、オーナー夫婦の実質時給が仮定した最低賃金を下回る
という結果になりました。
現在の最終利益は81.6万円。
オーナーは1日8時間・週5日、妻は1日5時間・週5日働くと仮定すると、夫婦合計の労働時間は月平均約282時間です。
現在の実質時給は、
81.6万円 ÷ 281.7時間 ≒ 2,897円
です。
ところが9年後には、
約1,608円
まで低下します。
一方、最低賃金が年5%上昇すると仮定すると、9年後には、
約1,702円
です。
つまり、
実質時給1,608円
<
仮定最低賃金1,702円
となります。
もちろん、これは将来を予測した数字ではありません。
一定の条件を設定したシミュレーションです。
しかし、この数字が示しているのは、
現在のコンビニビジネスモデルを、そのまま10年間延長することの厳しさ
です。
【前半】数字で見るコンビニ経営の10年後
現在の店舗を基準にする
今回のシミュレーションでは、現在の店舗を基準にしています。
- 月間商品売上高:約1,950万円
- 平均日販:約65万円
- GP率:約31%
- 月間収入:約295.5万円
- 人件費:約146.6万円
- 廃棄:約48.8万円
- その他経費:約18.5万円
最終利益は、
月間収入 − 人件費 − 廃棄 − その他経費
で計算します。
つまり、
295.5万円 − 146.6万円 − 48.8万円 − 18.5万円
= 81.6万円
です。
今回は、この81.6万円を現在の最終利益としてシミュレーションします。
オーナー夫婦の労働時間
ここは今回のシミュレーション上の前提条件です。
現在の実際の勤務時間を示したものではありません。
オーナー
1日8時間 × 週5日
年間では、
8時間 × 5日 × 52週 = 2,080時間
月平均では約173.3時間です。
妻
1日5時間 × 週5日
年間では、
5時間 × 5日 × 52週 = 1,300時間
月平均では約108.3時間です。
夫婦合計
年間では、
3,380時間
月平均では、
約281.7時間
となります。
したがって、現在のオーナー夫婦の実質時給は、
81.6万円 ÷ 281.7時間 ≒ 2,897円
となります。
シミュレーションの条件
今回の10年間シミュレーションでは、以下の条件を設定しました。
- 売上・月間収入:年2%上昇
- 人件費:年5%上昇
- 廃棄:年2%上昇
- その他経費:年2%上昇
- GP率:31%で固定
- オーナー:1日8時間・週5日
- 妻:1日5時間・週5日
- 最低賃金:年5%上昇
現在の静岡県最低賃金は1,097円です。
※最低賃金の年5%上昇は、将来の予測ではありません。今回のシミュレーション上の条件です。
「約9年後」の計算方法
今回のシミュレーションでは、現在の店舗データを基準に、
売上・月間収入、廃棄、その他経費を年2%、人件費を年5%上昇
させて、各年の最終利益を再計算しています。
そして、オーナー夫婦の労働時間は、
オーナー1日8時間・週5日
妻1日5時間・週5日
で固定しています。
最低賃金についても、現在の1,097円から年5%上昇すると仮定しています。
10年間シミュレーション
| 経過年数 | 平均日販 | GP率 | 月間収入 | 人件費 | 廃棄 | その他経費 | 最終利益 | 夫婦実質時給 | 仮定最低賃金 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 現在 | 65.0万円 | 31% | 295.5万円 | 146.6万円 | 48.8万円 | 18.5万円 | 81.6万円 | 2,897円 | 1,097円 |
| 1年後 | 66.3万円 | 31% | 301.4万円 | 153.9万円 | 49.8万円 | 18.9万円 | 78.8万円 | 2,799円 | 1,152円 |
| 2年後 | 67.6万円 | 31% | 307.5万円 | 161.6万円 | 50.8万円 | 19.2万円 | 75.8万円 | 2,691円 | 1,209円 |
| 3年後 | 69.0万円 | 31% | 313.6万円 | 169.7万円 | 51.8万円 | 19.6万円 | 72.5万円 | 2,573円 | 1,270円 |
| 4年後 | 70.4万円 | 31% | 319.9万円 | 178.2万円 | 52.8万円 | 20.0万円 | 68.8万円 | 2,443円 | 1,333円 |
| 5年後 | 71.8万円 | 31% | 326.3万円 | 187.1万円 | 53.9万円 | 20.4万円 | 64.8万円 | 2,302円 | 1,400円 |
| 6年後 | 73.2万円 | 31% | 332.8万円 | 196.5万円 | 55.0万円 | 20.8万円 | 60.5万円 | 2,149円 | 1,470円 |
| 7年後 | 74.7万円 | 31% | 339.4万円 | 206.3万円 | 56.1万円 | 21.3万円 | 55.8万円 | 1,983円 | 1,544円 |
| 8年後 | 76.2万円 | 31% | 346.2万円 | 216.6万円 | 57.2万円 | 21.7万円 | 50.8万円 | 1,803円 | 1,621円 |
| 9年後 | 77.7万円 | 31% | 353.1万円 | 227.4万円 | 58.3万円 | 22.1万円 | 45.3万円 | 1,608円 | 1,702円 |
| 10年後 | 79.2万円 | 31% | 360.2万円 | 238.8万円 | 59.5万円 | 22.6万円 | 39.4万円 | 1,398円 | 1,787円 |
9年後に逆転する
現在は、
実質時給2,897円 > 最低賃金1,097円
です。
8年後でも、
実質時給1,803円 > 最低賃金1,621円
です。
しかし9年後には、
実質時給1,608円 < 最低賃金1,702円
となります。
つまり、
約9年後に逆転します。
ここでいう「最低賃金を下回る」とは、オーナーに最低賃金法が直接適用されるという意味ではありません。
オーナー夫婦が現場に入る場合の実質時給と、従業員として働いた場合の最低賃金を比較したものです。
日販が上がっても、実質時給は下がる
今回、最も注目したいのがここです。
現在の平均日販は、
65万円
です。
それが9年後には、
77.7万円
になります。
約20%増えています。
ところが、オーナー夫婦の実質時給は、
2,897円 → 1,608円
まで低下します。
10年後には平均日販が、
79.2万円
まで増えます。
それでも実質時給は、
1,398円
です。
つまり、
売上を増やすだけでは、オーナー夫婦の労働価値を維持できない可能性があります。
最終利益も大きく減少する
10年後を見ると、
月間収入は、
295.5万円 → 360.2万円
まで増えます。
一方、人件費は、
146.6万円 → 238.8万円
まで増加します。
その結果、最終利益は、
81.6万円 → 39.4万円
まで減少します。
つまり、
売上は増えているのに、利益は半分以下になる。
これが今回のシミュレーションから見える、
現在の延長線上で考えたコンビニ経営の厳しさ
です。
【後半】コンビニは「売上」から「生産性」の時代へ
ここまで数字を見ると、私は現在のコンビニビジネスモデルには大きな課題があると感じます。
最大の弱点は、
人材集約型のビジネスモデルであること
です。
レジ。
品出し。
清掃。
発注。
売場管理。
バックヤード作業。
店舗を営業するためには、多くの人の労働時間が必要です。
そして、最低賃金が上昇していくことは、これからの経営を考えるうえで避けて通れません。
問題は「人件費が高いこと」ではなく「生産性」
ここは、これからのコンビニ経営を考えるうえで非常に重要だと思っています。
人件費が高いこと自体が問題なのではありません。
人が働く以上、それに見合った賃金を支払う必要があります。
問題なのは、
人件費の上昇を上回る生産性向上ができるかどうか
です。
人件費が5%上がるのであれば、それ以上に店舗の生産性を上げる。
同じ売上を、より少ない人時で作る。
これができなければ、人件費の上昇によって利益は徐々に圧迫されていきます。
だから必要なのは、
人件費削減ではなく、生産性向上です。
人件費を下げるのではなく「時間数」を減らす
では、どうすれば生産性を上げられるのか。
私は、
店舗運営に必要な時間数そのものを減らすこと
が重要だと考えています。
例えば、
100時間必要だった仕事を90時間にする。
さらに80時間にする。
つまり、
「人を安く使う」のではなく、「人が必要な仕事を減らす」
という考え方です。
これができれば、人件費の上昇が続いても、店舗全体の人件費を抑えながら利益を確保できる可能性があります。
そこで期待しているソフトバンク・PayPayなどとの戦略的パートナーシップ
私が今回注目しているのが、
セブン&アイ・ホールディングス、セブン‐イレブン・ジャパンと、ソフトバンク、PayPay、LINEヤフー、三井住友カードとの戦略的パートナーシップ
です。
今回の取り組みでは、AI・ロボット、データ活用、ITソリューションなどを活用した店舗運営の効率化・高度化が示されています。
私が特に期待しているのは、
店舗運営に必要な「人時」を減らすこと
です。
人件費の単価を下げるのではなく、
必要な労働時間そのものを減らす。
ここに大きな可能性があると感じています。
ソフトバンクのAI・ロボット技術に期待する理由
ソフトバンクはAIを重要な成長分野として取り組んでいます。
セブン&アイとの取り組みにおいても、AIやロボット、データなどを活用した店舗運営の効率化・高度化が示されています。
例えば、
- AIによる発注支援
- スタッフ配置の最適化
- 商品補充の効率化
- バックヤード作業の自動化
- AIによる接客支援
- ロボットの活用
などです。
もちろん、現時点ですべてが実用化され、店舗の労働時間を何%削減できると決まっているわけではありません。
だから私は、
「必ず人件費が下がる」
とは考えていません。
あくまで、
「店舗運営に必要な時間を減らせる可能性がある」
ことに期待しています。
私が一番期待しているのは「オーナーの時間を減らすこと」
今回のシミュレーションでは、
- オーナー:約173時間/月
- 妻:約108時間/月
- 夫婦合計:約282時間/月
働くことを前提にしています。
もし店舗運営を効率化して、この時間を減らすことができれば、
オーナー夫婦の時間単価を上げながら、自由な時間も増やす
ことができます。
これは第137話で考えた、
「コンビニの出口戦略」
にもつながります。
コンビニをいきなり辞めるのではなく、
少しずつ現場から離れる。
そして、空いた時間を副業や資産形成など、別の収入源を育てるために使う。
私は、これがこれからのコンビニオーナーにとって重要な選択肢になると考えています。
これからは「売上」だけではなく「人時」を見る
これまでのコンビニ経営では、
日販をいくら上げるか
が非常に重要でした。
もちろん、これからも売上は重要です。
しかし、これからは、
「その売上を何人時で作っているのか」
がさらに重要になると思います。
日販65万円を70万円にする。
70万円を75万円にする。
それだけでは、人件費の上昇に追いつけない可能性があります。
だから、
売上+利益+人時
をセットで考える。
これからのコンビニ経営では、
「いくら売ったか」だけではなく、「何時間でその売上を作ったか」
が重要になってくると思います。
まとめ|現在の延長線上では厳しい。だから今から準備する
今回のシミュレーションでは、
約9年後にオーナー夫婦の実質時給が最低賃金を下回る
という結果になりました。
しかも9年後の平均日販は、
65万円 → 77.7万円
まで上がっています。
それでも実質時給は、
2,897円 → 1,608円
まで低下します。
最終利益も、
81.6万円 → 45.3万円
まで減少します。
これは、
現在のコンビニビジネスモデルをそのまま延長することの厳しさ
を示していると思います。
最低賃金は上がる。
人手不足も続く。
人件費も上がる。
だから、
「もっと人を雇って店舗を回す」
だけでは限界があります。
必要なのは、
少ない人時で、同じ売上、あるいはそれ以上の利益を生み出すこと。
そのためのAI、ロボット、データ活用に私は期待しています。
そして、オーナー自身も、
「どれだけ働くか」ではなく、「どれだけ少ない時間で店舗を運営できるか」
を考える必要があると思います。
9年後になって突然問題が起きるわけではありません
人件費の上昇や利益の減少は、毎年少しずつ進んでいきます。
だからこそ、問題が深刻になってから動くのではなく、まだ余裕のある今から準備しておくことが重要だと私は考えています。
オーナー自身が現場から少しずつ離れられる店舗運営をつくる。
そして、空いた時間を使って副業や資産形成など、コンビニ以外の収入源を育てていく。
「コンビニを辞める準備」ではなく、「コンビニがなくても困らない状態を少しずつつくる」。
それが、これからのコンビニオーナーに必要な出口戦略なのかもしれません。
※シミュレーションについて
本記事は、現在の店舗データを基準にした筆者による試算です。
月間収入・廃棄・その他経費を年2%、人件費を**年5%**上昇させ、GP率は31%で固定しています。
最終利益は、
月間収入 − 人件費 − 廃棄 − その他経費
で計算しています。
労働時間は、オーナー1日8時間・週5日、妻1日5時間・週5日を前提とし、年間52週として月平均に換算しています。
最低賃金は、現在の静岡県最低賃金1,097円を基準に年5%上昇すると仮定しています。
実際の将来の売上、人件費、最低賃金を予測するものではありません。
また、「最低賃金を下回る」という表現は、オーナーに最低賃金法が直接適用されるという意味ではなく、オーナー夫婦が働いた場合の実質時給と、従業員として働いた場合の最低賃金を比較したものです。
参考情報
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