こんにちは、コンビニ大家です。
前回は、借金を完済し、年間利益1,000万円を達成するまでの経験についてお話ししました。
経営が安定してくると、次に考えなければならなくなったのが、
「自分が現場にいなくても、お店を運営できる体制をどうつくるか」
ということでした。
そこで大きな役割を担ってくれたのが、前職時代から知っていた元部下でした。
彼には以前から、
「頑張れば、店長を任せる。」
と伝えていました。
そして、その約束を現実にするため、私は二号店の出店を目指すことになります。
しかし、二号店の出店が決まった時、私は素直に喜べませんでした。
なぜなら、
「本当に、この人に店長を任せていいのか。」
という問題が残っていたからです。
二号店を目指した理由
彼を採用した時、私は前職と同じ水準の給料を保証しました。
当時、一店舗だけの利益で、その待遇を維持することは決して簡単ではありませんでした。
それでも、一度した約束を簡単に変えたくはありませんでした。
だったら、
会社を成長させるしかない。
そう考えました。
社員やスタッフ全員が努力した結果、地域優秀店を獲得し、本部から二号店の出店権利をいただくことができました。
会社としては、大きなチャンスです。
そして彼にとっても、店長になるための大きな機会でした。
しかし私が考えていたのは、
「二号店を出すかどうか」
ではありません。
その先にある、
「誰に店長を任せるのか」
でした。
仕事ができることと、店長ができることは違う
彼は仕事のできる社員でした。
数字にも強い。
仕事を覚えるのも早い。
発注もできる。
売場づくりもできる。
責任感もありました。
能力だけを見れば、
「店長として十分やっていけるのではないか」
と思える人材でした。
しかし、一緒に働く中で、私は少しずつ違和感を持つようになりました。
スタッフへの接し方です。
どこか上から目線になってしまうことがある。
コンビニの仕事を軽く見ているように感じることもありました。
私は、
「スタッフにも敬意を持って接してほしい。」
と何度も伝えました。
しかし、考え方は簡単には変わりませんでした。
そこで私は、
「仕事ができることと、人を任せられることは同じではない。」
と考えるようになりました。
私が店長に求めていたもの
私は彼に、店舗運営についてできる限り多くのことを教えました。
発注。
売場づくり。
利益管理。
人件費管理。
採用。
教育。
労務管理。
税金。
店舗経営。
自分が10年以上のコンビニ経営で学んできたことを、できるだけ伝えました。
しかし、私が本当に伝えたかったのは、知識だけではありません。
人への向き合い方です。
コンビニは24時間365日営業です。
店長一人で営業できる店舗などありません。
スタッフがいるからこそ、お店は営業できます。
だから私は、
店長にとって最も大切なのは、スタッフから信頼されること
だと考えていました。
数字を見るだけでは店長になれない
彼は数字に強い社員でした。
しかし私は、
「数字を見ること」と「数字をつくること」は違う
と考えています。
売上を見る。
人件費を見る。
利益を見る。
数字を管理すること自体は、それほど難しいことではありません。
本当に難しいのは、その数字を現場で実現することです。
スタッフを採用する。
新人を育てる。
仕事を教える。
働きやすい環境をつくる。
スタッフが力を発揮できる状態をつくる。
そして、
「この店長についていきたい」
と思ってもらう。
その積み重ねが、最終的に数字になります。
私は店長に、
「数字を管理する人」ではなく、「人と一緒に数字をつくる人」
になってほしいと思っていました。
「もう教わることはありません」
そんな中、彼から言われた言葉がありました。
「もう、あなたから教わることは何もありません。」
さらに、
「自分には足りないものはありません。」
とも言われました。
私は正直、驚きました。
10年以上コンビニを経営してきた私自身でさえ、今でも分からないことがあります。
税務。
労務。
人材育成。
店舗運営。
経営。
どれも、学び続けなければならない分野です。
だから私は、
「学ぶことをやめた瞬間に、成長も止まる。」
と思っています。
店長になることがゴールではありません。
店長になってからも、学び続ける必要があります。
しかし、その考え方を理解してもらうことは簡単ではありませんでした。
「店長になれないなら、この会社で働く意味がない」
私は、彼に率直に伝えました。
「今のままでは店長を任せられない。」
すると彼は、
「店長になれないなら、この会社で働く意味がありません。」
と言いました。
私は悩みました。
彼は店長になることを目標に頑張ってきました。
その夢を簡単に否定することもできません。
一方で、
「頑張ったから店長にする」
という判断もできません。
店長という立場には、それだけ大きな責任があるからです。
そこで私は、彼自身に選択してもらうことにしました。
独立するか、別の道へ進むか
私は二つの選択肢を提示しました。
一つは、
自分でコンビニオーナーとして独立すること。
もう一つは、
この会社を退職して、新しい道へ進むこと。
どちらを選んでも、本人の人生です。
私は、その意思を尊重するつもりでした。
しかし彼は、そのどちらも選びませんでした。
そして、
「それでも、この会社で店長をやりたい。」
と言いました。
その意思は最後まで変わりませんでした。
最後に条件を提示した
そこまで店長をやりたいのであれば、私も覚悟を確認する必要がありました。
私は社会保険労務士にも相談し、店長として求められる責任について整理しました。
そして、彼に伝えました。
店長になれば、
- 採用
- 教育
- 人材育成
- スタッフの退職対応
- 店舗運営
- 人件費管理
など、多くの責任を負うことになります。
人件費については、
週休二日、週40時間程度で運営できることを前提
に予算を組みます。
しかし、採用した人が突然辞めることもあります。
スタッフ同士の問題が起きることもあります。
労務上の問題が発生することもあります。
その時にどう判断するのか。
どう対応するのか。
店長として責任を持って向き合えるのか。
私は一つひとつ確認しました。
そして、
「自分の判断で会社に大きな損害を与える可能性がある仕事だということを理解しているか」
ということも伝えました。
最終的には、その内容を契約書として明確にしました。
本当は契約書で任せたくなかった
正直、ここまで書面にしたくはありませんでした。
店長という仕事は、本来なら契約書だけで任せるものではなく、
信頼して任せるもの
だと思っていたからです。
しかし、それほど私は迷っていました。
彼を信じたい。
でも、簡単に任せることもできない。
経営者として、
「信じること」と「無条件に任せること」は違う。
そう考えていました。
それでも私は信じることにした
彼は、
「その条件でも店長をやります。」
と言いました。
私は最後に、彼を信じることにしました。
人は責任を背負うことで変わることがあります。
新しい立場になれば、今まで見えなかったものが見えるようになるかもしれません。
私は、
「店長になれば、きっと成長してくれるかもしれない。」
その可能性に賭けることにしました。
経営者が人を任せるということは、
「この人なら絶対に大丈夫」
と確信してから任せることではないのかもしれません。
不安があっても、その人の可能性を信じて任せる。
それも経営者の仕事なのだと思います。
二号店を任せる
配属先には、本部直営だった既存店を選びました。
経験豊富なスタッフも多く、店長として学ぶには良い環境だと考えたからです。
引き継ぎの準備も進み、いよいよ店長としてスタートする時が近づいてきました。
しかし、引き継ぎの面談で私は、少し気になることがありました。
本来なら、新しい店長となる本人が中心になって質問する場面です。
ところが、質問するのは私ばかりでした。
私はその姿を見ながら、
「本当に、この決断で良かったのだろうか。」
と何度も考えました。
それでも、私は任せることを決めました。
人は、本人が変わろうと思わなければ変わらない
この経験から、私は一つのことを学びました。
仕事の知識は教えられます。
技術も教えられます。
経験する機会も与えられます。
しかし、
人間性や価値観まで、他人が変えることはできません。
変わるかどうかを決めるのは、本人です。
経営者にできるのは、
成長する機会を与えること。
必要な環境を用意すること。
そして、本人が変わろうとするのを待つこと。
そこまでなのだと思います。
私は彼に、
「数字を管理する人」ではなく、「人と一緒に数字をつくる人」
になってほしかった。
それが、私が店長に求めていた本当の姿でした。
それでも、私は店長を任せた
最終的に私は、彼に二号店を任せることにしました。
不安がなくなったわけではありません。
それでも、
人を信じなければ、人に仕事を任せることはできません。
経営者がすべてを抱えていては、会社は成長しません。
誰かに任せる。
その人の可能性を信じる。
そして、必要な時には支える。
それも経営者の仕事なのだと思います。
ただ――
この決断が、後に私自身を大きく悩ませることになります。
二号店を任せた後、現場では何が起きたのか。
次回、第20話では、**店長就任後に次々と起きた「人の問題」**についてお話しします。
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