ミニストップ56億円赤字から考える、店内調理とコンビニ経営の難しさ【第167話】

ミニストップ56億円赤字と店内調理の店舗負担を解説するイメージ画像 コンビニ経営

ミニストップの最終赤字が56億円を超えました。

ミニストップといえば、ソフトクリームや店内調理など、他のコンビニとは違う「おいしさ」を強みにしてきたチェーンです。

私は、店内調理そのものが悪いとは思っていません。

むしろ、店内調理やカウンター商品は、コンビニの魅力を高める大切な商品だと思っています。

大手コンビニ各社でも、揚げ物やおでん、コーヒーなど、カウンター商品の存在感は大きくなっています。

ただし、今回のミニストップの赤字を店内調理だけが原因だと考えるのは適切ではありません。

今回の記事では、ミニストップの問題をきっかけに、

「店内調理という商品を、店舗は本当に無理なく運営できるのか」

という視点から、コンビニ経営について考えてみたいと思います。

コンビニ経営の現場から見ると、ここには非常に難しい問題があります。

それは、

カウンター商品は、商品によって店舗の負担とリスクが大きく違う

ということです。

そして、同じ「粗利の取れる商品」でも、店舗に最終的に残る利益まで考えると、見え方は大きく変わります。

店内調理は「おいしさ」という大きな武器

店内調理には、通常の商品にはない魅力があります。

できたて感。

温かさ。

店内調理ならではのおいしさ。

こうした商品は、他店との差別化にもなります。

お客様が、

「この商品を買いたいから、このコンビニに行く」

という来店動機を作ることもできます。

だからこそ、店内調理は大きな武器になります。

ただし、その商品を提供するためには、店舗側に多くの作業が発生します。

仕込み。

調理。

補充。

消費期限管理。

温度管理。

衛生管理。

廃棄管理。

さらに、包装紙や容器、調味料、おしぼりなどの消耗品も必要になります。

つまり、

商品を販売するほど、売上だけではなく店舗側の作業とコストも増えていく

ということです。

ここを考えずに、「粗利率が高いから良い商品」と判断するのは危険です。

粗利率が高い商品=店舗にとって効率が良い商品ではない

例えば、粗利率50%の商品を1万円販売したとします。

売上は1万円。

粗利は5,000円です。

仮にチャージが60%なら、

5,000円 × 60% = 3,000円

となります。

店舗側に残るのは2,000円です。

しかし、ここからさらに、

  • 人件費
  • 廃棄
  • 光熱費
  • 包装資材
  • 調味料
  • おしぼり
  • その他の消耗品

などを負担します。

仮に、こうした追加コストが合計1,200円かかったとします。

すると、

2,000円 − 1,200円 = 800円

です。

つまり、

1万円販売しても、店舗に残るのは800円

ということになります。

もちろん、これは商品の収益構造を分かりやすくするための一例です。

しかし、この数字を見ると商品の評価は大きく変わります。

「粗利率50%の商品」と見るのか、
「1万円販売して店舗に800円しか残らない商品」と見るのか。

この2つでは、商品の見え方が全く違います。

だからこそ、コンビニ経営では、

「粗利率が高い=儲かる商品」

と単純に考えるのではなく、

「その商品を販売することで、最終的に店舗へいくら残るのか」

を見る必要があります。

さらに重要なのが、その800円を生み出すために、どれだけの人と時間を使ったのかということです。

通常の商品なら、ほとんど追加作業なしで1万円販売できるかもしれません。

一方、店内調理商品では、仕込みや調理、補充、清掃、廃棄確認などに時間がかかります。

そう考えると、

粗利率だけでは商品の本当の収益性は判断できません。

店内調理の負担は「数字」で見る必要がある

店内調理の商品を評価するとき、本当に必要なのは粗利率だけではありません。

例えば、

売上
↓
粗利
↓
チャージ
↓
店舗に残る金額
↓
人件費
↓
廃棄
↓
消耗品
↓
光熱費
↓
最終的に残る利益

というところまで見る必要があります。

さらに、

その利益を生み出すために何時間の作業が必要だったのか

まで考えれば、商品の本当の効率が見えてきます。

私は、これからのコンビニ経営では、

「商品別の粗利率」から「商品別の店舗利益」へ

考え方を変えていくことが重要だと思います。

「売れる商品」と「儲かる商品」は、必ずしも同じではありません。

そして、

「儲かる商品」と「効率よく儲かる商品」も同じではありません。

高日販店舗では好循環が生まれる

一方で、高日販店舗では状況が大きく変わります。

販売量が多い
↓
商品の回転が良い
↓
仕込み量を確保できる
↓
分業できる
↓
スタッフの作業効率が上がる
↓
状態の良い商品を安定して提供できる
↓
お客様の満足度が上がる
↓
さらに商品が売れる
↓
さらに回転が良くなる

このような好循環が生まれます。

販売量が多ければ、一定の廃棄が発生しても吸収しやすくなります。

つまり、

売れるから良い状態の商品を作れる。

そして、

良い状態の商品だから、さらに売れる。

高日販店舗では、店内調理が大きな武器になりやすいのです。

低日販店舗では負の循環になりやすい

ところが、低日販店舗では事情が違います。

販売量が少ない
↓
商品の回転が悪い
↓
仕込み量を増やしにくい
↓
廃棄を恐れる
↓
人件費予算も限られる
↓
分業できない
↓
一人のスタッフがマルチタスクになる
↓
商品管理の負担が増える

という状態になりやすい。

店内調理の商品を増やせば、それだけ管理する仕事も増えます。

高日販店舗では「分業」ができても、低日販店舗では「一人で全部やる」ことになりやすい。

同じ商品でも、店舗の売上規模によって、その意味は大きく変わります。

品揃えを減らせば、お客様を取られる

では、低日販店舗は仕込みを減らせばいいのでしょうか。

それも簡単ではありません。

品揃えが悪くなれば、

「あの店に行っても欲しい商品がない」

と思われてしまいます。

お客様は、品揃えの良い近隣店舗へ流れてしまう可能性があります。

つまり、

仕込まなければ売上を失う。

しかし、

仕込めば廃棄が増える。

これが低日販店舗の大きなジレンマです。

だからこそ、単純に「廃棄を減らせ」と言うだけでは、現場の問題は解決しません。

店内調理による負担が、不正と信用問題につながることもある

低日販店舗にとって、廃棄は大きな負担です。

売れ残れば利益が減ります。

だからこそ、

「できるだけ廃棄を出したくない」

という意識が強くなります。

しかし、店内調理には、仕込み、調理、補充、消費期限管理、温度管理、衛生管理、廃棄管理など、さまざまな負担があります。

そこに人手不足や人件費の上昇、売上に対する利益の圧迫などが重なれば、現場には大きなプレッシャーがかかります。

そして、その負担が過度に大きくなれば、

「何とか廃棄を減らしたい」

という気持ちから、商品管理における誤った判断や、不適切な対応につながるリスクも高まります。

もちろん、不正は決して許されるものではありません。

しかし、ここで考えたいのは、

「不正を個人のモラルだけの問題として終わらせていいのか」

ということです。

店内調理によるさまざまな負担が積み重なり、現場に過度なプレッシャーがかかる。

その結果として不適切な対応が発生すれば、最終的に失われるのは、その店舗だけの問題ではありません。

企業そのものに対する信用です。

そしてコンビニは、毎日の食生活に関わる商品を扱っています。

だからこそ、食の安全や商品管理に対する信頼が失われれば、企業にとって大きなダメージになります。

不正を防ぐことは当然です。

そのうえで、

不正が起きにくい現場環境をつくることも、企業側の重要な責任

ではないでしょうか。

おいしい商品を提供することだけではなく、

安全に、正しく、無理なく提供できる仕組み

まで考える必要があります。

同じカウンター商品でも、コーヒーは違う

ここで重要なのが、カウンター商品を一括りにしてはいけないということです。

例えばコーヒー。

コーヒーもカウンター商品ですが、調理や商品管理が比較的シンプルです。

提供する商品の品質も安定させやすく、注文から提供までの時間も短い。

つまり、

おいしさを提供しながら、店舗オペレーションへの負担を比較的抑えやすい商品

だと考えられます。

もちろんコーヒーにも機械の清掃やメンテナンスなどの作業はあります。

しかし、店内調理商品のように、仕込み・調理・個別包装・消費期限管理などが複雑に積み重なる商品とは負担の性質が違います。

同じカウンター商品でも、

「おいしさ」と「店舗負担」のバランスは商品によって全く違う

のです。

カウンター商品は「主力」ではなく「品揃え」

私は、カウンター商品をなくすべきだとは思いません。

むしろ必要です。

コンビニの差別化には重要な商品です。

ただし、

「主力商品として、どこまでも拡大する」のではなく、「品揃えの一つ」として考えることが重要

だと思います。

高日販店舗なら、分業ができます。

商品の回転も良い。

仕込み量も確保できます。

状態の良い商品を安定して提供できます。

そして、さらに売れる。

一方、低日販店舗では、同じ商品が大きな負担になる可能性があります。

だからこそ、

全店舗で同じ商品を、同じ方法で、同じ量だけ売る

という考え方だけでは、これからのコンビニ経営は難しくなるのではないでしょうか。

本部と店舗では「利益」の見え方が違う

コンビニの商品政策を考えるとき、

「本部にとって魅力的な商品なのか」

と、

「店舗にとって効率の良い商品なのか」

は分けて考える必要があります。

本部側から見れば、粗利率の高い商品を販売することには大きな意味があります。

一方、店舗側には、

人件費。

廃棄。

光熱費。

包装資材。

調味料。

おしぼり。

そして商品管理にかかる時間があります。

だから店舗に必要なのは、

売上ではなく、最終的に残る利益です。

さらに言えば、

その利益を生み出すために、どれだけ人と時間を使ったのか

まで見る必要があります。

ここを考えなければ、本当の意味での店舗生産性は見えてきません。

コンビニの最大の武器は「便利」

コンビニは専門店ではありません。

最大の強みは、

便利であること。

そこに店内調理による「おいしさ」という付加価値を加える。

このバランスが重要です。

店内調理を増やした結果、スタッフが調理に追われる。

レジ対応が遅れる。

商品ができるまで待たされる。

仕込みが間に合わず欠品する。

これでは、せっかくの商品がコンビニ本来の利便性を損なってしまいます。

だからこそ、

おいしさを追求することと、便利さを守ること。

この2つを両立させる必要があります。

ミニストップの問題から考える「これからのコンビニ」

今回のミニストップの問題を、単純に一企業の問題として終わらせるのではなく、

「店内調理を店舗が安全に、安定して運営できる仕組みになっているのか」

という視点で考える必要があるのではないでしょうか。

人手不足。

人件費上昇。

低日販店舗の利益不足。

廃棄問題。

商品管理の複雑化。

消耗品などの店舗負担。

これらが積み重なれば、現場への負担は大きくなります。

そして、その負担が大きくなりすぎれば、商品そのものだけではなく、

企業の信用という、目に見えない大切な資産まで失う可能性があります。

今回の問題は、

コンビニ業界全体が考えるべき課題の一つ

なのかもしれません。

これからコンビニに求められるのは、

「売上を増やす仕組み」だけではなく、「店舗が無理なく利益を残し、正しく運営できる仕組み」

ではないでしょうか。

コンビニ経営では、目先の粗利だけを見るのではなく、

利益・人件費・廃棄・安全・そして企業の信用まで含めて、商品の価値を判断する

必要があります。

これから必要なのは「店舗ごとの最適化」

私は、これからのコンビニの商品政策では、

店舗ごとの売上、人員、商品の回転率に合わせた展開

が必要だと思います。

高日販店舗では店内調理を積極的に活用する。

低日販店舗では、無理に展開を広げない。

そして、商品を選ぶときには、

「どれだけ売れるか」だけではなく、「どれだけ安全に、安定して、効率よく提供できるか」

を見る。

これが重要です。

カウンター商品は必要です。

店内調理も大きな武器になります。

しかし、

現場に過度な負担をかけてまで展開するべきではありません。

おいしさ。

利便性。

安心・安全。

店舗利益。

そして企業の信用。

これらをすべて成立させてこそ、これからのコンビニの商品政策は成功するのではないでしょうか。

最後に、コンビニ経営者として私が一番伝えたいのは、

「売れる商品」と「儲かる商品」は違う。

ということです。

そして、

「本部にとって魅力的な商品」と「店舗にとって効率の良い商品」も、必ずしも同じではない。

さらに、

「粗利率が高い商品」と「店舗に利益を残す商品」も同じではありません。

ミニストップの問題をきっかけに、コンビニ業界全体が、

「その商品は、本当に店舗に利益を残しているのか?」

そして、

「その商品を、安全に、正しく、無理なく提供できる仕組みになっているのか?」

というところまで考える必要があるのではないでしょうか。

これからのコンビニ経営は、

売上の大きさを競うだけではなく、限られた人員と時間で、どれだけ効率よく利益を残し、そしてお客様からの信頼を守れるか。

そんな「精度の戦い」に変わっていくのだと思います。

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