スタッフが辞めない店舗づくり|現役コンビニオーナーが考える「選ばれる職場」とは【第118話】

現場で考えるのは「次の10年」のこと 体験談

「人手不足だから仕方がない。」

コンビニ業界では、この言葉を耳にする機会が少なくありません。

確かに、人手不足は深刻な課題です。

しかし私は、長年コンビニを経営してきた経験から、人手不足だけがスタッフの退職理由ではないと考えています。

実際、周辺より時給が高くても人が集まらない店舗があります。

一方で、決して時給が高くなくても、何年も働き続けてくれるスタッフがいる店舗もあります。

この違いはどこから生まれるのでしょうか。

もちろん立地や勤務条件、仕事内容など、さまざまな要因があります。

それでも私は、最も大きな違いは「人間関係」、そして店舗を率いる人の人間性にあると感じています。

これは、私自身が経験した出来事から強くそう思うようになりました。

私の店舗で起きた出来事

以前、私の店舗に一人の社員が異動してきました。

その社員は、仕事ができない人ではありませんでした。

知識もあり、業務も正確にこなす、能力の高い社員でした。

しかし、異動してから約1年間で、店舗スタッフの約4割が退職しました。

退職理由はさまざまです。

卒業。

体調不良。

家庭や仕事の事情。

どれも本人にとって本当の理由だったと思います。

だから私は、「社員が原因で辞めた」と決めつけるつもりはありません。

しかし、同じ時期に職場環境についての相談が相次いだことで、「何か別の要因もあるのではないか」と感じるようになりました。

異動して間もなく、お客様から、

「スタッフへの指導が少し厳しすぎるのではありませんか。」

というご意見をいただきました。

さらにスタッフからは、

「このままでは労働基準監督署へ相談しようと思っています。」

という相談を受けました。

また別のスタッフからは、

「会うたびに食事へ誘われます。断り方が分からず困っています。」

という相談もありました。

もちろん、これらの出来事だけで退職理由を一つに結びつけることはできません。

それでも、短期間に職場環境に関する相談や苦情が重なったことで、私は店舗の雰囲気に変化が起きていると感じました。

信頼関係があったから気づけた

幸いだったのは、スタッフとの信頼関係が築けていたことです。

私は普段から、スタッフとの何気ない会話を大切にしてきました。

そのため、悩みや不満を一人で抱え込まず、早い段階で相談してくれたのです。

相談を受けるたびに社員と面談し、指導方法や接し方について改善を求めました。

しかし、一つ改善されたと思えば、今度は別の相談や苦情が寄せられる。

その繰り返しでした。

お客様からのご意見も、この社員に関するものが最も多かったと記憶しています。

その経験から私は、一つの結論にたどり着きました。

問題は知識や技術ではなかった

この社員は、決して能力が低い人ではありませんでした。

仕事を覚えるのも早く、店舗運営に必要な知識も十分に持っていました。

しかし、「自分が店舗を回している」という意識が強くなりすぎていたように感じます。

その結果、お客様への接し方が横柄になったり、スタッフを「支えてくれる仲間」ではなく、「指導する相手」として見てしまったりする場面がありました。

私は、そこに本当の課題があったのではないかと思っています。

コンビニは、一人では営業できません。

オーナー、社員、スタッフ、それぞれの力が合わさって初めて店舗は成り立ちます。

だから私は、「スタッフに働いてもらっている」のではなく、「スタッフに支えてもらっている」と考えています。

その気持ちがあれば、指導の仕方は自然と変わります。

まず話を聞く。

できないことを責めるのではなく、一緒に改善方法を考える。

相手を一人の人として尊重する。

その姿勢こそが、信頼関係の土台になるのだと思います。

人は変われる

現在も、その社員は悩みながら仕事を続けています。

以前と比べると、少しずつ成長していると私は感じています。

一方で、今でも一部のスタッフやお客様から苦言をいただくことがあります。

人は簡単には変われません。

しかし、人は変わることを諦めなければ、少しずつ成長していけるとも私は信じています。

私自身も、多くの失敗を繰り返しながら経営を学んできました。

コンビニ経営で最後に差がつくもの

コンビニオーナーという仕事に、特別な才能は必要ないと私は思っています。

もちろん、経営の知識や数字を読む力は欠かせません。

しかし、それだけでスタッフが長く働いてくれるわけではありません。

店舗同士が最後に差別化できるのは、人間性です。

人を尊重すること。

感謝を忘れないこと。

相手の立場で物事を考えること。

その積み重ねが信頼関係を築き、スタッフの定着につながります。

スタッフが定着すれば熟練度が高まり、お客様へのサービスも向上します。

その結果、店舗全体の生産性が上がり、経営の選択肢も広がっていきます。

稲盛和夫さんは、「仕事の完成よりも、仕事をする人間の完成を先に目指す」という趣旨の教えを残されています。

私は、この考え方はコンビニ経営にも通じると感じています。

スタッフが辞める原因を、人手不足や時給だけの問題にしていないでしょうか。

店舗を変える一番の近道は、スタッフを変えることではありません。

責任ある立場の私たち自身が変わることです。

私はこれからも、「スタッフに支えられている」という感謝の気持ちを忘れず、お客様にもスタッフにも選ばれる店舗づくりを続けていきたいと思います。

コンビニ経営で最後に差がつくのは、知識や技術だけではありません。

人間性こそが、長く選ばれ続ける店舗をつくる最大の力だと、私は信じています。

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