最低賃金の上昇、人手不足、人件費の上昇。
コンビニ経営を取り巻く環境は、年々厳しくなっています。
加盟店側では、人件費の上昇によって店舗利益を確保することが難しくなっています。
一方、本部側でもDX、AI、システム化、業務効率化など、生産性を高めるための取り組みが進められています。
私は、本部が何もしていないと言いたいわけではありません。
むしろ、本部の生産性を高めることは、企業全体の競争力を維持するために必要なことだと思います。
ただ、加盟店側から見ると、一つの疑問が残ります。
本部で生まれた生産性向上の成果が、いつ、どの程度、加盟店の生産性や利益につながっているのか。
今回は、本部と店舗の生産性にはどのような違いがあるのか。
そして、本部の生産性向上を、どうすれば加盟店の利益につなげられるのかを考えてみます。
- 最低賃金は上昇し、店舗の人件費負担は増えている
- 加盟店利益は2年連続で減少している
- 一方、本部の人件費はどうなっているのか
- 本部の1人当たり人件費は上昇している
- 加盟店利益が減少する一方、本部の1人当たり人件費は上昇している
- 本部の従業員数が減った理由も分けて考える必要がある
- 直営店の減少によって、本部の業務量も変化している
- 「人が減った」と「生産性が上がった」は同じではない
- 本部の生産性向上と店舗の生産性向上は構造が違う
- 店舗の生産性は「売上」だけでは測れない
- 本部には「店舗の仕事を減らす」という役割がある
- 本部の人件費を削ることが目的ではない
- 「本部の人件費」から「生み出した価値」へ
- 本部の生産性向上を「加盟店への還元」につなげる
- 「いつ、どれだけ改善するのか」を見えるようにする
- 本部と加盟店、それぞれのKPIを見える化する
- 本部が何をしているかではなく「結果」が重要
- 生産性向上には「責任主体」と「検証方法」も必要
- 本部と加盟店、どちらか一方ではなく双方が利益を残す
- 本部の生産性向上は、加盟店の利益につながってこそ意味がある
- 「削る」のではなく「生み出した余力をどう使うか」
- 最後に
最低賃金は上昇し、店舗の人件費負担は増えている
まず、店舗を取り巻く環境を確認します。
全国加重平均の最低賃金は、2021年の930円から2025年には1,121円まで上昇しました。
2021年から2025年までの4年間で191円、約20.5%の上昇です。
店舗側からすれば、同じ時間、同じ人数で営業していても、人件費は以前より大きくなります。
しかもコンビニには、
- レジ対応
- 品出し
- 清掃
- 商品発注
- 検品
- 廃棄管理
- 揚げ物などの製造
- 宅配便や公共料金などの各種サービス
- 防犯対応
など、店舗に人がいなければ成立しない業務が数多くあります。
つまり、
「仕事を減らせば、人件費も同じ割合で減る」
という単純な構造ではありません。
加盟店利益は2年連続で減少している
こうした環境の中で、加盟店側の利益はどうなっているのでしょうか。
セブン‐イレブン・ジャパンでは、加盟店利益が2024年度に前期比4.3%減少しました。
さらに2025年度も、上期が4.2%減、下期が0.7%減となり、2年連続で減少しています。
これは、加盟店経営を考える上で非常に重要な数字です。
売上だけを見れば、コンビニ市場は成長しているように見えるかもしれません。
しかし、
売上があることと、オーナーの利益が増えることは同じではありません。
人件費やその他のコストが上昇すれば、売上が増えても利益が減ることがあります。
加盟店にとって重要なのは、
最終的にどれだけ利益を残せるのか
です。
一方、本部の人件費はどうなっているのか
ここで、本部側の人件費を見てみます。
セブン‐イレブン・ジャパンの人件費は、
| 年度 | 本部人件費 |
|---|---|
| 2023年度 | 814億円 |
| 2024年度 | 788億円 |
| 2025年度 | 793億円 |
となっています。
2024年度には26億円減少しましたが、2025年度には5億円増加しています。
2025年度について、本部は人件費増加の主な要因を**「給与単価上昇による影響」**と説明しています。
つまり、本部全体の人件費は単純に増え続けているわけではありません。
しかし、
本部の人件費が減少しているから、本部の人件費負担が一律に軽くなっている
とも言い切れません。
そこで、もう一つの数字を見る必要があります。
本部の1人当たり人件費は上昇している
本部の人件費を従業員数で単純に割ると、さらに違った姿が見えてきます。
| 年度 | 人件費 | 従業員数 | 1人当たり人件費の概算 |
|---|---|---|---|
| 2023年度 | 814億円 | 10,750人 | 約757万円 |
| 2024年度 | 788億円 | 10,252人 | 約769万円 |
| 2025年度 | 793億円 | 9,833人 | 約806万円 |
従業員数は、2024年2月末の10,750人、2025年2月末の10,252人、2026年2月末の9,833人です。セブン&アイの資料では、従業員数にはパートタイマーを月間163時間換算した人数も含まれています。
この単純計算では、
約757万円 → 約769万円 → 約806万円
と、1人当たり人件費は上昇しています。
特に2025年度は、前年から約37万円、約4.8%上昇した計算になります。
もちろん、これは「本部社員の平均年収」ではありません。
人件費には給与以外の会社負担分なども含まれる可能性があり、年度の人件費と年度末時点の従業員数を単純に割った概算だからです。
したがって、ここでは、
「1人当たり人件費の概算」
として見る必要があります。
それでも、本部のコスト構造を考える上では無視できない数字です。
加盟店利益が減少する一方、本部の1人当たり人件費は上昇している
ここで、二つの数字を並べてみます。
加盟店利益
2024年度:前年比4.3%減
2025年度:上期4.2%減、下期0.7%減
一方で、
本部の1人当たり人件費の概算
2023年度:約757万円
2024年度:約769万円
2025年度:約806万円
という動きになっています。
もちろん、
「本部の1人当たり人件費が上がったから加盟店利益が減った」
という因果関係を、この数字だけで証明することはできません。
本部にも、商品開発、システム開発、店舗支援、物流、教育など、必要な業務があります。
人材確保のために人件費が上昇すること自体が、直ちに問題というわけでもありません。
しかし、
加盟店の利益が減少している一方で、本部では1人当たり人件費が上昇している。
この事実は、本部と加盟店の生産性や利益配分を考える上で、一つの重要な論点になるのではないでしょうか。
本部の従業員数が減った理由も分けて考える必要がある
では、本部の従業員数が減っているのは、単純に生産性が上がったからなのでしょうか。
ここにも注意が必要です。
2023年度の約10,750人から、2025年度には約9,833人まで減少しています。
しかし、
「従業員数が減った=生産性が向上した」
とは限りません。
なぜなら、業務効率化だけではなく、事業構造そのものが変化している可能性があるからです。
その代表的なものが、直営店の適正化です。
直営店の減少によって、本部の業務量も変化している
セブン‐イレブン・ジャパンでは、直営店数が大きく減少しています。
| 年度 | 直営店数 |
|---|---|
| 2021年度 | 427店 |
| 2022年度 | 265店 |
| 2023年度 | 193店 |
| 2024年度 | 150店 |
2021年度の427店から2024年度の150店まで、
277店、約65%減少
しています。
そして2024年度の本部人件費は26億円減少しましたが、その主な要因として会社側は**「直営店の適正化」**を挙げています。
つまり、
本部の人件費が減少した背景には、業務効率化だけでなく、直営店の減少によって必要な業務そのものが減った影響もある
と考える必要があります。
「人が減った」と「生産性が上がった」は同じではない
ここは、本部の生産性を考える上で非常に重要です。
例えば、
「直営店が減少したことで、店舗運営や管理に必要な人員が減った」
のであれば、それは事業構造の変化による人員減少です。
一方、
「店舗数や業務量を維持したまま、AIやDX、業務改革によって必要な作業時間を減らした」
のであれば、こちらは生産性向上と考えやすくなります。
つまり、
従業員数が何人減ったかだけでは、本当の生産性向上は判断できません。
見るべきなのは、
どれだけの業務量・事業規模に対して、どれだけ少ない人員とコストで、同等以上の価値を生み出せるようになったのか
です。
本部の生産性向上と店舗の生産性向上は構造が違う
ここが今回のテーマで最も重要な部分です。
本部のバックオフィス業務には、テクノロジーを導入することで業務そのものを減らせる領域があります。
例えば、
- AIによるデータ分析
- RPAによる定型業務の自動化
- ペーパーレス化
- システム統合
- データ入力の自動化
- オンライン会議
- AIによる問い合わせ対応
などです。
一度仕組みを作れば、同じ業務をより少ない時間で処理できる可能性があります。
一方、店舗現場には物理的な制約があります。
営業時間中は、一定数のスタッフが店舗にいなければなりません。
お客様が来店する以上、
「システム化したから人をゼロにする」
ということはできません。
特に24時間営業では、24時間という営業時間そのものが人員配置を必要とします。
そのため、
本部と店舗では、生産性を高める方法そのものが違います。
店舗の生産性は「売上」だけでは測れない
店舗の生産性を考えるとき、
「売上を上げればいい」
という考え方だけでは不十分です。
重要なのは、
どれだけの人件費・労働時間で、どれだけの粗利益を生み、最終的にどれだけの利益を残せるか
です。
例えば、売上が10%増えても、人件費やその他の経費がそれ以上に増えれば、利益は増えません。
逆に、
- 発注時間を減らす
- 検品時間を減らす
- 品出し時間を短縮する
- 清掃時間を短縮する
- 教育時間を減らす
- シフト作成を効率化する
ことで、同じ売上をより少ない労働時間で維持できれば、それも大きな生産性向上です。
だから店舗に必要なのは、
「売上を増やす生産性」だけではなく、「必要な仕事そのものを減らす生産性」
です。
本部には「店舗の仕事を減らす」という役割がある
加盟店が自分たちだけで効率化できることには限界があります。
だからこそ、本部が持っている、
- システム
- AI
- データ
- 商品開発力
- IT技術
- 全国の店舗データ
- オペレーションのノウハウ
を活用して、
店舗側の仕事そのものを減らす
ことが重要です。
例えば、
「発注を早くする」
だけではなく、
発注という作業そのものを減らせないか。
「検品を効率化する」
だけではなく、
検品に必要な時間そのものを減らせないか。
「人員配置を工夫する」
だけではなく、
そもそも必要な作業量を減らせないか。
という発想です。
本部の人件費を削ることが目的ではない
ここで誤解してはいけないのは、
「本部の人件費を下げれば加盟店利益が増える」
という単純な話ではないということです。
本部にも、
- 商品開発
- システム開発
- 店舗支援
- 教育
- 物流
- 法務
- セキュリティ
- 経営管理
など、必要な仕事があります。
優秀な人材を確保するための人件費も必要です。
問題は、
いくら払っているかだけではありません。
重要なのは、
その人件費によって、どれだけの価値を生み出しているのか
です。
「本部の人件費」から「生み出した価値」へ
本部の1人当たり人件費が上昇しているとしても、それだけで問題とは言えません。
例えば、1人当たり人件費が800万円だったとしても、その人が年間数千万円の価値を生み出すのであれば、企業にとって必要なコストです。
逆に、人件費を削減しても、店舗支援や商品開発、システム開発の力が低下すれば、長期的には加盟店にも影響する可能性があります。
だから見るべきなのは、
「いくら払っているか」ではなく、「そのコストによって何が改善したのか」
です。
そしてフランチャイズ事業である以上、
その成果が加盟店にも届いているのか
を見る必要があります。
本部の生産性向上を「加盟店への還元」につなげる
私は、本部の人件費を単純に削減すればいいとは思いません。
重要なのは、
「削減」ではなく「再配分」
ではないでしょうか。
本部で生産性向上によって生まれた余力を、
- 新たな成長投資
- DX投資
- 店舗の省人化
- 店舗作業の削減
- システムコストの低減
- 加盟店への支援
などに振り向ける。
そして、
本部の生産性向上
↓
店舗の生産性向上
↓
加盟店の利益改善
という流れを作る。
これが、フランチャイズ全体の持続可能性につながるのではないでしょうか。
「いつ、どれだけ改善するのか」を見えるようにする
ここで、加盟店側から見た大きな問題があります。
本部が生産性向上に取り組んでいたとしても、
いつまでに、何が、どの程度改善するのか
が分からなければ、加盟店側は成果を確認できません。
例えば、
「DXを進めています」
だけではなく、
2028年までに加盟店1店舗あたりの店舗作業時間を○%削減する。
という目標があれば、進捗を確認できます。
さらに、
- 2026年:○%削減
- 2027年:○%削減
- 2028年:○%削減
と段階的な目標があれば、より分かりやすくなります。
重要なのは、
取り組みそのものではなく、その結果として店舗がどう変わったのか
です。
本部と加盟店、それぞれのKPIを見える化する
本部の生産性向上を加盟店の利益につなげるなら、数字で追える仕組みが必要です。
例えば本部側では、
| 本部側のKPI | 確認する内容 |
|---|---|
| 本部人件費 | 人件費がどう変化したか |
| 1人当たり人件費 | 人材への投資がどう変化したか |
| 従業員数 | 必要人員がどう変化したか |
| 直営店数 | 店舗構造の変化 |
| DXによる削減時間 | 何時間の業務を削減できたか |
| システム投資額 | どれだけ投資したか |
| 業務削減率 | 業務量がどれだけ減ったか |
一方、加盟店側では、
| 店舗側のKPI | 確認する内容 |
|---|---|
| 店舗労働時間 | 何時間減ったか |
| 店舗人件費 | 人件費がどう変化したか |
| 作業時間 | 発注・検品・品出しなどが何分短縮したか |
| 粗利益 | 生産性向上によってどう変化したか |
| 店舗利益 | 最終的に利益がどう変化したか |
を見ることができます。
最終的に重要なのは、
本部のKPIだけではなく、加盟店側のKPIまで改善しているか
です。
本部が何をしているかではなく「結果」が重要
もちろん、本部が何もしていないと言っているわけではありません。
DXやAI、業務効率化、コスト構造改革など、さまざまな取り組みが行われています。
実際、2025年度も次世代システムの開始などへの投資が続いています。
問題は、
その取り組みが、いつ、どの程度、加盟店の生産性や利益に反映されるのかが、加盟店側から見えにくいこと
です。
「取り組んでいます」から、
「これだけ改善しました」
へ。
さらに、
「その結果、加盟店の店舗作業時間がこれだけ減り、人件費負担がこれだけ変化しました」
まで見えるようになれば、加盟店にとっても非常に分かりやすくなります。
生産性向上には「責任主体」と「検証方法」も必要
もう一つ重要なのが、目標を設定した後の責任です。
「2028年までに店舗作業時間を○%削減する」
という目標を掲げるのであれば、
- 誰が責任を持つのか
- どの数字で評価するのか
- 途中経過をどう確認するのか
- 目標未達の場合はどう改善するのか
まで決まっている必要があります。
ここでいう「責任」とは、誰かを責めるという意味ではありません。
目標達成の責任主体と、結果を検証する仕組みを明確にする
ということです。
これがあれば、単なる掛け声ではなく、継続的に改善できる仕組みになります。
本部と加盟店、どちらか一方ではなく双方が利益を残す
フランチャイズは、本部と加盟店が対立するだけの関係ではありません。
本部が利益を確保できなければ、商品開発やシステム投資、店舗支援を継続することが難しくなります。
一方で、加盟店の利益が減り続ければ、オーナーが事業を継続することも難しくなります。
だから必要なのは、
本部か加盟店か、どちらか一方が利益を取る構造ではありません。
本部も加盟店も、持続的に利益を確保できる構造です。
そのためには、
本部で生まれた生産性向上の成果が、加盟店側にも見える形で反映されること
が重要だと思います。
本部の生産性向上は、加盟店の利益につながってこそ意味がある
本部の生産性を高めること自体は重要です。
しかし、フランチャイズという仕組みを考えれば、それだけでは十分ではありません。
本部が効率化する。
↓
その成果を店舗運営に活用する。
↓
店舗の作業時間が減る。
↓
店舗の人件費負担が改善する。
↓
同じ売上でも、より多くの利益を残せる。
↓
加盟店が事業を継続しやすくなる。
この循環ができて、初めて企業全体の生産性向上と言えるのではないでしょうか。
「削る」のではなく「生み出した余力をどう使うか」
本部の人件費を削れば、それだけで加盟店の利益が増えるわけではありません。
また、本部の1人当たり人件費が上昇すること自体を問題視する必要もありません。
重要なのは、
その人員やコストによって、どれだけの価値が生まれているのか。
そして、
その価値が加盟店の生産性や利益にもつながっているのか。
ということです。
本部で生産性が向上し、そこで生まれた余力があるのであれば、
その余力をさらに本部の利益として積み上げるだけではなく、
加盟店の生産性向上にもつなげていく。
この考え方が重要だと思います。
最後に
最低賃金が上がり、人手不足が続く中で、店舗現場の負担は大きくなっています。
そして現在、加盟店利益は2年連続で減少しています。
一方、本部では従業員数が減少する中、1人当たり人件費の概算は上昇しています。
2023年度の約757万円から、2025年度には約806万円。
この数字だけで、
「本部の人件費が加盟店利益を圧迫している」
と結論づけることはできません。
しかし、
加盟店利益が減少する一方で、本部の1人当たり人件費が上昇している。
この状況だからこそ、
本部に投じた人件費が、どれだけの生産性を生み、その成果が加盟店にどの程度還元されているのか
を考える必要があるのではないでしょうか。
また、本部の人員減少についても、
「人が減った=生産性が上がった」
と単純に考えるのではなく、直営店の減少・適正化による業務量の変化と、DXやAIなどによる本当の業務効率化を分けて考える必要があります。
そして、最終的に重要なのは、
本部の生産性向上 → 店舗の生産性向上 → 加盟店の利益改善
という流れを作れるかどうかです。
そのためには、
目標・期限・進捗・結果・責任主体
を見えるようにする。
「取り組んでいます」ではなく、
「これだけ店舗の仕事を減らしました」
そして、
「これだけ加盟店の利益を残しやすくしました」
というところまで数字で確認できる。
本部と加盟店。
どちらか一方だけが利益を残すのではなく、
本部の生産性向上が、加盟店の生産性向上につながり、その結果として双方が持続的に利益を確保できる。
そんな循環を作ることが、これからのコンビニ経営には必要なのではないでしょうか。
おすすめ記事







コメント