移民政策とコンビニ経営|安い労働力に頼る日本から、技術革新で成長する日本へ【第202話】

移民政策とコンビニ経営をテーマに、安い労働力への依存から技術革新による成長への転換を描いた表紙画像 コンビニ経営

日本では、人手不足を背景に外国人労働者が増えています。

コンビニ業界も例外ではありません。最低賃金が上昇し、日本人スタッフの採用が難しくなるなか、外国人スタッフの力を借りて店舗を維持しているケースもあります。

しかし、私はここで考えたいことがあります。

安い労働力を確保しなければ利益が成立しないのであれば、その経営モデルは持続可能なのでしょうか。

私は、安い労働力の確保を目的とした移民政策には反対です。

外国人が日本で働くこと自体を否定しているわけではありません。問題にしたいのは、人件費の上昇や人手不足に対して、技術革新や経営構造の見直しよりも、海外から労働力を確保することに頼ってしまう考え方です。

日本は長いデフレを経験し、コスト削減が重視される経営環境が続きました。そして今、物価や人件費が上昇するなか、多くのサービス業が経営の見直しを迫られています。

これから必要なのは、働き手を増やすことだけではなく、少ない人数でも高い価値を生み出せる仕組みをつくることではないでしょうか。

今回は、現役コンビニオーナーの視点から、移民政策、日本経済の生産性、コンビニの収益構造、そして技術革新の必要性について考えます。

1. 日本で外国人労働者はどれほど増えているのか

まず、現在の状況を公的統計で確認します。

厚生労働省が公表した2025年10月末時点の外国人雇用状況によると、日本で働く外国人労働者は257万1,037人でした。

前年より26万8,450人増加し、外国人雇用状況の届出が義務化された2007年以降で過去最多となっています。

外国人を雇用する事業所も37万1,215事業所に増加しました。

出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況

一方、日本では少子高齢化が進み、多くの産業で働き手の確保が課題になっています。

外国人労働者の受け入れは、人手不足を補う手段の一つになっているのです。

ただし、外国人労働者が増えたという事実だけで、受け入れが日本経済にとって良いのか悪いのかを判断することはできません。

雇用が維持される、企業が事業を継続できるといったメリットがある一方、受け入れに伴う教育、労働条件、生活支援、地域社会との共生などの課題もあります。

ここで考えたいのは、外国人労働者を受け入れることそのものではありません。

人手不足を解決するために、海外から労働力を確保する方法だけに頼ってよいのか。

この問いが、今回の記事の出発点です。

2. 安い労働力を確保するための移民政策には反対

企業が人手不足に直面したとき、考えられる対応策はいくつもあります。

賃金を引き上げて人材を確保する。働きやすい環境を整える。業務を効率化する。設備投資によって自動化を進める。

そして、外国人労働者を採用して必要な人員を確保する方法もあります。

外国人労働者の受け入れ自体が悪いわけではありません。外国人も日本人も、適正な労働条件のもとで働き、能力を発揮できる環境が必要です。

しかし、企業が人件費を抑えることを主な目的として外国人労働者に依存するのであれば、私は疑問を感じます。

人件費が上昇したとき、本来ならば業務の効率化や設備投資を進める必要があるかもしれません。

ところが、労働力を補充することで従来の経営モデルを維持できるなら、仕事の進め方そのものを変える動機が弱まる可能性があります。

もちろん、外国人労働者を雇用すれば必ず人件費が安くなるわけではありません。外国人にも最低賃金などの労働関係法令が適用されます。

問題にしたいのは国籍ではなく、安い労働力を確保することで経営課題を乗り切ろうとする考え方です。

企業が人材を確保する努力と、技術革新によって生産性を高める努力は、両立させるべきではないでしょうか。

3. 日本の長期デフレと、コスト削減を優先する経営

日本は長いデフレを経験してきました。

物価が上がりにくく、企業が商品やサービスの価格を引き上げにくい環境では、利益を確保するためにコスト削減が重視されやすくなります。

人件費を抑える。設備投資を先送りする。既存の仕組みを工夫して、できるだけ費用をかけずに事業を続ける。

こうした対応は、個々の企業にとって合理的な場合もあります。

しかし、社会全体でコスト削減ばかりが優先されれば、賃金の改善や人材育成、設備投資、デジタル化への投資が十分に進まなくなる可能性があります。

ここで注意したいのは、安い労働力が日本の長期デフレを引き起こしたと断定することはできないという点です。

デフレの長期化には、需要の弱さ、人口構造の変化、企業の投資行動、賃金の伸び悩みなど、複数の要因が関係しています。

ただし、コスト削減を優先する経営が、省力化や生産性向上への投資を後回しにする要因にならなかったかという問題は、検証する価値があります。

そして今、日本は物価や人件費が上昇する環境に直面しています。

これまでのように、コストを抑えることで利益を維持する方法が難しくなっているのです。

だからこそ、今後は安い労働力の確保だけでなく、技術革新によって生産性を高めることが、これまで以上に重要になると考えます。

4. 日本の労働生産性は、国際的にどの水準なのか

日本の生産性を考えるうえで、参考になるデータがあります。

日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2025」によると、2024年の日本の時間当たり労働生産性は、購買力平価換算で60.1ドルでした。OECD加盟38か国中28位です。

また、2024年の時間当たり労働生産性の実質伸び率はマイナス0.6%でした。

出典:日本生産性本部「労働生産性の国際比較2025」

この数字は、日本の生産性向上が重要な課題であることを示しています。

ただし、国際比較の順位や単年の伸び率だけで、日本企業が技術革新を怠ってきたと結論づけることはできません。産業構成や設備投資、労働時間、為替、需要などの影響も考慮する必要があります。

それでも、人口が減少し、働き手の確保が難しくなる日本にとって、労働者の数を増やすことだけで経済を維持するのは難しくなっていきます。

必要なのは、同じ人数でも、より多くの付加価値を生み出せる仕組みをつくることです。

例えば、機械化によって作業時間を減らす。デジタル技術によって情報管理を効率化する。従業員が単純作業に費やす時間を減らし、より付加価値の高い仕事に集中できるようにする。

こうした取り組みは、サービス業においても重要です。

人手不足を理由に人を増やすだけでなく、人手不足でも成り立つ仕組みをつくる。

日本がこれからも国際競争力を維持するためには、この発想が欠かせないのではないでしょうか。

5. コンビニ経営から見える、人手不足と利益の問題

この問題を、コンビニ経営に置き換えて考えてみます。

コンビニは、レジ、品出し、清掃、商品管理、公共料金などの各種サービスへの対応など、幅広い業務を必要とします。

24時間営業の店舗では、早朝や深夜も含めてシフトを確保しなければなりません。

そのため、採用難や最低賃金の上昇は、店舗経営に直接影響します。

人件費が上昇すれば、売上や粗利益が同じ割合で増えない限り、オーナーの利益は圧迫されます。

そこで外国人スタッフを採用し、人員を確保することは、店舗を維持するための現実的な選択肢の一つです。

しかし、採用できたからといって、店舗の経営が必ず改善するとは限りません。

採用や教育に費用がかかります。スタッフ間の意思疎通が十分でなければ、業務の確認やフォローに時間を取られることもあります。

外国人スタッフの接客能力は国籍だけで決まるものではありません。日本語能力や接客経験、教育体制などによって異なります。

問題は、必要な人材を確保し、教育し、適切な業務を任せるための費用と時間を、店舗が負担できるかどうかです。

人手不足を補うために採用を続けなければ利益が残らず、十分な賃金や教育に投資する余裕もないのであれば、経営構造そのものを見直す必要があるのではないでしょうか。

6. セブン‐イレブンの経費と利益から考える

セブン‐イレブン・ジャパンの経営を考えるうえでは、本部の収益と加盟店の利益を分けて見る必要があります。

公表されている本部の決算数値を比較すると、2020年度から2025年度にかけて、営業総収入は約8,503億円から約8,877億円へ増加しました。

一方、販売費及び一般管理費は約5,586億円から約6,345億円へ増加し、営業利益は約2,333億円から約2,203億円へ減少しています。

出典:セブン&アイ・ホールディングス IR情報

この比較から、少なくとも本部企業でも経費の増加と利益の維持が課題になっていることが分かります。

ただし、販売費及び一般管理費には人件費だけでなく、広告宣伝費、地代家賃、システム費用なども含まれます。この増加分をすべて人件費の上昇と説明することはできません。

また、本部の営業利益は加盟店オーナーの利益とは別の数字です。

本部の利益が増えたか減ったかだけで、加盟店の経営状態を判断することもできません。

だからこそ、加盟店の経営を考える際には、売上や粗利益だけでなく、チャージ、人件費、光熱費、その他の経費、そしてオーナー自身の労働負担まで考慮する必要があります。

人件費が上昇しても、オーナーが十分な利益を確保できるとは限りません。

その状態で、採用人数を増やすことだけに頼る経営を続けるのであれば、長期的な持続可能性には疑問が残ります。

7. 人件費が上昇しても、接客品質を高められない

人手不足への対応では、必要な人数を確保することだけでなく、接客品質を維持することも重要です。

コンビニの接客は、商品をスキャンして会計を済ませるだけではありません。

お客様の質問に答える。困っている人に気づく。トラブルが発生したときに状況を理解し、適切に対応する。

こうした仕事には、コミュニケーション能力や経験、教育が必要です。

外国人スタッフであっても、十分な日本語能力と接客教育を備えた人は、店舗の大切な戦力になります。

一方で、十分な意思疎通や教育ができないまま接客を任せれば、ほかのスタッフがフォローしなければならない場面が生じる可能性があります。

そのフォローに時間を使えば、店長やオーナーが本来取り組むべき業務に使える時間が減ることもあります。

さらに、人件費が上昇しても利益に余裕がなければ、賃金を引き上げて採用条件を改善したり、教育時間を増やしたりすることが難しくなります。

これは外国人スタッフだけの問題ではありません。日本人スタッフであっても、採用や教育に十分な投資ができなければ、同じような問題が起こり得ます。

大切なのは、国籍によって接客能力を決めつけることではなく、必要な能力を持つ人材を確保し、その能力を発揮できる環境を整えることです。

しかし、そのための投資を加盟店が十分に行えないのであれば、採用だけに頼る方法には限界があります。

8. レジの自動化を進めることが、現実的な解決策ではないか

では、どうすれば人手不足への依存を減らせるのでしょうか。

私が重要だと考えるのは、レジの自動化をはじめ、機械でできる仕事を少しずつ機械に任せることです。

セルフレジを活用すれば、お客様自身で会計を済ませられる場面が増えます。

有人レジの負担が減れば、スタッフは品出し、商品管理、清掃、お客様への対応など、人が担う必要のある仕事に集中しやすくなります。

もちろん、セルフレジを導入すれば必ず人件費が減るわけではありません。導入費用や保守費用がかかり、年齢確認や各種サービスなど、人による対応が必要な業務も残ります。

そのため、導入効果を数字で検証しながら進める必要があります。

例えば、時給1,500円の店舗で、レジの自動化によって月100時間分の労働時間を実際に削減できたと仮定します。

時給だけで計算すると、月15万円、年間180万円相当の労働費用に相当します。

ただし、これは設備費用や保守費用を差し引く前の理論値です。実際に人件費が削減されるかどうかは、シフトを減らせるか、ほかの業務に人員を振り向けるかによって変わります。

それでも、こうした費用対効果を検証し、自動化によって少ない人数でも店舗を運営できる仕組みをつくることには、大きな意味があります。

目指すべきなのは、人をすべて機械に置き換えることではありません。

人がいなければ営業できない状態から、少ない人数でも安定して営業できる状態へ移行することです。

9. コンビニ本部には、技術革新を進める社会的責任がある

コンビニは、全国各地で日常生活を支える存在です。

多くの人を雇用し、地域の暮らしに欠かせないサービスを提供しています。だからこそ、人手不足への対応を、店舗ごとの採用努力だけに任せてよいとは思いません。

大手コンビニ本部には、加盟店単独では難しい規模の設備投資やシステム開発を進められる強みがあります。

レジの自動化、発注の効率化、在庫管理の改善など、技術によって解決できる課題は少なくありません。

本部が技術革新を進め、その成果によって加盟店の労働時間や運営負担が減り、オーナーにも利益が残るのであれば、店舗の持続可能性を高めることにつながります。

しかし、設備投資の費用が加盟店に偏り、削減効果が十分に還元されなければ、オーナーの利益は改善しない可能性があります。

そのため、本部と加盟店が協力し、導入費用と効果を適切に分担する仕組みが必要です。

お客様には便利なサービスを提供する。加盟店には適正な利益を残す。本部は持続可能な店舗網を維持する。

この三者の利益を両立させるために、技術革新を経営の中心に据えることが重要ではないでしょうか。

コンビニ業界には、安い労働力を確保することだけで店舗を維持するのではなく、少ない人数でもサービスを提供できる仕組みをつくる社会的責任があると考えます。

10. 安い労働力に頼る日本から、技術革新で成長する日本へ

外国人労働者の受け入れは、人手不足への対応策の一つです。

しかし、それだけで人手不足の根本的な問題が解決するとは限りません。

日本がこれからも成長していくためには、働き手を確保することと同時に、少ない人数でも高い付加価値を生み出せる仕組みをつくる必要があります。

安い労働力を確保することで従来の経営モデルを維持することが、技術革新への投資を後回しにする要因になっていないか。

企業は、人材を確保することだけでなく、業務の効率化や自動化によって生産性を高める努力を十分に行っているのか。

そして、技術革新による成果は、働く人や加盟店にも還元されているのか。

こうした問いを、企業も政府も考える必要があります。

外国人労働者の受け入れと技術革新は、本来、両立できるものです。

しかし、安い労働力の確保を優先するあまり、省力化投資や賃金改善が後回しになるのであれば、長期的には日本の生産性向上を妨げる可能性があります。

私は、安い労働力の確保を目的とした移民政策には反対です。

外国人を排除したいからではありません。日本人も外国人も適正な条件で働ける環境を整えながら、労働力への過度な依存を減らす社会を目指すべきだと考えるからです。

コンビニ業界も、その転換を進める役割を担っています。

レジの自動化をはじめ、機械に任せられる仕事を少しずつ減らし、人が担うべき仕事に人材を集中させる。そして、技術革新によって生まれた効果を、オーナーにも還元する仕組みをつくる。

人手不足だから外国人を受け入れる、という発想だけではなく、人手不足でも成り立つ仕組みをつくる。

安い労働力に頼って従来の経営を維持するのか。それとも、技術革新によって生産性を高め、賃金と接客品質、オーナー利益を両立させるのか。

コンビニ経営から考えるこの問題は、日本がこれからどのような社会を目指すのかという問いでもあるのです。


参考資料

  • 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況(2025年10月末)
  • 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2025」
  • セブン&アイ・ホールディングス「IR情報」
  • 厚生労働省「令和6年版 労働経済の分析」

※統計で確認できる事実と、筆者の意見・考察を区別しています。外国人労働者の受け入れが賃金や生産性に与える影響は、業種や地域、企業の状況によって異なります。また、安い労働力への依存が技術革新を遅らせたという因果関係については、企業別の雇用・投資・生産性データによる追加検証が必要です。

おすすめ記事

深夜営業の損益分岐点を計算してみた|時給が毎年5%上昇したら7年後はどうなる?【第201話】
コンビニ深夜営業の損益分岐点を試算。深夜時給1,500円、粗利率32%、本部チャージ70%で、日販3万〜6万円の収支を比較。時給が毎年5%上昇した場合の7年後の人件費と必要売上も検証します。
ローソンが始めた深夜無人営業|技術はあるのに、なぜコンビニで普及しないのか?【第200話】
ローソンが取り組む深夜無人営業。技術的には可能なのに、なぜ一般のコンビニでは普及しないのか?深夜の売上、人件費、24時間営業のチャージ減額2%(セブンイレブン)を試算し、人手不足と加盟店利益の課題を現役オーナーの視点から考えます。
「近くて便利」は高級品になったのか|インフレと最低賃金上昇が迫るコンビニ経営の転換点【第199話】
インフレや最低賃金の上昇、人手不足に悩むコンビニ経営。2020年の公正取引委員会の調査をもとに、深夜営業の赤字や時短営業の希望、人手不足の実態を解説。人件費対策や契約解除も含め、オーナーが手遅れになる前に考えたい選択肢を紹介します。
コンビニの人手不足を解決できるか?|深夜スタッフレス化で社員雇用を目指す【第198話】
コンビニの人手不足は、オーナー個人の能力だけの問題なのでしょうか。急な欠勤や人件費の上昇、深夜営業の負担を現役オーナーの視点から考察。深夜スタッフレス化やロイヤリティの見直しなど、持続可能な店舗運営に向けた解決策を提案します。
売上ってそんなに必要?|セブン‐イレブンの利益至上主義で見失うもの【第196話】
セブン‐イレブンの加盟店利益が減少する背景とは。最低賃金上昇による人件費負担をSEMCでシミュレーションし、売上至上主義や本部と加盟店の利益配分、持続可能なコンビニ経営について現役オーナーが考察します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました