コンビニ経営において、深夜営業を続けるべきかどうかは、重要な経営判断のひとつです。
深夜の売上が少なくても、24時間営業を続けることで本部チャージの減額を受けられる場合があります。一方で、深夜スタッフの人件費は上昇しています。
現在は営業を続けられていても、数年後には人件費の上昇によって採算が合わなくなるかもしれません。
そこで今回は、0時から5時までの深夜時間帯を対象に、日販3万円・4万円・5万円・6万円の4パターンで損益を計算してみました。
さらに、時給が毎年5%ずつ上昇した場合、7年後の深夜営業はどうなるのかもシミュレーションします。
最後に、自店の売上や時給を使って深夜営業を検討する方法についても紹介します。
1. 今回のシミュレーション条件
今回使用する条件は次のとおりです。
| 項目 | 設定条件 |
|---|---|
| 基本時給 | 1,200円 |
| 現在の深夜時給 | 1,500円 |
| 対象時間 | 0時〜5時 |
| 2人体制 | 1日合計8人時 |
| 1人体制 | 1日合計5人時 |
| 深夜の日販 | 3万・4万・5万・6万円 |
| 粗利率 | 32% |
| 本部チャージ率 | 一律70% |
| 24時間営業インセンティブ減額 | 月額10万円 |
| 月間営業日数 | 30日 |
| 時給上昇率 | 毎年5% |
今回は、深夜勤務の人件費に時給1,500円を適用します。基本時給1,200円は条件として記載していますが、0時〜5時の人件費計算には直接使用しません。
また、2人体制は合計8人時、1人体制は合計5人時として計算します。
今回の試算における補足
24時間営業インセンティブ減額については、粗利益に対する2%の減額を想定し、今回のモデルでは月額10万円で固定します。
粗利益の2%が月額10万円となるのは、基準となる粗利益が月500万円の場合です。今回の深夜時間帯だけの粗利益ではなく、店舗全体の粗利益を想定した設定です。
また、実際の本部チャージ率は契約条件や粗利益の金額などによって変動する場合があります。今回は比較しやすくするため、一律70%に設定しました。
したがって、今回の試算は実際の契約条件を完全に再現するものではなく、一定の条件を置いたシミュレーションです。
2. 深夜売上から加盟店に残る粗利益はいくら?
コンビニでは、売上がそのまま加盟店の利益になるわけではありません。
今回は粗利率32%、本部チャージ率70%と設定しています。
計算式は次のとおりです。
- 売上総利益=売上×32%
- 本部チャージ=売上総利益×70%
- チャージ控除後の粗利益=売上総利益×30%
つまり、今回の条件では、売上の9.6%がチャージ控除後に加盟店に残る計算です。
| 深夜の日販 | 月間売上 | 月間粗利益 | 本部チャージ | チャージ控除後 |
|---|---|---|---|---|
| 3万円 | 90万円 | 28.8万円 | 20.16万円 | 8.64万円 |
| 4万円 | 120万円 | 38.4万円 | 26.88万円 | 11.52万円 |
| 5万円 | 150万円 | 48万円 | 33.6万円 | 14.4万円 |
| 6万円 | 180万円 | 57.6万円 | 40.32万円 | 17.28万円 |
深夜の日販が6万円あっても、チャージ控除後に加盟店に残る粗利益は月17万2,800円です。
ここからスタッフの人件費を支払わなければなりません。
それでは、人件費を差し引くとどうなるのでしょうか。
3. 2人体制と1人体制の人件費を比較
現在の深夜時給を1,500円として計算します。
2人体制の場合
1日合計8人時なので、
1,500円×8時間=12,000円
月30日営業では、月間人件費は36万円になります。
1人体制の場合
1日合計5人時なので、
1,500円×5時間=7,500円
月30日営業では、月間人件費は22万5,000円になります。
| 項目 | 2人体制 | 1人体制 |
|---|---|---|
| 1日の人件費 | 12,000円 | 7,500円 |
| 月間人件費 | 36万円 | 22.5万円 |
| 月間人件費の差 | — | 13.5万円削減 |
1人体制に変更すると、単純計算では月13万5,000円の人件費を削減できます。
ただし、1人体制には防犯、休憩時間、緊急時の対応、業務負担などの課題もあります。人件費だけで判断できる問題ではありません。
4. 深夜の日販3万〜6万円で月間収支を計算
ここでは、24時間営業インセンティブの減額10万円を店舗全体のメリットとして加算した場合の収支を計算します。
計算式は次のとおりです。
月間収支=チャージ控除後の粗利益-月間人件費+10万円
| 深夜の日販 | 2人体制 | 1人体制 |
|---|---|---|
| 3万円 | ▲17.36万円 | ▲3.86万円 |
| 4万円 | ▲14.48万円 | ▲0.98万円 |
| 5万円 | ▲11.60万円 | +1.90万円 |
| 6万円 | ▲8.72万円 | +4.78万円 |
※廃棄、電気代、社会保険料、採用費などは含めていません。
今回の条件では、2人体制は深夜の日販が6万円でも月間収支はマイナスです。
一方、1人体制では日販5万円からプラスになります。
ただし、ここで加算している月額10万円は店舗全体に対するインセンティブ減額を想定したものです。深夜営業だけで生み出した利益ではないため、深夜営業単独の採算とは区別する必要があります。
5. 深夜営業の損益分岐点はいくら?
月間収支がゼロになる深夜の日販を計算します。
まず、24時間営業インセンティブの月額10万円を含めたケースです。
| 項目 | 2人体制 | 1人体制 |
|---|---|---|
| 月間人件費 | 36万円 | 22.5万円 |
| インセンティブ減額 | 10万円 | 10万円 |
| 必要なチャージ控除後の粗利益 | 26万円 | 12.5万円 |
| 必要な月間売上 | 約270.8万円 | 約130.2万円 |
| 必要な深夜の日販 | 約9.03万円 | 約4.34万円 |
2人体制では、深夜の日販が約9万300円必要になります。
1人体制では、約4万3,400円が損益分岐点です。
一方、インセンティブ減額を除いて計算すると、損益分岐点は次のようになります。
| 項目 | 2人体制 | 1人体制 |
|---|---|---|
| 必要な月間売上 | 375万円 | 約234.4万円 |
| 必要な深夜の日販 | 12.5万円 | 約7.81万円 |
このように、店舗全体に対するインセンティブ減額を含めるかどうかで、損益分岐点は大きく変わります。
深夜営業そのものの収益性と、24時間営業を続けることで店舗全体が得られるメリットは、分けて考える必要があります。
6. 時給が毎年5%上昇したらどうなる?
ここからは、今回のシミュレーションの重要なポイントです。
現在の深夜時給1,500円が、毎年5%ずつ上昇すると仮定します。
| 経過年数 | 深夜時給 |
|---|---|
| 現在 | 1,500円 |
| 1年後 | 1,575円 |
| 2年後 | 約1,654円 |
| 3年後 | 約1,736円 |
| 4年後 | 約1,823円 |
| 5年後 | 約1,914円 |
| 6年後 | 約2,010円 |
| 7年後 | 約2,111円 |
7年後には、深夜時給が約2,111円になります。
現在の1,500円と比較すると、約611円の上昇です。7年間で約40.7%の上昇となります。
これは将来の最低賃金を予測した数字ではありません。毎年5%上昇するという仮定を置いた場合のシミュレーションです。
7. 7年後の月間人件費はいくらになる?
時給が上昇すると、同じ勤務時間でも人件費は増加します。
| 経過年数 | 2人体制 | 1人体制 |
|---|---|---|
| 現在 | 36.0万円 | 22.5万円 |
| 1年後 | 37.8万円 | 23.6万円 |
| 3年後 | 約41.7万円 | 約26.0万円 |
| 5年後 | 約45.9万円 | 約28.7万円 |
| 7年後 | 約50.7万円 | 約31.7万円 |
7年後には、2人体制の月間人件費は約50万7,000円になります。
現在の36万円と比較すると、月約14万7,000円の増加です。
1人体制でも、月間人件費は22万5,000円から約31万7,000円に増加します。
1人体制にすることで人件費を抑えることはできますが、時給上昇の影響そのものをなくすことはできません。
8. 時給上昇で損益分岐点はどこまで上がる?
24時間営業インセンティブの月額10万円を含めて、深夜の日販ベースの損益分岐点を比較します。
| 経過年数 | 2人体制の日販 | 1人体制の日販 |
|---|---|---|
| 現在 | 約9.03万円 | 約4.34万円 |
| 3年後 | 約10.98万円 | 約5.57万円 |
| 5年後 | 約12.48万円 | 約6.50万円 |
| 7年後 | 約14.12万円 | 約7.52万円 |
7年後には、2人体制の損益分岐点が深夜の日販約14万1,000円に上昇します。
1人体制でも、約7万5,000円が必要になります。
現在の深夜の日販が6万円の店舗を考えると、1人体制では現在の試算上プラスでも、時給上昇が続けば状況は変わります。
売上が変わらないまま時給だけが上昇すると、深夜営業の収益性は徐々に低下していきます。
9. 深夜の日販6万円が7年間続いたら?
最後に、深夜の日販が6万円のまま変わらないケースを考えます。
粗利率32%、本部チャージ率70%という条件では、チャージ控除後の粗利益は月17万2,800円です。
ここに月額10万円のインセンティブ減額を加え、毎年5%の時給上昇を反映すると、月間収支は次のように変化します。
| 経過年数 | 2人体制 | 1人体制 |
|---|---|---|
| 現在 | ▲8.72万円 | +4.78万円 |
| 3年後 | 約▲14.39万円 | 約+1.23万円 |
| 5年後 | 約▲18.67万円 | 約▲0.44万円 |
| 7年後 | 約▲23.38万円 | 約▲4.38万円 |
※月30日営業、インセンティブ減額10万円を含む概算です。その他の費用は未計上です。
この結果から、現在は1人体制で収支がプラスになっていても、売上が変わらず時給だけが上昇すれば、数年後には赤字に転じる可能性があることが分かります。
2人体制では、今回の条件では現在からすでに赤字です。
ただし、実際の店舗では深夜の売上だけでなく、深夜営業を続けることで得られる店舗全体の売上や、営業時間短縮によって失われる売上なども考慮する必要があります。
10. 自店の深夜営業シミュレーションはSEMSで計算できます
今回の記事では、深夜時給1,500円、粗利率32%、本部チャージ率70%という条件を設定して、深夜営業の損益分岐点を計算しました。
しかし、実際の店舗では、売上や粗利率、現在の時給、本部チャージの条件などがそれぞれ異なります。
そのため、今回の試算結果が、そのまま自店に当てはまるとは限りません。
そこで活用できるのが、私が作成している SEMS(セブン‐イレブン経営シミュレーション) です。
SEMSを活用すれば、自店の条件に合わせて、より具体的なシミュレーションを行うことができます。
例えば、次のような項目を検討する際に役立ちます。
- 24時間営業インセンティブの試算:店舗全体の粗利益に対する2%の減額が、売上や粗利率に応じて具体的にいくらになるのかを確認する
- 現在の人件費の試算:自店の基本時給や深夜時給を使って、人件費の負担を把握する
- 将来の時給上昇への備え:時給が毎年5%ずつ上昇した場合など、将来の人件費がどの程度増加するのかを検討する
- 24時間営業を続ける場合の検討:現在と将来の条件を比較し、深夜営業の継続を判断するための参考にする
一般的なモデルで損益分岐点を知ることも大切ですが、実際の経営判断では、自店の数字に置き換えて考えることが重要です。
時給が上昇しても、売上が同じように伸びるとは限りません。
現在の収支だけでなく、将来の人件費上昇も見据えながら、深夜営業を続けるべきかどうかを考える必要があります。
SEMSで自店の数字を確認し、これからのコンビニ経営を考えるきっかけにしていただければと思います。
※SEMSで計算できる項目や機能は、実際のツールの仕様に応じてご確認ください。
11. まとめ|深夜営業は将来の人件費まで考えて判断する
今回のシミュレーションでは、深夜時給1,500円、粗利率32%、本部チャージ率70%という条件で、深夜営業の損益分岐点を計算しました。
月額10万円のインセンティブ減額を含めた場合、現在の損益分岐点は次のとおりです。
- 2人体制:約9万円の日販
- 1人体制:約4万3,000円の日販
しかし、時給が毎年5%ずつ上昇すると、7年後には次の水準になります。
- 2人体制:約14万1,000円の日販
- 1人体制:約7万5,000円の日販
もちろん、これは一定の条件を置いたシミュレーションであり、将来の最低賃金や売上を予測したものではありません。
また、本部チャージ率を一律70%、インセンティブ減額を月額10万円で固定しているため、実際の店舗の契約条件によって結果は変わります。
それでも、現在の売上だけで深夜営業の継続を判断することにはリスクがあります。
深夜営業を続けることで得られる売上やインセンティブ減額と、人件費の上昇を比較し、将来も利益を確保できるのかを考える必要があります。
深夜営業を続けること自体が目的になってしまえば、赤字が拡大しても営業を続けることになりかねません。
大切なのは、24時間営業を続けることではなく、店舗の利益と安全性を守りながら経営を継続することではないでしょうか。
コンビニ経営に必要なのは、精神論だけではなく、数字に基づいた経営判断です。
今後も人件費の上昇が続くのであれば、深夜営業のあり方についても、店舗ごとの損益をもとに考えていく必要があると思います。
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