こんにちは、コンビニ大家です。
セブン‐イレブン・ジャパンの阿久津知洋社長は、2030年までに既存店平均日販80万円の達成を目標に掲げています。その実現に向けて、カウンターフーズ「Live-Meal」の拡大や、「ターゲット×シーン」を軸とした商品戦略、モバイルオーダー、店舗システム改革などを推進しています。
参考記事: 流通ニュース「セブン‐イレブン/30年度日販80万円目指し『ターゲット×シーン』明確にした商品強化」
私は、この目標そのものは素晴らしいと思っています。
売上が伸びれば、加盟店も本部も利益を伸ばせる可能性があるからです。
しかし、現場で10年以上店舗を経営してきた立場として、一つ気になることがあります。
「現在のビジネスモデルのままで、本当に利益は増えるのか。」
今回は、第68話と同じモデルケースを使ってシミュレーションしてみます。
※今回の試算は一例です。契約条件や営業時間、地域、店舗規模によって実際の数値は異なります。
シミュレーション条件
前提条件は次のとおりです。
- 平均日販80万円
- 月商2,400万円
- 売上総利益率30%
- 月間売上総利益720万円
- 店舗総労働時間1,350時間
- オーナー夫婦労働時間301時間
- スタッフ労働時間1,049時間
- 最低賃金1,500円
- 深夜割増賃金は考慮しない
今回は、売上だけが増え、現在の運営体制は変わらないものとして計算します。
本部チャージを計算する
売上総利益720万円の場合、本部チャージは、
- 0~250万円:132万5,000円
- 250~400万円:94万5,000円
- 400~550万円:102万円
- 550万円超:124万1,000円
- 売上総利益550万円以上によるチャージ減額:▲3万5,000円
合計すると、
449万6,000円
となります。
その結果、
オーナー利益は270万4,000円
になります。
営業利益を計算してみる
ここから店舗経営に必要な経費を差し引きます。
- スタッフ人件費 157万3,500円
- 実質廃棄額 33万1,500円
- 実質水道光熱費 6万円
- その他経費 10万円
その結果、
月間営業利益は約63万9,000円
年間では、
約766万8,000円
となります。
第68話では、日販65万円のモデルケースで年間営業利益は約876万6,000円でした。
今回のシミュレーションでは、日販は65万円から80万円へ約23%増加しています。
一方で、最低賃金1,500円を前提とすると、年間営業利益は約766万8,000円となります。
つまり、
売上は約23%伸びても、営業利益は約12.5%減少する計算になります。
もちろん、これは人件費だけが上昇し、その他の条件が変わらないと仮定したシミュレーションです。
しかし、この試算から分かるのは、売上だけでは利益を守れない可能性があるということです。
オーナー夫婦の営業利益ベース時給
営業利益をオーナー夫婦の労働時間301時間で割ると、
63万9,000円 ÷ 301時間 = 約2,123円/時間
となります。
ただし、これは営業利益ベースの数字です。
ここからさらに、
- 所得税
- 住民税
- 国民健康保険
- 国民年金
- 借入金返済
などを支払う必要があります。
つまり、実際に自由に使えるお金は、この金額よりさらに少なくなります。
売上だけでは解決できない
売上が増えること自体は、とても良いことです。
しかし実際には売上が増えれば、
- レジ対応
- 品出し
- 発注
- 清掃
- 商品管理
など、店舗業務も増加します。
今回の試算では労働時間を一定としていますが、実際には人員を増やさなければ対応できない店舗もあるでしょう。
さらに私の経験では、日販80万円規模になると、1日3〜4時間程度スタッフの労働時間が増える店舗も少なくないと思います。
最低賃金1,500円で計算すると、人件費は毎月約13万5,000円〜18万円増加します。
加えて、社会保険加入が必要なスタッフが増えれば、会社負担分として毎月約10万〜15万円程度の経費増加も考えられます。
つまり、
月間約25万〜30万円、年間では約300万〜360万円の経費増加が見込まれる可能性があります。
今回のシミュレーションには、この増加分は反映していません。
私が本当に伝えたいこと
私は、平均日販80万円という目標を否定しているわけではありません。
むしろ、コンビニ業界全体が成長するためには必要な目標だと思っています。
しかし、どれだけ優秀な経営者でも、未来の売上を約束することはできません。
人口の変化。
景気。
競合店の出店。
最低賃金の上昇。
物価やエネルギー価格の変動。
こうした外部環境は、自分たちではコントロールできません。
目標は約束ではありません。
だからこそ経営者は、一つの未来だけを前提にするのではなく、あらゆる未来に備える必要があります。
売上が伸びる場合。
伸びない場合。
人件費がさらに上昇する場合。
物価が上昇する場合。
どのような状況になっても利益を残せる仕組みを作り続けることが、本当の経営だと私は考えています。
売上はお客様が決めるものです。
しかし、仕組みを改善することは、自分たちで決められます。
まとめ
平均日販80万円は、コンビニ業界にとって大きな目標です。
私も、その目標を応援しています。
しかし、本当に大切なのは、売上だけを追いかけることではありません。
利益を残し、働く人が安心して働ける仕組みを作ることです。
未来は誰にも分かりません。
だからこそ、今日できる改善を積み重ね、あらゆる未来に備えることが、経営者として最も重要な仕事だと私は考えています。
それが、10年以上コンビニを経営してきた私がたどり着いた結論です
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